細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『過去を逃れて』は、「カリブの熱い夜」とは同姓ながら異兄弟。

2021年02月26日 | Weblog
●2月25日(木)21-45『過去を逃れて』"Out of the Past" (1947) RKO Radio Pictures,
監督・ジャック・ターナー 主演・ロバート・ミッチャム、カーク・ダグラス、ロンダ・フレミング、ジェーン・グリア
★モノクローム・スタンダード・97分・<コスミック出版・DVD/ムック。暗黒の世界>
過日明記した『堕ちた天使』が<フィルム・ノワール>の代名詞とも言えるだろうが、こちらの作品も匹敵する異色作で、リメイクまでされた悪道傑作だ。
基本的に、ノワールは、ギャングなどの職業的な<悪行専門職>ではなくて、ごく普通の善人が、不運にも運命に見捨てられてしまい、悪の世界を右往左往する。
という解釈もあるが、この作品は善良な生活をしていた男が、昔の悪行のつきあいから、また<悪の片棒>へのカムバックを強いられて行く・・・という不運。
ミッチャムも<ギャング時代>の脚を洗って、いまはネヴァダ辺りのローカル・タウンで、街道のドライバーのためのガソリン・スタンドを細々と営んでいた。
ところが、ある日のこと、昔の悪友が偶然やってきて、彼もつき合った事のある行方不明のガールフレンドを、高額ギャラで探してくれないか・・というのだ。
元カノの趣味やセンスは、勝手知ってるミッチャムは、しぶしぶ悪友カーク・ダグラスの依頼をうけて、メキシコのメリダ辺りの田舎町に行き、彼女をバーで見つけた。
昔のよしみで話し合い、とにかく高額の収入も約束するので、彼女をウェスト・ハリウッド辺りの、ギャングの経営するナイト・クラブに連れ帰ったのだが・・・。
そこは当然のように、麻薬と香水の匂うヤクザな世界なので、三流ドラマのように<悪臭の三角関係>となり、ミッチャムはもとのガソリン・スタンドには戻れない落とし穴。
この<ノワール・マニア>には定評のある設定は、1984年には、ジェフ・ブリッジス主演で、テイラー・ハックフォードが「カリブの熱い夜」というタイトルでリメイク。
公開当時は、たまたまロサンゼルスに行っていて、一緒に電通に勤務していた同期の映画友達の<石上三登志>くんと、ウェスト・ハリウッドのカフェで語り合ったものだ。
結局は、ノワールというのは、犯罪の悪行よりも、ファム・ファタール<悪女>の絡みの旨みによるのだ、という同意見で、こちらのクラシックが優先したのだ。
悪事には直接に加担しなくても、そのアヤしい魅力で、男達をアクの世界に落しこむ、という性癖の妖しさが、この作品では安香水のように匂いを残してしまった。

■イレギュラーなゴロがセンターの股間を抜けてスリーベース。 ★★★★☆☆
●コスミック出版DVDムック「暗黒の世界」より