労組書記長(←元)社労士 ビール片手にうろうろと~

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退職時の残った年次有給休暇には、消化や買取、諦めて消滅などいくつかの選択肢がある。

2020-09-16 | 書記長社労士 労務管理
 退職時の残った年次有給休暇には、消化や買取、諦めて消滅などいくつかの選択肢がある。

 そもそも年次有給休暇は一定期間働いた労働者の権利なので、その取得は、労働者の自由だ。
理由も問われないし、いつ使うかも、労働者の都合で決めていいと法律で決められている。(時季指定権)
ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、会社は他の時季にこれを与えることができる。(時季変更権)
事業の正常な運営を妨げるような場合に限られるので、単に「忙しいから」とか漠然とした理由は駄目で、また、あくまでも時季の変更なので、他の時季に取ってねとお願いしつつ、有給休暇を取得させなければならない。

労働基準法 第39条
5 使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。


 さて、退職前に残っている年次有給休暇は、退職までに使い切ることが普通。
退職前に年次有給休暇をまとめて取って消化してしまう場合は、一般的に最終の出勤日以降に年休消化をして退職(雇用終了)となる。
でも、退職までに年休消化をされてしまうと業務の都合上、困る場合に、「事業の正常な運営を妨げる場合」として、前述の「時季変更権」は行使出来るのかということについては、それは出来ないと、厚生労働省の通達では指摘されている。

 年次有給休暇の権利が労働基準法に基づくものである限り、その労働者の解雇予定日を超えての時季変更権行使は行えないものと解する(昭49.1.11 基収5554)

 だから、会社の都合で、引き継ぎや人員補充、シフトの関係など、どうしても休まれては困る場合は、退職日を変更して貰う(退職日を後ろ倒ししてその間に消化して貰う)ようにお願いするしかない。

 または、休まれたら困る場合に年次有給休暇の残ってしまう日数分を買い取るという金銭解決でお願いするという方法も考えられる。
本来、「年次有給休暇の買上げを予約し、これに基づいて労基法39条の規定により請求しうる年次有給休暇の日数を減じ、ないし請求された日数を与えないことは同条違反である(昭和30年11.30基収4718号)」とされているので、年休の買い取りは違法なのだが、退職時の買い取りについては、裁判例があり、「従業員の退職時において、会社が未消化分の有給休暇を買い取ることは違法ではない」と判断している(聖心女子学院事件(神戸地方裁判所 昭和29年3月19日判決))。
ただ、「1日あたり、いくらの金額で買い取るか」については、法律上の決まり(計算方法)はないので、それはお互いの交渉となる。
なお、退職時に有給休暇を買い取る場合、所得税法第30条第1項における「退職所得」として取り扱う必要がある。

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