昨日4月7日に選出された小沢一郎・民主党新代表の政見演説(要旨)と公約(同)の中で印象に残った点について、感想をいくつか書いておきたいと思う。なお、政見演説と公約の要旨の引用文は全て讀賣新聞4月8日付朝刊に依拠した。
『日本はデタラメな小泉政治の結果、屋台骨が崩れて迷走を続けている。立て直すには明確な理念と設計図が不可欠だ。理念は「共生」だ。人間と人間の共生は平和問題。自然との共生は環境問題。両面で日本がリーダー役を果たさねばならない。小泉政治は自由と身勝手を混同し、弱肉強食の格差社会を生んだ。民主党の目指すべき社会は、もくもく働く人、努力する人、正直な者が報われる公正な社会だ。(政見演説要旨より)』
●コメント:「日本はデタラメな小泉政治の結果、屋台骨が崩れて迷走を続けている」「小泉政治は自由と身勝手を混同し、弱肉強食の格差社会を生んだ」というのは、野党は与党を批判する存在であるということを割り引いて考えても、事実誤認ではないかと思う。「屋台骨が崩れて迷走を続けている」のは遥か昔からの話であって、小泉政権を原因だとするのはいかにも無理がある。小泉政権がよく改革をやっているというのが多数の国民の意見なのだから、あまり支持を得られない見方であろう。また「格差」を目の敵にするのは、社会主義的発想である。
「人間と人間の共生は平和問題。自然との共生は環境問題」というのは、表現としてはうまいと思う。
『政策立案、国会論戦、日常活動のすべてで、自民党との対立軸を示していく。(政見演説要旨より)』
●コメント:前原前代表は未熟な点は少なからずあったとはいえ、対案路線を打ち出そうとしたことや、外交・安全保障面において多くを与党と認識を共有しようとしたのは意義深いことであった。「なんでも反対」「反対のための反対」の旧態依然とした野党に逆戻りしないよう切に願う。
『最近、青年時代に見た映画「山猫」のクライマックスのせりふを思い出す。「変わらずに生き残るためには、変わらなければならない」(中略)まず私自身が変わらなければならない。(政見演説要旨より)』
●コメント:政治姿勢や手法あるいは政策は別にして、真摯な考えに基づくのであれば、一個の人間としてその姿勢には共感を覚える。齢六十を越えて一念発起してそのように決意されたならば、是非実現できれば素晴らしいことだと思う。以前に小沢氏はエドマン・バーグの「保守主義者は、保守するために改革する」という言葉をよく引用していた記憶がある。それは、個人というよりは制度に関する言葉なのだろうが、思想として相通ずるものがあるような気はする。
以下は、公約に関して。
■公正な国をつくる
1.理念
(1)国民が改革の担い手
(2)「勝ち組」だけが得せず努力した人が報われる
(3)単なる節制や切捨てでなく仕組みを変える
(4)伝統と文化を再生、発展させる
●コメント:正直言って、あまりイメージが湧かない。「勝ち組だけが得せず努力した人が報われる」というが、いわゆる「勝ち組」だって純粋に「棚から牡丹餅」というのは少ないのではないか。勤労ではないにせよ、何らかの努力はしたというべきであろう。多様性を認める社会が活力に繋がる。
伝統と文化を再生発展させるという方向性は首肯できるが、具体的方策が明らかにならないことには何ともコメントしようがない。
2.改革八策
(1)年金、介護、高齢者医療の基礎的部分を消費税で賄う
(2)自分で計算し、納める所得税制とし、税率引き下げ。諸控除を廃止、手当てを充実
(3)中央省庁のひも付き個別補助金を全廃、自主財源として地方に一括交付
(4)義務教育は国が最終責任。市町村が創意工夫で行う。
(5)農業を自由化。主要生産物に不足払い制導入
(6)地球環境保全を国家目標化
(7)憲法に基づく国連中心の安全保障原則の確立。日米関係を機軸に中韓など近隣諸国との関係改善
(8)家族の絆と地域の連帯を再生
●コメント:経済政策の面では、結局のところ「大きな政府」志向であると考えられる。「年金、介護、高齢者医療の基礎的部分を消費税で賄う」というのは国が面倒を見すぎだろうし、「手当てを充実」というのは容易にバラマキに繋がる。「自分で計算し、納める所得税制」は、納税者意識を高める上で意味のあることだと思う。
小沢氏が自由党時代から力説しているが今もってよく分からないのが「義務教育は国が最終責任。市町村が創意工夫で行う」である。自由党時代は、選挙公約として教職員の身分は最終的には国が保障するという内容の「国家公務員教育職」制度を提唱していた。これには大反対である。教育にこそ自然淘汰の原理が必要だと考えるからだ。
「農業を自由化。主要生産物に不足払い制導入」。これはおおむね賛成です。実は、自民党は農産物の自給率向上だけでなく積極的に輸出するという「攻めの農業」政策を打ち出している。また、構造改革特区制度などを活用して株式会社の農業経営への道も開かれつつある。
外交安保政策では、「国連中心の安全保障原則の確立」に大いに異論がある。理由は簡単で、現実的ではないから。国連憲章に定められた軍事参謀委員会(国連軍の総司令部に相当)も存在しなければ、国連軍として供出するべく保持するよう求められている各国の空軍割り当てを、実行している奇特な国が一国たりともないという現実に目を向けるべきである。憲章上は周縁的な業務に過ぎないPKOなどに積極的に参加するというのであれば、それは「国連中心の安全保障原則の確立」と呼ぶのは正確でない。また、国連待機部隊構想は効率の面からも原理原則の上からも問題がありすぎる。こういうと語弊があるかもしれないが、自衛隊の国際貢献には実地体験を通じて錬度を高める意味合いもある。
「家族の絆と地域の連帯を再生」については、どう考えても「家族破壊」を企んでいるとしか思えない過激なジェンダーフリー主義者を民主党は少なからず抱え込んでいるので、外交安保政策と並んで、党分裂の原因になる可能性はあると感じる。
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『日本はデタラメな小泉政治の結果、屋台骨が崩れて迷走を続けている。立て直すには明確な理念と設計図が不可欠だ。理念は「共生」だ。人間と人間の共生は平和問題。自然との共生は環境問題。両面で日本がリーダー役を果たさねばならない。小泉政治は自由と身勝手を混同し、弱肉強食の格差社会を生んだ。民主党の目指すべき社会は、もくもく働く人、努力する人、正直な者が報われる公正な社会だ。(政見演説要旨より)』
●コメント:「日本はデタラメな小泉政治の結果、屋台骨が崩れて迷走を続けている」「小泉政治は自由と身勝手を混同し、弱肉強食の格差社会を生んだ」というのは、野党は与党を批判する存在であるということを割り引いて考えても、事実誤認ではないかと思う。「屋台骨が崩れて迷走を続けている」のは遥か昔からの話であって、小泉政権を原因だとするのはいかにも無理がある。小泉政権がよく改革をやっているというのが多数の国民の意見なのだから、あまり支持を得られない見方であろう。また「格差」を目の敵にするのは、社会主義的発想である。
「人間と人間の共生は平和問題。自然との共生は環境問題」というのは、表現としてはうまいと思う。
『政策立案、国会論戦、日常活動のすべてで、自民党との対立軸を示していく。(政見演説要旨より)』
●コメント:前原前代表は未熟な点は少なからずあったとはいえ、対案路線を打ち出そうとしたことや、外交・安全保障面において多くを与党と認識を共有しようとしたのは意義深いことであった。「なんでも反対」「反対のための反対」の旧態依然とした野党に逆戻りしないよう切に願う。
『最近、青年時代に見た映画「山猫」のクライマックスのせりふを思い出す。「変わらずに生き残るためには、変わらなければならない」(中略)まず私自身が変わらなければならない。(政見演説要旨より)』
●コメント:政治姿勢や手法あるいは政策は別にして、真摯な考えに基づくのであれば、一個の人間としてその姿勢には共感を覚える。齢六十を越えて一念発起してそのように決意されたならば、是非実現できれば素晴らしいことだと思う。以前に小沢氏はエドマン・バーグの「保守主義者は、保守するために改革する」という言葉をよく引用していた記憶がある。それは、個人というよりは制度に関する言葉なのだろうが、思想として相通ずるものがあるような気はする。
以下は、公約に関して。
■公正な国をつくる
1.理念
(1)国民が改革の担い手
(2)「勝ち組」だけが得せず努力した人が報われる
(3)単なる節制や切捨てでなく仕組みを変える
(4)伝統と文化を再生、発展させる
●コメント:正直言って、あまりイメージが湧かない。「勝ち組だけが得せず努力した人が報われる」というが、いわゆる「勝ち組」だって純粋に「棚から牡丹餅」というのは少ないのではないか。勤労ではないにせよ、何らかの努力はしたというべきであろう。多様性を認める社会が活力に繋がる。
伝統と文化を再生発展させるという方向性は首肯できるが、具体的方策が明らかにならないことには何ともコメントしようがない。
2.改革八策
(1)年金、介護、高齢者医療の基礎的部分を消費税で賄う
(2)自分で計算し、納める所得税制とし、税率引き下げ。諸控除を廃止、手当てを充実
(3)中央省庁のひも付き個別補助金を全廃、自主財源として地方に一括交付
(4)義務教育は国が最終責任。市町村が創意工夫で行う。
(5)農業を自由化。主要生産物に不足払い制導入
(6)地球環境保全を国家目標化
(7)憲法に基づく国連中心の安全保障原則の確立。日米関係を機軸に中韓など近隣諸国との関係改善
(8)家族の絆と地域の連帯を再生
●コメント:経済政策の面では、結局のところ「大きな政府」志向であると考えられる。「年金、介護、高齢者医療の基礎的部分を消費税で賄う」というのは国が面倒を見すぎだろうし、「手当てを充実」というのは容易にバラマキに繋がる。「自分で計算し、納める所得税制」は、納税者意識を高める上で意味のあることだと思う。
小沢氏が自由党時代から力説しているが今もってよく分からないのが「義務教育は国が最終責任。市町村が創意工夫で行う」である。自由党時代は、選挙公約として教職員の身分は最終的には国が保障するという内容の「国家公務員教育職」制度を提唱していた。これには大反対である。教育にこそ自然淘汰の原理が必要だと考えるからだ。
「農業を自由化。主要生産物に不足払い制導入」。これはおおむね賛成です。実は、自民党は農産物の自給率向上だけでなく積極的に輸出するという「攻めの農業」政策を打ち出している。また、構造改革特区制度などを活用して株式会社の農業経営への道も開かれつつある。
外交安保政策では、「国連中心の安全保障原則の確立」に大いに異論がある。理由は簡単で、現実的ではないから。国連憲章に定められた軍事参謀委員会(国連軍の総司令部に相当)も存在しなければ、国連軍として供出するべく保持するよう求められている各国の空軍割り当てを、実行している奇特な国が一国たりともないという現実に目を向けるべきである。憲章上は周縁的な業務に過ぎないPKOなどに積極的に参加するというのであれば、それは「国連中心の安全保障原則の確立」と呼ぶのは正確でない。また、国連待機部隊構想は効率の面からも原理原則の上からも問題がありすぎる。こういうと語弊があるかもしれないが、自衛隊の国際貢献には実地体験を通じて錬度を高める意味合いもある。
「家族の絆と地域の連帯を再生」については、どう考えても「家族破壊」を企んでいるとしか思えない過激なジェンダーフリー主義者を民主党は少なからず抱え込んでいるので、外交安保政策と並んで、党分裂の原因になる可能性はあると感じる。
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> 現政権が『日本改造計画』の冒頭の理念を実現しているではないかという御主張には全くもって賛成です。
貴方のお立場からこのような評価になっているのでしょうね。
現政権が『日本改造計画』の冒頭の理念をやります!と標榜した事は認められますが…
あまりにも中途半端ではありませんか?
実現したと断じるはあまりにも・・・
100の事をやる!と宣言し、30しか出来ていない!と指摘されると、『こんな事に手を付けた内閣がいままでにあったか?!』と逆切れし自慢するの図。
素直に後70を為す道程を示すのが本筋ではないのですかね。
そこが”自民”に期待できない胡散臭さの元だと思います。
いつまでも草加の庇護を受け続けねばならぬ所以でしょうね。
民主の至らなさを言い募るのみに腐心する様はあまりにもみっともないです。
因みに私は支持政党なしです。
期待できなそーな気がしますね。
今ま小沢さんが話すのを聞く機会ってあまりなかったんで、
あまり気にならなかったんですけど、
小沢さん、ちょびっとぶりっ子するとこがあって不気味です。
『僕って口下手だからぁ~。』
あ・・、これって中傷?ごめんなさーい。
どんな改革にも正の面と負の面があります。自分がやろうとしていたことを、小泉純一郎がやることによって見えた負の面をあげつらっているのが今の小沢一郎でしょうね。
安倍さんか麻生さんか次の政権にも、改革の負の面から見えたからといって後戻りは決してして欲しくないですね。
素直に後70を為す道程を示すのが本筋ではないのですかね。
100分の30であろうと達成できたことは率直に評価すべきです。残念なことに「素直に後70を為す道程を示す」という紳士的な対応に徹したら、これでもかこれでもかと批判を浴びせられるものです。そうはいっても、改革の残りの方向性を、後任に対する期待という形で、ことあるごとに示唆しています。
>民主の至らなさを言い募るのみに腐心する様はあまりにもみっともないです。
これ、どの部分を読めばそういう評価になるんですか?私には不思議で仕方がないのですが…。
「いや、そこがかわいらしいんだ」と思う人もいるかもしれませんよ。人間の感性というのは人それぞれですからねぇ。
>あ・・、これって中傷?ごめんなさーい。
「感想」といったところじゃないですか?(笑)
>自分がやろうとしていたことを、小泉純一郎がやることによって見えた負の面をあげつらっているのが今の小沢一郎でしょうね。
なるほど!さすがに、観察力と構図の設定が鋭いですね。
>安倍さんか麻生さんか次の政権にも、改革の負の面から見えたからといって後戻りは決してして欲しくないですね。
真の自由主義を目指した改革は、やはり道半ばですからね。また「守成は草創より難し」と故事成語にあります通り、ものごとは始めるにも増して軌道に乗せて守っていくことが難しいので、後継政権はまさに真価が問われます。名前が挙がっている安倍さんや麻生さんだったら大丈夫だとは思いますが。
> 100分の30であろうと達成できたことは率直に評価すべきです。残念なことに「素直に後70を為す道程を示す」という紳士的な対応に徹したら、これでもかこれでもかと批判を浴びせられるものです。そうはいっても、改革の残りの方向性を、後任に対する期待という形で、ことあるごとに示唆しています。
30点を素直に評価させて欲しいものです。
誉めろ!と得意満面の顔をするから「おいおい!」って突っ込まれるのでは?
紳士的に対応するとこれでもかと突っ込まれるってのは逆でしょう^^
> >民主の至らなさを言い募るのみに腐心する様はあまりにもみっともないです。
>
> これ、どの部分を読めばそういう評価になるんですか?私には不思議で仕方がないのですが…。
これは大変申し訳ないです。
コメントに対するものではなく不適切でした。
私が確信的、妄信的小泉擁護派に対していつも吐く言葉です。
HPの「自民党中央政治大学院研究員」を見て「どうせ・・・」なんてたかを括って書いてしまいました。
お詫びします。
誉めろ!と得意満面の顔をするから「おいおい!」って突っ込まれるのでは?
紳士的に対応するとこれでもかと突っ込まれるってのは逆でしょう^^
小泉総理は、好き嫌いは分かれるでしょうけど、「開き直り」をも自らのキャラクターとしてうまく確立してしまったというべきか…。ちょっと言葉足らずだったかもしれませんが、これでもかこれでもかと追い打ちをかけてくるというのは、主に今までのマスコミの対応を念頭に申し上げたことです。しかし、国民の受け止め方はかなり成熟してきたのではないかとも感じています。
あなたのような支持政党なしの方が、成果は素直に100分の30でも評価したいと言ってくださるのだから、「政策本位の政治」の確立に向けての展望にも楽観的なものが持てます。
>HPの「自民党中央政治大学院研究員」を見て「どうせ・・・」なんてたかを括って書いてしまいました。
お詫びします。
いえいえ、私の真意といいますかスタンスをわかってくださればありがたいことです。
それを狙ってるみたいに見えるんです。
実際はオヤジの厭らしさ(いろんな意味で)全開な気がします。
私ひねくれてるんでしょうかw
私は民主党の進むべき道は「中道左派」こそが良いと思っています。年金など社会保障の問題は元々社会主義的な要素でもあり、小泉政権が「機会の平等」を推進しているため、あまり社会保障の手厚さとは馴染まない印象が大きいです。その点民主党は自民党よりも「結果の平等」というところにベクトルを向け、社会保障を手厚くすれば対立軸がしっかりすると思います。
そこで気になるのが増税になるかどうかです。社会保障を自民党の求めるレベルより厚くすれば税金の負担も高くなります。その負担を企業に求めれば競争率が低下し、個人に向ければせっかく伸びてきた個人消費も冷めてしまいます。しかし、景気が上向いたなかで取り残された人や企業はまだまだ多く、「国家による保護」を必要とする人たちもかなりいるため、増税してでもそれらの保護を選ぶという人たちは必ずいます。
間接民主制は国民の直接の関心事である経済政策に依存しがちですし、そこに焦点を当てるのが一番費用対効果が高いです。そして小泉政権で取り残された人と、今の小泉政権を支持しつつも不安を感じている人を対象にした経済政策を立案する(そしてその政策に向けて一致団結する)のが今の民主党に必要でしょうね。