ブッシュ政権での知日派といえば、いずれも政権から去ってしまったが、第一にアーミテージ氏であり、他には例えばマイケル・グリーン氏が有名なところである。アーミテージ氏は、現在のブッシュ政権の外交政策を「アジア戦略軽視である」と厳しく批判しており、4月末には『アーミテージ・レポート』の続編を公表する予定である。内容は、日本が米国の対等なパートナーとしてアジア太平洋地域の安定と平和に積極的に関与すること、この地域で民主主義、法の支配、自由経済といった価値や制度を発展させ、軍事的にも経済的にも台頭してくる中国といかに向かい合っていくかといった内容が盛り込まれるものと予想される。我が国に関連する記述は、おそらく、以下に紹介するマイケル・グリーン氏の読売新聞への寄稿『アジア外交、日本の影響力は米の国益』のような内容になるのだろうと推測される。邦文で手軽に読める出所のしっかりした論説ということでご紹介したい。
要点をかいつまんで説明をするまでもないぐらいに簡潔明瞭に書かれているが、敢えてポイントを絞れば、日本が「むきだしの力ではなく、”価値観外交”を基礎にした日本の”アジア・ビジョン”を作り、根幹には、民主主義、法の支配、市場経済の原則を据える」ことにより外交力を増すことができそれは米国の国益にも一致するという主張や、国際的重要性を維持するためには自衛隊を世界のどこかに派遣して国際貢献することにより常に「顔が見える」状態にしておくべきだという指摘などが注目点といえるだろう。とりわけ、価値観外交という概念は、日本人が曲解あるいは誤用しがちな「ソフト・パワー」の中核概念に他ならず、誤解されがちなソフト・パワーという用語よりも「価値観外交」という言葉の使用を推奨したいと思う。そもそも、ジョゼフ・ナイ氏が著書『ソフトパワー』の前書きの中で「ハード・パワー、ソフト・パワーのどちらかだけを重視するのは賢明ではない。両方とも重視するのがスマート・パワーである」と述べている通りである。それを日本人は、何を思ったのか、所詮は周辺概念にすぎない大衆文化やアニメが日本の存在感を高めているといった事例に飛びついて「これがソフトパワーだ」と思い込んでいる節がある。
少々前置きと脱線が長くなってしまったようだ。マイケル・グリーン氏の寄稿を以下に全文引用するので、是非目を通していただきたい。
【アジア外交、日本の影響力は米の国益】
日米同盟強化だけでなく、アジアでの日本の独自外交を支援することも、米国のアジア戦略の中心になっている。ブッシュ政権の目標は、アジアの安保・政治分野で日米を対等のパートナーにすることだった。
2001年6月、米国での初のブッシュ・小泉会談から、この戦略は首尾よく運んだ。同時テロ後、小泉首相は「自由世界はテロリズムを打ち砕くべし」と、大統領に確信を持って語った最初の指導者の一人だった。首相の言葉は、すぐに実行に移され、海上自衛隊のインド洋派遣、アフガニスタン再建の援助表明となって表れた。
北朝鮮のウラン濃縮問題では、ブッシュ大統領は「日本も含めた多国間の外交的対応が必要」と譲らず、これが6カ国協議につながった。イラクについては、小泉政権は50億ドルの貢献を素早く単独決定した。湾岸戦争に比べ、より少ない貢献額でより多い信頼を勝ち取り、湾岸戦争時とは全く逆の展開となった。サマワへの自衛隊派遣も、米国人やイラク人の尊敬を集め、いまや、日本外交は真の影響力を持つに至った。これは、米国の国益とも合致している。
今日の国際関係で最も変化しているのは、中国の国力と影響力の伸長だ。米国は中国の封じ込めを求めておらず、中国も米国との対峙を求めていない。しかし中国政府は、中国がアジアの代表になり米国の行動に事実上の拒否権を持つ、アジアでの米中二極体制を強く志向している。日本が外交的に存在感を増せば、この不都合な二極体制を阻止する手助けとなる。
米国が責任ある「利害関係者」として行動するよう中国に働きかける際、日本は民主主義国がいかに国際社会に貢献しているかを示すよい手本となる。
日本が外交的影響力を強化するには、先見的戦略の展開が重要だ。そのためには次の四つが必要になる。まず、むきだしの力ではなく、「価値観外交」を基礎にした日本の「アジア・ビジョン」を作り、根幹には、民主主義、法の支配、市場経済の原則を据えるべきだ。インドネシアから台湾、韓国まで、この原則が深く根を下ろそうとしており、日本はこうした潮流の推進者になりうる。
第二に、アジアの民主国家との連携も大事だ。01年創設の米国、日本、豪州による安保対話はその意味で重要だ。インドとの協力も進めてほしい。
自衛隊派遣の継続も重要だ。陸上自衛隊のサマワ派遣で、日本は国際安保で役割を担えるとの印象を世界に与えた。撤収後も、人道支援のため、陸自をスーダンやハイチなど世界のどこかに派遣しなければ日本の国際的重要性がしぼんでしまう。自衛隊の不在は、安保面での後退と誤解されるかもしれない。
最後に、米軍再編に関する日米間の合意実施も重要だ。
日本では「脱米入亜」論が終わり、多くの人が「親米入亜」を正しい道だと認識していると私は思っている。強固な日米同盟は、日本独自のアジア外交を強化することにつながる。
◇
マイケル・グリーン=米戦略国際問題研究所日本部長、ジョージタウン大準教授。
(読売新聞06年3月22日付に掲載)
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要点をかいつまんで説明をするまでもないぐらいに簡潔明瞭に書かれているが、敢えてポイントを絞れば、日本が「むきだしの力ではなく、”価値観外交”を基礎にした日本の”アジア・ビジョン”を作り、根幹には、民主主義、法の支配、市場経済の原則を据える」ことにより外交力を増すことができそれは米国の国益にも一致するという主張や、国際的重要性を維持するためには自衛隊を世界のどこかに派遣して国際貢献することにより常に「顔が見える」状態にしておくべきだという指摘などが注目点といえるだろう。とりわけ、価値観外交という概念は、日本人が曲解あるいは誤用しがちな「ソフト・パワー」の中核概念に他ならず、誤解されがちなソフト・パワーという用語よりも「価値観外交」という言葉の使用を推奨したいと思う。そもそも、ジョゼフ・ナイ氏が著書『ソフトパワー』の前書きの中で「ハード・パワー、ソフト・パワーのどちらかだけを重視するのは賢明ではない。両方とも重視するのがスマート・パワーである」と述べている通りである。それを日本人は、何を思ったのか、所詮は周辺概念にすぎない大衆文化やアニメが日本の存在感を高めているといった事例に飛びついて「これがソフトパワーだ」と思い込んでいる節がある。
少々前置きと脱線が長くなってしまったようだ。マイケル・グリーン氏の寄稿を以下に全文引用するので、是非目を通していただきたい。
【アジア外交、日本の影響力は米の国益】
日米同盟強化だけでなく、アジアでの日本の独自外交を支援することも、米国のアジア戦略の中心になっている。ブッシュ政権の目標は、アジアの安保・政治分野で日米を対等のパートナーにすることだった。
2001年6月、米国での初のブッシュ・小泉会談から、この戦略は首尾よく運んだ。同時テロ後、小泉首相は「自由世界はテロリズムを打ち砕くべし」と、大統領に確信を持って語った最初の指導者の一人だった。首相の言葉は、すぐに実行に移され、海上自衛隊のインド洋派遣、アフガニスタン再建の援助表明となって表れた。
北朝鮮のウラン濃縮問題では、ブッシュ大統領は「日本も含めた多国間の外交的対応が必要」と譲らず、これが6カ国協議につながった。イラクについては、小泉政権は50億ドルの貢献を素早く単独決定した。湾岸戦争に比べ、より少ない貢献額でより多い信頼を勝ち取り、湾岸戦争時とは全く逆の展開となった。サマワへの自衛隊派遣も、米国人やイラク人の尊敬を集め、いまや、日本外交は真の影響力を持つに至った。これは、米国の国益とも合致している。
今日の国際関係で最も変化しているのは、中国の国力と影響力の伸長だ。米国は中国の封じ込めを求めておらず、中国も米国との対峙を求めていない。しかし中国政府は、中国がアジアの代表になり米国の行動に事実上の拒否権を持つ、アジアでの米中二極体制を強く志向している。日本が外交的に存在感を増せば、この不都合な二極体制を阻止する手助けとなる。
米国が責任ある「利害関係者」として行動するよう中国に働きかける際、日本は民主主義国がいかに国際社会に貢献しているかを示すよい手本となる。
日本が外交的影響力を強化するには、先見的戦略の展開が重要だ。そのためには次の四つが必要になる。まず、むきだしの力ではなく、「価値観外交」を基礎にした日本の「アジア・ビジョン」を作り、根幹には、民主主義、法の支配、市場経済の原則を据えるべきだ。インドネシアから台湾、韓国まで、この原則が深く根を下ろそうとしており、日本はこうした潮流の推進者になりうる。
第二に、アジアの民主国家との連携も大事だ。01年創設の米国、日本、豪州による安保対話はその意味で重要だ。インドとの協力も進めてほしい。
自衛隊派遣の継続も重要だ。陸上自衛隊のサマワ派遣で、日本は国際安保で役割を担えるとの印象を世界に与えた。撤収後も、人道支援のため、陸自をスーダンやハイチなど世界のどこかに派遣しなければ日本の国際的重要性がしぼんでしまう。自衛隊の不在は、安保面での後退と誤解されるかもしれない。
最後に、米軍再編に関する日米間の合意実施も重要だ。
日本では「脱米入亜」論が終わり、多くの人が「親米入亜」を正しい道だと認識していると私は思っている。強固な日米同盟は、日本独自のアジア外交を強化することにつながる。
◇
マイケル・グリーン=米戦略国際問題研究所日本部長、ジョージタウン大準教授。
(読売新聞06年3月22日付に掲載)
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アメリカ軍首脳から見ても、隣国から言われたくらいで、総理が、自国のために戦った戦死者を蔑ろにするような日本に対する不信感が強い。 日本の総理は、本気で自国を守る気概があるのかと疑いを持ち、同盟国として軽蔑している。」はかみ締めて襟をただして謙虚に考える事が大事ですねー。是非ダウンロードを推薦します。日本人が1歩を進めれない、憲法改正、日米集団安保(片務安保は駄目) 核保持も検討する。イラク戦争で先制攻撃は悪は焼失、日本も真珠湾先制攻撃悪、戦争悪、から脱却する、周囲は核大国に囲まれてる、ロシア、中国、北朝鮮、インド、パキスタンとアジアは核だらけ。インドの核はお目こぼしですよ。ダブルスタンダードの真意を読み解け。核は早い者勝ち:、持ったほうが勝つのです。負ける戦争は二度しない。勝ち残り生き抜ける強い民族しか残れない。
ところでWBC絡みの記事をTBします。これを書くと「人気のブログランキング」ではランクアップしました。時節柄か?
>戦後、靖国神社に参拝した外国人のなかではアメリカ軍首脳が最も多い。 日本の同盟国として、日本のために戦った戦没者に対して敬意を表するのは当然と考えているからである。
まさに騎士道精神ですね。武士道は日本の専売特許じゃありませんからね。
>負ける戦争は二度しない。
普通の国は、敗戦したら、こういう教訓を第一に汲み取るはずなんですがねぇ…。
興味深く拝見しました。WBCから文明論を展開していらっしゃいましたね。そちらにコメント書かせていただきました。
ランクアップは「時節柄」かもしれませんね(笑)
グリーン氏の年齢で与野党問わず日本政界に知己がたくさんというのも珍しい気がしますよね。
氏とJ・ナイ教授、アーミテージ氏、R・ブッシュ氏という面子を集めれば勝てる麻雀打てる、と申しますか実際その辺は謙虚に教えを請わないといかんだろうなと改めて痛感します。
>氏とJ・ナイ教授、アーミテージ氏、R・ブッシュ氏という面子を集めれば勝てる麻雀打てる
確かに!今が日米同盟を一気に深化させる大チャンスなんですから、この機を逃す手はないですよ。