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【メモ】就業規則に試用期間延長の規定がない場合の、試用期間延長後に本採用拒否したら…

2024-09-17 | 書記長社労士 労務管理
 たまたまながら、最近、複数件「試用期間」について問い合わせがあった。
そういえば…と、この判例をメモしておく。
とにかく「就業規則&労働協約に書いていないことはするな~❗したいなら書いておけ~❗」ってのが自分のアドバイスの基本やけどな。


明治機械事件(東京地判令2・9・28)
 大学卒業後1年の既卒採用者について、会社が試用期間を2回にわたり延長した後、本採用拒否(留保解約権の行使)をしたところ、当該解約権行使の有効性が問題となった事案で、裁判所は、労働者の同意を得て行った試用期間の延長自体を無効とし、当該本採用拒否を無効とした。


 判決では
1 本件雇用契約における試用期間は、職務内容や適格性を判定するため、使用者が労働者を本採用前に試みに使用する期間で、試用期間中の労働関係について解約権留保付労働契約であると解することができる。
そして、試用期間を延長することは、労働者を不安定な地位に置くことになるから、根拠が必要と解すべきであるが、就業規則のほか労働者の同意も上記根拠に当たると解すべきであり、就業規則の最低基準効(労契法12条)に反しない限り、使用者が労働者の同意を得た上で試用期間を延長することは許される。
 そして、就業規則に試用期間延長の可能性及び期間が定められていない場合であっても、職務能力や適格性について調査を尽くして解約権行使を検討すべき程度の問題があるとの判断に至ったものの労働者の利益のため更に調査を尽くして職務能力や適格性を見出すことができるかを見極める必要がある場合等のやむを得ない事情があると認められる場合に、そのような調査を尽くす目的から、労働者の同意を得た上で必要最小限度の期間を設定して試用期間を延長することを就業規則が禁止しているとは解されないから、上記のようなやむを得ない事情があると認められる場合に調査を尽くす目的から労働者の同意を得た上で必要最小限度の期間を設定して試用期間を延長しても就業規則の最低基準効に反しないが、上記のやむを得ない事情、調査を尽くす目的、必要最小限度の期間について認められない場合、労働者の同意を得たとしても就業規則の最低基準効に反し、延長は無効になると解すべきである

2 Y社が本件雇用契約の試用期間を繰り返し延長した目的は、主として退職勧奨に応じさせることにあったと推認され、これを覆すに足りる証拠は存しないから、1回目の延長についても、2回目の延長についても、Xの職務能力や適格性について更に調査を尽くして適切な配属部署があるかを検討するというY社主張の目的があったと認めることはできない。

3 そうすると、1回目の延長はやむを得ない事情があったとも、調査を尽くす目的があったとも、認められず、就業規則の最低基準効に反することから無効であり、1回目の延長が有効であることを前提とする2回目の延長及び3回目の延長も無効であるから、本件雇用契約は、試用期間の満了日である平成30年6月30日の経過により、解雇権留保のない労働契約に移行したと認められる。

 本件では、就業規則に試用期間の定めは存在したが、その延長に関する定めがなかった。
「就業規則などで延長の可能性及びその事由、期間などが明定されていない限り、試用労働者の利益のために原則として認めるべきではない。なお、本採用を拒否できる場合にそれを猶予する延長は認められうるとする。」(菅野和夫・山川隆一「労働法」)
「試用期間の延長は、労働者を長期間不安定な地位に置く結果となるため、当初予定した職務への適格性はないが、なお職務適格性を見出すために行われるなど、合理的理由がある場合にのみ許されると解すべき」(土田道夫「労働契約法」)
「試用期間満了時に一応職務不適格と判断されたものについて、…更に職務適格性を見出すために、試用期間を引き続き一定の期間延長することも許される」雅叙園観光事件(東京地判昭60・11・20)

 本判決では、「労働者の利益のため更に調査を尽くして職務能力や適格性を見出すことができるかを見極める必要がある場合等のやむを得ない事情があると認められる場合に、そのような調査を尽くす目的から、労働者の同意を得た上で必要最小限度の期間を設定して試用期間を延長することを就業規則が禁止しているとは解されない。」
「試用期間を延長することは、労働者を不安定な地位に置くことになるから、根拠が必要と解すべきであるが、就業規則のほか労働者の同意も上記根拠に当たると解すべきであり、就業規則の最低基準効(労契法12条)に反しない限り、使用者が労働者の同意を得た上で試用期間を延長することは許される。」とされた。
しかし「労働契約法12条」についての判断はされていない。

 試用期間満了時(あるいは試用期間中)に本採用を拒否することの有効性【最大判昭48・12・12】
①採否決定の当初においては、その者の資質、性格、能力その他上告人のいわゆる管理職要員としての適格性の有無に関連する事項について必要な調査を行ない、適切な判定資料を十分に蒐集することができないため、後日における調査や観察に基づく最終的決定を留保する趣旨でされること
②留保解約権に基づく解雇は、これを通常の解雇と全く同一に論ずることはできず、前者については、後者の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められること
③留保解約権の行使は、上述した解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許される
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