源氏物語 第二巻・大塚ひかり著(2) 「薄雲」 2009-01-22 20:30:25 | 創作日記 とても重要な帖で、紫式部のストリーテーラーとしての実力が発揮される。藤壺の死。源氏の恋に対する意欲はここで断たれているように思える。次の帖「朝顔」への思いは一途ではなく、ただ惰性のようだ。冷泉帝が夜居の出生の僧都から秘密を聞かされる。牧師が懺悔に立ち会ったように、僧都もそんな役割を果たしていたのだろう。とても興味深い。冷泉帝が父を臣下に置いていることに悩み、譲位しようとする描写は、この時代の人間の心を描いている。紫式部は巧みな物語の布を織りながら、一人一人の心を描いている。見事だ。