労組書記長(←元)社労士 ビール片手にうろうろと~

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【メモ】「職種限定合意」という雇用契約に関する判令、タクシーやバスの職場では当たり前である雇用契約であるのだが…

2024-10-10 | 書記長社労士 労務管理
 私たちのようなタクシー・バス運転者は、「運転者」として職種限定合意契約で就労しているケースが多く、運転業務が出来なくなってしまったとき、または、業務命令により職種変更する際に、いろいろとあるんだが…。
ということで、以下の判例をメモしておく。

【滋賀県社会福祉協議会事件】(最小判令6・4・26)
 社会福祉法人である第一審被告(以下「Y」)において福祉用具の改造・製作、技術の開発を担当する技術職として18年間勤務していた第一審原告(以下「X」)に対し、Yが、福祉用具改造・製作業務を廃止する方針に基づき、総務課施設管理担当への配転を命じたという事案。第一審(京都地裁令和4年4月27日判決)及び控訴審(大阪高裁令和4年11月24日判決)は、X・Y間で、Xを技術職として就労させるとの黙示の職種限定合意があったと認定した上で、業務廃止に伴う解雇回避のためには、他の業務への配転を命じる業務上の必要性があり、また、甘受すべき程度を超える不利益を与えるものでもないとして配転命令を有効と判断した。

 これに対し、最高裁は、「労働者と使用者との間に当該労働者の職種や業務内容を特定のものに限定する旨の合意がある場合には、使用者は、当該労働者に対し、その個別的同意なしに当該合意に反する配転命令を命ずる権限を有しないと解される」との基本的考え方を示した上で、X・Y間には職種限定合意があったのだから、Yは、そもそもXの同意を得ることなく技術職以外の業務への配転を命ずる権限を有していなかったとして、原判決を破棄し、差し戻した。


「職種限定の合意」
 労働契約において、使用者と労働者との間で、労働者を一定の職種に限定して配置する旨の合意をいい、職種限定の合意がある場合、当該労働者の合意がない限り、当該労働者を他職種へ配転することはできない。

「配転命令権」
 「配転」とは従業員の配置の変更であり、同じ勤務地内での所属部署の変更が「配置転換」、勤務地の変更が「転勤」と呼ばれる。
就業規則上では「業務の都合により、出張、配置転換、転勤を命ずる」等の条項が置かれ、使用者が人事権の一内容として、従業員の職務内容や勤務地を決定する権限(配転命令権)を有することが一般的。

「使用者による配転命令の有効性」⇒東亜ペイント事件(最高裁昭和61年7月14日第二小法廷判決)』
①使用者に配転命令権が認められるか
②認められるとしても権利の濫用(業務上の必要性がない場合または業務上の必要性がある場合でも、不当な動機目的でなされたときもしくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情がある場合)に当たらないか
という観点から適法性が判断されることを示した。

労働条件明示ルールの改正との関係
 2024年4月1日以降、改正労働基準法施行規則が施行され、職務・勤務地に関する労働条件明示ルールが変更された。
具体的には、雇入れ(更新)直後の職務・勤務地の明示に加えて、労働契約の期間中における職務・勤務地の変更の範囲の明示も義務づけられた。
そのため、2024年4月1日以降に雇入れ(更新された)労働者に対しては、職務・勤務地限定の合意の認定が容易になることが予想される。

「同意を得ることなく配転命令をする権限は認められない」
 本件最高裁判決も、従業員の同意を得ることなく配転命令をする権限は認められないと述べるに留めており、同意を得る前提での配転の打診が禁止されているわけではない
職種限定合意が成立していると評価される場合には、解雇回避努力義務を尽くすために、配転の打診を行い、配転への同意を得ることができるかどうかも検討することも視野にいれるべきではないか。
職種限定合意が成立している場合には、使用者は従業員に対する配転命令権自体が認められないと解されることを念頭に置いた上で、配転が必要となった場合には従業員から個別同意を得るための対応をするなどの措置を講じる必要があるのではないか。
ただし、「労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点」には留意が必要か。(職種の変更が、解雇の回避のためであるという事情は、「合理的な理由」の客観的な存在を肯定しやすくする要素となると考えられるが)
コメント
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