『東京の坂、日本の坂』その118。八幡坂の先を左に曲がり、音羽通りに出る。少し歩くと「鳩山会館」の大きな文字。さらに中に入ると左に弧を描きながら行く坂道となっている。これを登りきると立派な洋館が出てくる。
せっかくなので入場券600円を支払い、中に入る。入口裏にはハトを描いた小川三知・作のステンドグラスこれだけでも素晴らしい。
入口横のソファで案内ビデオを見て中に入る。この洋館は大正13年に作られたもので一家に総理大臣経験者が2人もいる鳩山家の総本山。曽祖父和夫、祖父一郎、祖母薫、父威一郎、そして由紀夫と邦夫、さらにその息子の太郎と国会議員6人を輩出している。
それぞれの部屋に一郎、威一郎、薫の記念室もあり、中を見るのも面白い。さらにサンルームや立派な庭もあり、じっくり見ると1時間はかかる。
やはり私が感動したのは2階に向かう踊り場にあった立派なステンドグラス、これには鳩と五重塔が描かれている。建物の屋根の部分には4羽のフクロウの塑像。さらに庭には一郎の銅像、和夫夫婦の朝倉文夫作の銅像、いずれも一見の価値がある。また、夏に訪れた大磯の吉田邸と比較をするのも面白い。
鳩山会館を後に本来の目的である『鼠坂』を目指す。護国寺方面に歩き、2本目の細い道を右に。目の前には鼠の尻尾のように伸びる階段坂が出てくる。真ん中は階段、両側はスロープで手すりも付いていて自転車やバイクの転落注意の看板があちこちにある。
坂の途中の空き地に鼠と『pass de trash』(ゴミはゴミ箱に)という落書きというか、メッセージがあったのだが、中々面白い。
鼠坂は森鴎外の短編のタイトルにもなり、冒頭では『小日向から音羽へ降りる鼠坂かと云う坂がある。鼠でなくては上がり降りができないと云う意味で附けた名だそうだ。』と書かれている。
坂を登るが確かに細くて急な坂、鷺坂や八幡坂と違いまっすぐ登っていく。周囲にビルが建つ前は音羽通りを流れていた弦巻川が見えたのであろう、そのため水見坂という別称もある。
坂を降りてさらに右に歩くと大塚警察のある交差点があるが、これを右に曲がると左に弧を描きながら登る坂が出てくるが、これが『付属横坂』。坂を登りきると筑波大付属中学・高校があるため、この名前となった。
音羽通りから小日向台地に向かう坂道はいずれも急坂であり、上り降りだけでもまだまだ汗だくになる。ここから護国寺駅までは5分程度である。