猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

イラク総選挙は高投票率―イラク情勢は少しずつ好転か

2005-12-16 02:09:37 | その他各地域情勢
 15日に投票が締め切られたイラクの連邦議会総選挙は、高い投票率に加えて、1月の国民議会選挙をボイコットしたスンニ派も参加するなど、なかなか順調な結果に終わりそうだ。懸念された、選挙を妨害するための大規模なテロも起きずに済み、イラクの民主化は足取りは遅いものの着実に成果を上げている。大規模な自爆テロが起きなかったのも当然のことではある。もはや「イラクのため、イスラムの大義のため」という彼らの言い分が全く通用しないことは明らかだからである。もちろん散発的なテロは当分は残るだろうが、イラク人は独裁の恐怖に加えてテロリズムの脅威をもくぐり抜けて自由と民主主義を手に入れたばかりなのだから、テロリズムに屈するなどという状況の一番考えにくい段階にあるのだろうと思う。いたずらに楽観論を唱えるのもいかがなものかとは思うが、まずは期待しながら見守っていけるようにはなってきた。
 ということは、米国をはじめとする有志連合は戦争目的を達しつつあるということに他ならない。多くの人が誤解しているが、大量破壊兵器の存否は、実は問題ではなかった。実際に大量破壊兵器が出てくれば「動かぬ証拠」ということで、反対論を唱えていた国々に対して決定的な反論の材料になったのだろうが、開戦の直接の理由は、査察への完全な協力を求めた国連安保理決議1441号違反及びサダム独裁体制を転覆してイラクを民主化することである。要するに、大量破壊兵器が見つかろうが見つかるまいが、査察に非協力的だったというのが”罪状”なので、どちらでもよいわけである。所詮は後知恵になってしまうが、それならば初めから米国は大量破壊兵器があるという情報を無理してひねり出すこともなかった。イラクの民主化という大義名分一本に絞るべきだったと、今になって主張することは誰にでもできることであるが、事実としてはそういうことであろう。
 ブッシュ大統領は、ちょうどイラク総選挙が成功しそうだというタイミングを見計らって「イラク開戦の根拠とした情報の多くが間違いであり、開戦決定の責任は自らにあるが、サダム体制を転覆したこと自体は正しかった」と演説した。これを「ブッシュ大統領が過ちを認めた」などと捉えるとしたら、それこそとんでもない誤解で、真意は全く逆のところにある。すなわち、中間選挙を意識して批判に配慮しつつも「イラクの総選挙がうまくいきそうなのだから戦争目的を達しつつあるということだ」とアピールすることである。特に日本人は、「責任」と聞くと、間違いを認めて腹を切ることだと思い込みがちであるが、よく考えてみれば成功しようがしまいが開戦責任が大統領にあることは自明のことであり、ブッシュ大統領は当たり前のことを言っているにすぎない。
 イラクから米軍がすぐに撤退することはまず想定できないが、兵力を漸減して中東民主化の次の一手に備えることになると考えられる。このところ核査察への非協力ぶりが益々目立つイランを制裁することは、国際社会の理解を得やすいかもしれない。もっとも、米軍の兵力も不十分な上に、イランの強硬派の大統領が国内でも孤立しているのではないかと指摘されており、もうしばらくは様子を見ることになろう。


(参考記事1)
[イラク総選挙、開票始まる スンニ派参加、高投票率]
 【バグダッド15日共同】イラク新憲法に基づく連邦議会選挙(定数275)は15日夕(日本時間同日深夜)、投票が締め切られ、開票作業に入った。イラク戦争後、米主導の占領統治下で立案された民主化の日程は最終段階を迎え、イラク人は今後4年間国政を担う政権を選択する。1月の国民議会選挙をボイコットしたイスラム教スンニ派も本格的に参加、選挙管理委員会当局者は「国民議会選挙(投票率58%)を上回る高投票率となりそうだ」と述べた。
 駐留米軍やイラク治安部隊は妨害テロを厳戒、バグダッドや北部モスルなどでロケット弾攻撃などが散発的にあり3人が死亡したが、大規模テロは封じ込められた。
(共同通信) - 12月16日0時7分更新

(参考記事2)
<米大統領>イラク開戦決定の責任には自らにある 演説で
 【ワシントン笠原敏彦】ブッシュ米大統領は14日、ワシントン市内のシンクタンクで演説し、イラク開戦の根拠とした情報の多くが間違いだったと改めて認めた上で、「開戦決定の責任」は自らにあると語った。しかし、フセイン政権の打倒を目指した開戦決定の正当性では譲らず、15日に連邦議会選挙を行うイラクの現状について「過去2年半で真の進展があった」と成果を強調した。
 演説は同選挙に合わせ、米国民のイラク政策への支持を呼び戻すために計画された4回の最終回。ブッシュ大統領はこの中で開戦の理由に立ち戻り、「多くの(大量破壊兵器の存在を示す)情報が結果的に間違っていたことは真実だ。大統領として、イラク侵攻を決定した責任は私にある」と述べた。
 一方で、情報機関改革に乗り出すことで「誤りを正す責任」は果たしていると主張。多くの国連決議に応じなかったフセイン元大統領を打倒するという決定は「正しい決定」だったとし、フセイン政権崩壊により「米国と世界はより良くなった」と訴えた。
 大統領は「責任」に言及したものの、開戦決定の正当性では譲っておらず、基本姿勢の変更を示唆するものではない。明確な「出口戦略」を求める国内世論を受け、米政府は先月末に「イラクでの勝利」戦略を発表。大統領はその後「現状認識」などで率直さを示す姿勢を見せており、発言はその一環とみられる。
 大統領はまた、15日の議会選挙が自由の拡大で「分水嶺(れい)」になると指摘し、イラクはアラブ世界で初の「立憲民主主義」国家になると強調した。1月の移行国民議会選挙をボイコットしたイスラム教スンニ派の投票率が上昇する見通しに触れて「スンニ派が政治プロセスに参加すれば、イラクの民主主義はより包括的になる」と語り、民主化による治安情勢改善に期待を示した。
 大統領は一方で、選挙後の正式政府の発足に時間がかかりそうなことなど「不確実性」にも言及した。「(テロリストなどの)敵は選挙が成功しても降参したりはしない」と述べ、選挙を受けて駐留米軍撤退論が一層高まることにクギを刺した。
(毎日新聞) - 12月15日10時21分更新


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