諸悪の根源は、何度も指摘しているように、ここ20年間、円高になるたびにあの手この手を使って人件費を削減したことである(その上膨大な借金を増やした)。結果として一部の人(富裕層)を除いて日本人全体の所得を大幅に減らしたことである。それが需要を減らし、デフレになった。さらに悪いことに今年4月からの消費税を8%に上げたことである。
蛇足:厚労省の生活基礎調査によれば、世帯当たりの年間平均所得はH6年のピーク時664.2万円に比べH24年は537.2万円で127万円低下している。これは総世帯数約5千万に換算すれば60兆円を超える、これを消費税に換算すれば25%に相当する。我々は実質的に25%+8%=33%の消費税を負担していることになる。所得の低下は、消費支出の低下にも示されている(総務省統計局)。
蛇足の蛇足になるが、昨夜(9/17)のNHKクローズアップ現代「公共データは宝の山」”~社会を変えるか?オープンデータ~”によれば、公共データの活用の必要性を説いていた。
残念ながら政治家、ジャーナリスト、経済・財政の学者、専門家らも社会情勢を映し出す公共データを活用して消費税を論じたものは見当たらない。
最近の円安で潤った輸出企業のプラスの波及効果はどうだろうか。
トリクルダウン効果という言葉がある。「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が浸透してくる」とする経済理論または経済思想(*筆者に言わせればごまかしの経済思想)である。サプライサイド経済学における中心的な思想となっている。トリクルダウン理論は、新自由主義の代表的な主張の一つであり、この学説を忠実に実行したのがレーガン米大統領の経済政策、いわゆるレーガノミクス(ウイキペディア)。
安倍首相はひょっとしてアベノミクス=トリクルダウンの積もりで頑張っていらっしゃるのかも(笑)。やっていることは物まねサプライドサイドであることは間違いなさそうである。
最近の円安による賃上げプラス効果は一部の輸出企業の従業員に限られ、その波及効果は限りなくゼロというより、むしろ、マイナス効果でしかない。大多数の国民は、円高によって減らされた収入の上に、今度は円安による物価高が襲うのだから・・・不況下の物価高、所謂スタグフレーションの始まりである。
本日(9/18)の、テレ朝モーニングバード「そもそも総研 たまペディア」では、消費税10%問題について、安倍首相の“経済ブレーン”内閣官房参与・本田悦朗氏に話を聞く場面があった。彼は当面消費税を更に上げるべきではないと進言したという。だが日本は世界一の借金大国、従って消費税を上げないとの表明は、国債の信認が問われて国債が暴落する恐れがあるというのである。
限りなくウソである。消費税を5%→8%にしただけで、内閣府はGDPは7.1%も落ちることを示している。10%に上げれば、GDPはさらに低下することは確実である。GDPの低下は国民の所得を増やさない方向へ作用する。その上に更に消費税をアップすれば、いくらおとなしい国民でも不満を爆発させる危険性を孕んでいる。阿倍政権の方こそ信任が問われることになる。
国民の所得を増やすには、景気をよくするしかない。しかし、景気がよくなれば、国債を買うよりも実体経済への投資に金が回るので、国債の金利は上がらざるを得ない。従ってインフレにすれば国債にかかる金利はインフレ率以上の利回りにならざるをえない。その場合、当然、借金は減るどころか急膨張する。日本経済は二進も三進も行かない状況に追い込まれている。
国債の利率とインフレ率の関係については過去に、何度も述べた。
参照: アベノミクスのボロが見え始めた、続き 2014-02-02
http://blog.goo.ne.jp/ikariyax/d/20140202
次回もこの続きの予定。