細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『ワイルドマン・ブルース』で見せる、ジャズマン・ウディの素顔。

2021年02月13日 | Weblog
●2月12日(金)21-30 二子玉川サンセット傑作座
0V-38-29『ワイルドマン・ブルース』"Wildman Blues" (1998) A Barbra Couple Production (VHS)
監督・バーブラ・コープル 主演・ウディ・アレン、&<ワイルドマン・ブルース・バンド>
昨年には、新作「レイニー・デイ・イン・ニューヨーク」を公開して、83歳でも健在ぶりを披露した、これはウディのプライベイト・ツアー・フィルム。
趣味のクラリネットでの<ディキシーランド・ジャズ>を、以前からマンハッタンのグリニッチ・ヴィレッジのパブで毎週末に生演奏していることは有名だった。
その彼の7人ほどの高齢者メンバーによる、バンドの演奏ツアーがヨーロッパで開催されたのは90年代後半、いろいろなニュースで知っていたが、これはそのライブなのだった。
そのお宝映像VHSテープで保存していたのが、つい最近に大掃除していたら、発見。
1997年頃に、その7人ほどの編成による、南仏をライブ・ツアーしたときの、これは大いに貴重なフィルムなのだった。
ディキシーランド・ジャズ、といっても、このウディのバンドの演奏は、おそらく、キング・オリヴァーやルイ・アームストロングのスタイルよりも、ネイティブらしい。
いろいろと曲を演奏していくが、ルイのように、歌手がいて曲目を紹介するでもなく、そこは<ジャズの原点>ともいうべき、黒人の血とアセの結晶のような枯れた味。
メンバーも、ウディよりも高齢な黒人ばかりなので、そこは<ジャズの原点>というよりは、前世紀に移民してきた黒人労働者たちの、まさに<ワークソング>なのだ。
わたしも青春時代には、キャノン・ボール・アダレー、アート・ブレイキーや、ナット・キング・コールなどの来日黒人たちのジャズを聞いたものだが、これはその原点のようなサウンド。
マドリード、マラガ、マルベーヤ、トリノ、などなどの南の町でのライブ・ツアーの演奏は、どれも曲名は区別のつかないような、あの粗雑で古風なディキシーランド。
それでも住民たちの熱烈な歓迎を受けて、ウディと、そのバンドは2時間ほどのステージをコナして行く姿は、またミュージシャンとしてのウディを見せつける。
いつもポピュラーなジャズの名曲を聞いている小生には、いかにもカビ臭い連続でエンドレスなサウンドなのだが、ここにも、また天才ウディの実像があったのだ。

■ボテボテながらもサードベースに当たってのツーベース、 ★★★★
●探せばきっと見つかるウディ・アレンの生演奏。