烏有亭日乗

烏の塒に帰るを眺めつつ気ままに綴る読書日記

倫理としての身体

2006-05-09 23:58:52 | 随想

 人間の身体は、本性の異なる極めて多くの個体から組織されており、その個体の各々はまた極めて複雑な組織からできている 

人間の身体の諸部分における運動および静止の割合が保持されるようにさせるものは善である。これに反して、人間身体の諸部分が互いに運動および静止の異なった割合をとるようにさせるものは悪である。

いずれもスピノザの『エチカ』からの引用。「身体」を個人の肉体に限定しないこと。「l私たちの活動力を増大し、促進するものが善」なのであるから、この身体は私の皮膚の境界で限定されたものである必要はない。私とあなたが共にあり、それが一緒になって身体として組織され、活動力が増大するならばまことに喜ばしいことなのだ。この「身体」の運動と静止の割合に変更をきたすような外在的な規範(道徳)は、悪である。逆に我々に内在的な、喜びを増す力の問題が倫理としての問題だ。