猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

緊迫するイラン情勢―ウラン濃縮開始「核技術保有国入り」宣言

2006-04-13 02:00:51 | その他各地域情勢
 イランの核開発問題では、国連安全保障理事会が3月29日の議長声明でウラン濃縮停止を求めて以降も、イランは国際社会の制止に耳を貸さず核開発を続行し、ついに濃縮度3・5%の低濃縮ウラン生産に成功したことを明らかにして「核技術保有国入り」宣言をしてしまった。イランの主張では「あくまで平和利用」ということだが、とてもではないが信用できるものではない。
 関連報道を大量に引用しておいた。今までの流れをかいつまんでおくと、およそ次の通りである。

・国連安全保障理事会が3月29日の議長声明でウラン濃縮停止を要求
・イランはホルムズ海峡などで大規模な軍事演習を実施し「新型兵器」の実験成功を相次いで発表→「石油カード」により核問題に対する米欧の圧力をかわす狙いか
・米国によるイランの核関連施設への軍事攻撃の計画を米紙などが報道
・報道によれば軍事攻撃の手段としては戦術核の使用も検討→(1)核関連施設に絞った空爆(2)核施設だけでなく、イラン革命防衛隊や情報機関の本部なども同時に空爆するという計画
・米国政府は軍事的手段ではなく外交手段によることを強調
・英国政府も外交的解決を主張して戦術核の使用は「容認せず」
・イスラエル政府は「イランの核開発は予想以上に進展」として米国に圧力をかける構え
・EUは制裁措置の検討に着手→イラン核開発に関与する人物の渡航停止やイランの研究者によるEU内での核技術研究の禁止などに加え、イランへの総合的な輸出規制なども含む
・4月11日イランが「低濃縮ウラン生産に成功」と発表

 この流れで行くと、経済制裁は不可避、場合によっては限定的な軍事攻撃もありうべしといったところであろう。米国防総省が戦術核の使用をも検討しているのは間違いない。実施するかどうかは別として、あらゆる作戦を検討しておくのは軍として当然のことだからだ。以前から選択肢としては用意していないわけがない。
 米国政府が外交による解決を主張しているのは、イラク戦争の時と異なってせっかくまとまっている(ロシアも明確にイラン批判をしている)国際世論を分裂させたくないからに他ならない。イランが分別のない態度をとればとるほど国際世論も軍事力行使やむなしの方向に傾く。イラク戦争から教訓を得たのは米国だけではなくフランスやドイツもそうなのだ。これは、仏独の専門家が表明していることである。
 イスラエルがかなり強硬な姿勢を示しているが、以前から時折話題に上っている通り、イスラエルが軍事攻撃に及んでそれを国際社会が黙認するという形になるのかどうか注目される。イランの核開発が明白で国際世論の分裂があまりない以上、米英仏主導の有志連合の可能性が高いと思う。
 日本政府の態度は、安倍官房長官が記者会見で「国連安保理やIAEAのメッセージに反するもので、極めて遺憾だ」「イランに対し、国際社会の懸念をしっかり伝えていく」と述べ、様々なレベルで即時無条件の濃縮活動停止を働きかける方針である。安保理においては、非常任理事国として、イラン制裁に慎重な中露を含めて、安保理として結束して事に当たる事ができるよう、調整役を務めたい考えである。これらのことは、結構なことであり当然のことであるのだが、アザデガン油田開発問題は日本にとって避けては通れない問題である。確かにエネルギー資源は重要だが、イランと心中する形で国際社会から孤立するのはあまりにも得策でない。冷静に考えれば、金を払う立場の日本が開発中止をカードに即時無条件の濃縮活動停止を働きかけるのが理に適っている。これならせめて刺し違えという形になり、何とか「さまになる」というものである。



(参考過去ログ)
『アザデガン油田開発 米、日本に凍結要請―イラン核阻止へ障害』


(参考記事1)
[イラン、低濃縮ウラン生産に成功…大統領が発表]
 【テヘラン=工藤武人】イランのアフマディネジャド大統領は11日夜、北東部マシャドで演説し、「イランの若者が、発電に必要な濃縮ウランを生産した。イランは核技術保有国の仲間入りした」と述べ、濃縮ウランの生産に成功したと宣言した。
 国営テレビが演説の模様を生中継で伝えた。
 国連安全保障理事会が3月29日の議長声明でウラン濃縮停止を求めるなど、対イラン圧力が強まっている。大統領はこうした中、核開発の進展をあえて示すことで譲歩の意思がないことを強調したとみられるが、国際社会の反発を招いている。
 大統領演説に先立ち、アガザデ副大統領兼原子力庁長官は、9日に濃縮度3・5%の低濃縮ウラン生産に成功したことを明らかにするとともに、2007年3月までに、遠心分離器3000個を使った濃縮を開始する方針を示した。
 イランが今後、遠心分離器を使って濃縮度を高めていった場合、今回の濃縮作業に使用したとみられる遠心分離器164個では、核兵器1個分の高濃縮ウラン(濃縮度90%)の生産に約15年かかるが、3000個態勢ならば1年で生産が可能となる。
 副大統領はさらに、中部イスファハンのウラン転換施設で濃縮ウランの原料となる六フッ化ウラン110トンを製造したことも明らかにするなど、核開発の順調な進ちょくぶりを強調した。
(2006年4月12日12時57分 読売新聞)

(参考記事2)
[イランがウラン濃縮開始、最高評議会議長が明らかに]
 【テヘラン=工藤武人】イランのラフサンジャニ最高評議会議長は11日、イランが中部ナタンツのウラン濃縮施設で、遠心分離器164個で構成する「カスケード」1基を使って濃縮を始めたことを明らかにした。
 イラン学生通信が同議長のクウェート国営通信に対する発言を引用して伝えた。
 国連安全保障理事会は先月29日、議長声明でイランに濃縮活動の全面停止を求めており、濃縮規模の拡大が、国際社会の反発を招くのは必至だ。
 同議長は、「我々は、ウラン濃縮工場を持つために、同様の装置が多く必要だ」と述べ、濃縮規模を拡大することに意欲を示した。イランが具体的にいつ運転を開始したのかは明らかにしなかった。
 イランの核問題では、国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長が13日にもイランを訪問する見通しだが、ラフサンジャニ議長は「エルバラダイ事務局長は新たな状況に直面することになる」とも語り、エルバラダイ事務局長がイラン訪問中に、イラン政府側と厳しい交渉を迫られるとの見通しを示した。
 イランのアフマディネジャド大統領は11日、同日夜に「イランにとってよい知らせがある」とし、同日夜にも核開発の進展を発表する意向を示しており、同議長の発言と同趣旨の内容の可能性がある。
(読売新聞) - 4月12日1時9分更新

(参考記事3)
<EU>イランの核問題、将来的な制裁措置の検討始める
 EUは10日、外相会議を開き、イランの核開発疑惑について将来的な同国への制裁措置の検討を始めた。EUの共通外交・安保上級代表の案に基づくもので、同案には、イラン核開発に関与する人物の渡航停止やイランの研究者によるEU内での核技術研究の禁止などに加え、イランへの総合的な輸出規制なども含まれている。
(毎日新聞) - 4月11日10時39分更新

(参考記事4)
[ブッシュ大統領、米のイラン攻撃計画報道は「憶測」と否定]
 [ワシントン 10日 ロイター] ブッシュ米大統領は10日、ジョンズ・ホプキンス大学で講演し、イランの核開発問題について、イランに核開発をやめさせるために武力は必ずしも必要でないと指摘し、米政府がイラン攻撃を計画しているとの一部報道を「憶測」と否定した。
 ブッシュ大統領は、米政府がイラン攻撃を計画しているとニューヨーカー誌などが報じて以来、初めてイランについてコメント、イランの核兵器開発を止めるために外交に焦点を絞っている、と述べた。
 大統領は学生に「ワシントンでは『防止は武力行使を意味する』との見方が聞かれる」としたうえで「防止は、必ずしも武力を意味するわけではない。このケースでは外交を意味する」と主張。
 さらに、「私も週末に記事を読んだ。記事は憶測に過ぎない」と述べた。
(ロイター) - 4月11日9時6分更新

(参考記事5)
[イランへの軍事攻撃は検討事項ではない=英外相]  
 [ロンドン 9日 ロイター] ストロー英外相は9日、イランへの軍事攻撃は検討事項とはなっておらず、米国はイランの核問題を交渉によって解決する方法を模索していると述べた。
 外相はBBCテレビとのインタビューで、米国がイランを核攻撃するとの構想は「まったくばかげている」と言明。「(米国は)交渉と外交圧力によって問題を解決しようと、実際非常に熱心に取り組んでいる」と語った。
 さらに、英国はイランに対する予防的核攻撃を容認せず、「米国も容認しないと確信している」と付け加えた。
 この発言は、米国がイラン空爆の計画を進めているとするニューヨーカー誌の報道を受けたもの。米政府はこれを否定せず、イラン問題の外交的解決を模索していると繰り返した。同誌によると、米国はイランの主要な遠心分離器を破壊するため、「バンカーバスター」と呼ばれる戦術核兵器の使用を検討しているという。
(ロイター) - 4月10日10時59分更新

(参考記事6)
「イラン核施設を空爆」 米政権、貫通核使用も検討 Wポストなど報道
 【ワシントン=有元隆志】九日付の米紙ワシントン・ポストは、ブッシュ政権がイランの核開発を放棄させるための広範囲な戦略の一つとして、核施設への限定的な攻撃や大規模な攻撃など、複数の空爆計画を検討していると報じた。
 同紙によると、米空軍などの攻撃計画立案者は、主に二つの選択肢を検討。一つはナタンツのウラン濃縮施設やイスファハンのウラン転換施設などの核関連施設に絞った空爆。もう一つは、核施設だけでなく、イラン革命防衛隊や情報機関の本部なども同時に空爆するという計画だ。
 ブッシュ大統領をはじめ政権幹部は核問題の外交的解決を目指す姿勢を崩していないが、同紙によると、米政府当局者らは非公式には外交的解決が成功するか懐疑的になってきている。今後、近い将来に空爆を行う可能性は小さいものの、大統領は二〇〇九年一月までの任期中に、この問題に対処しなければならない「深刻な脅威」とみなしているという。
 さらに、同紙はイスラエルが、イランの核開発は米国が推定するよりも早まっているとして、米国に圧力をかけているとしている。
 一方、米誌ニューヨーカー(電子版)は八日、米軍がイランの核施設への空爆計画を急いでおり、すでに攻撃に備え、情報収集のための部隊をイラン国内に潜入させていると報じた。同誌は地中貫通型核B61-11の使用も検討されているとしている。
(産経新聞) - 4月10日16時19分更新

(参考記事7)
[米がイランへの軍事攻撃計画…W・ポストなど報道]
 【ワシントン=貞広貴志】9日付の米紙ワシントン・ポストは、複数の米政府高官と専門家の話として、米政府がイランに対する軍事攻撃の計画立案に入ったと報じた。
 ナタンツにあるウラン濃縮施設など核関連施設の空爆だけでなく、より幅広い軍事・政治拠点への攻撃も検討しているという。
 米誌ニューヨーカー(電子版)も8日、空爆作戦の策定作業に米政府が本腰を入れ始めたと報じた。
 ワシントン・ポスト紙によると、近い将来に攻撃を実行に移す可能性は小さいとしており、「イラン政府に対し事態が一層、深刻になっていることを分からせる」(米高官)のが主目的。ただ、地中にある堅牢(けんろう)な核施設を確実に破壊するため、国防総省は地中貫通型の戦術核兵器の使用も検討しているとしている。
 イランからの報道によると、イラン外務省報道官は、「米国が仕掛けた心理戦。脅しの言葉には屈しない」と反発している。
(読売新聞) - 4月10日14時2分更新

(参考記事8)
[米はイラン問題で外交解決を優先=米政府高官]
 [ワシントン 9日 ロイター] イランの核開発問題をめぐって、米政府がイランを空爆する準備を進めている、と一部で報道されるなか、米ブッシュ政権の高官は9日、ロイターに対し、政権はあくまで外交を通じた解決を優先させている、と主張した。
 この高官は、米国がイラクに武力行使するとの観測をけん制し、最新の報道を「理解に欠ける」ものと批判。しかし、全面的に否定はしなかった。
 米ニューヨーカー誌は、米政府が表向き交渉による解決を目指しているが、実はイランを爆撃する計画を加速させている、とのルポライター、シーモア・ハーシュ氏の記事を掲載。
 また、米ワシントン・ポスト紙は、匿名の米政府高官筋や独立系アナリストらの話として、米政権が威圧外交戦略の一環でイラク攻撃の選択肢を検討している、と伝えた。
 こうした報道について、米政府高官はロイターに「大統領の優先事項は、世界が認識している問題に対して外交解決を見出すことだ」とコメント。
 「通常の防衛・情報計画を基に広範囲で確定的結論を引き出す者は、重要な事に対する理解が欠けており、米政権のイランに対する考え方が分かっていない」と述べた。
(ロイター) - 4月10日8時1分更新

(参考記事9)
[対イラン攻撃、各種選択肢検討=米、外交解決に疑念-Wポスト紙]
 【ワシントン9日時事】9日付の米紙ワシントン・ポストは、ブッシュ政権がイランに核兵器計画放棄を迫る広範な戦略の一環として、同国に対する軍事攻撃の各種選択肢の検討を行っていると報じた。
 同紙によると、短期的には攻撃の可能性は小さいが、ブッシュ政権は取り得る1つの選択肢として、攻撃の準備を進めている。同政権当局者は核問題の外交解決を引き続き追求するとしているものの、非公式には外交が成功するかどうか一段と疑念を強めているようだという。 
(時事通信) - 4月9日15時0分更新

(参考記事10)
[イラン、軍事力誇示 新型兵器、実験成功を次々と発表]
 【カイロ=加納洋人】イランは三月三十一日から四月六日までの日程で、世界有数の海上石油輸送ルートであるホルムズ海峡などで大規模な軍事演習を実施し、「新型兵器」の実験成功を相次いで発表している。核開発問題で国際社会からの圧力が強まる中、イランは軍事力を誇示し、同海峡封鎖の可能性を示唆することで、経済制裁や米国内で浮上しているイランに対する武力行使の動きを牽制(けんせい)する狙いとみられる。
 フランス通信(AFP)などによると、軍事演習は、ホルムズ海峡を中心にペルシャ湾やオマーン湾で実施。革命防衛隊の海上部隊や航空部隊、陸軍や海軍、志願制の民兵組織バシジなどが参加した。
 三月三十一日には革命防衛隊航空部隊司令官が、レーダーによる捕捉を回避する性能を持つ多弾頭ミサイルの発射実験に成功したと発表。他国の技術を用いない純国産兵器で、複数カ所を同時に攻撃できる「新世代ミサイル」だと強調した。
 さらに、革命防衛隊海上部隊副司令官は二日、秒速百メートルの水中ミサイル「フート(クジラ)」の発射実験に成功したと発表した。艦上から発射して魚雷のように水中を進むミサイルで、大型艦船や潜水艦などへの攻撃用。敵がソナー(音響探知機)などで探知しても、高速のため攻撃を回避できないとしている。
 「新型兵器の開発成功」はイラン側の一方的な発表で、その実力には疑問が残る。しかし、四日には「最新の飛行艇」や「新型の地対艦ミサイル」の実験成功を相次いで発表するなど、イランはことさら軍事力を誇示する姿勢を示している。
 ホルムズ海峡は、イランに限らず、サウジアラビアやアラブ首長国連邦なども利用する中東の石油輸出の要所だ。イランの軍事演習関係者は、敵の攻撃があった場合、同海峡を封鎖する可能性があると示唆しており、イランは「石油カード」をちらつかせることで、核問題に対する米欧の圧力をかわす狙いとみられる。
 国連安全保障理事会は先月末、イランにウラン濃縮活動の全面停止などを求める議長声明を全会一致で採択したが、イランは核開発を継続する構えを崩していない。
(産経新聞) - 4月6日3時1分更新


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