鉄道シリーズ その22。今はあまり縁がなくなってしまったが、神保町は高校時代は予備校帰りに毎日のように立ち寄った。表向きは勉学の本を買いに行っていることになっていたが、一つは中古家電屋さんに行き、電卓など計算機を見に行くこと。今も店はあるが、交差点にあるキムラヤはかつて中古専門の家電店で、なけなしの金を払って安物のオムロンの12桁の計算機を買ったが、一週間でおかしくなり、半年経つ前にオシャカになった暗い思い出がある。
前置きが長くなったが、神保町に来るもう一つの理由こそ、古い鉄道雑誌と時刻表探し。中学時代に神田の古本市で昭和16年2月の時間表を26000円出して買ったことがある。それまでの貯金とお年玉を全てつぎ込みようやく足りたが、その後は全く金がなくなり、えらく困った。しかし、この時間表を見て楽しめた分で十分元はとれている。そして、今でも見るたび懐かしくなる。何しろ当時はまだ復刻版などなく、昔のダイヤを知るには古い時刻表を買うしかなかったのだから。
今でもよく行く時刻表や鉄道雑誌の店は2軒。一軒は岩波ホールの隣の二階の泰川堂書店。本来、地図が専門だが、古めの時刻表は品揃えがよい。昭和17年4月号が21千円、昭和21年2月号が26千円、昭和25年10月号が15千円、昭和29年2月号が10千円とリーズナブル。ただ、昭和30年代以降は飛び飛びにある程度。(価格はいずれも美品で少し汚れがあるのは8千円程度)まあ、リーズナブルと思うのは小生のような、ディープなマニアのみかもしれない。
もう一軒が少し専修大学方向に歩いて左側にある篠村書店、この店は耳の少し遠いお婆さんが店番をやっている。時刻表のラインナップは素晴らしいが、古いものは少し高め。因みに小生が買った昭和33年8月号は16千円だった。(本当は誕生月の昭和33年7月号をずっとさがしている。)鉄道雑誌はピクトリアルやファン、ジャーナル、旅と鉄道などかなり充実、値段も昭和36年の鉄道ファン創刊号で250円と比較的安い。お婆さんの口癖は『(古い時刻表は)高いでしょう、でもそういうものなのでごめんなさい。』『この手の本を売る場合、普通の店ならすごく安いから、整理するならうちにもってきてね。』で、こちらが何か話しても耳が遠くて殆ど聴こえていない。
この店の周りは映画パンフ、楽譜、歴史書、音楽雑誌など楽しい店が多くて僅か50m行くのにまあ2時間は掛かる。秋の午後こういう過ごし方もまたいい。