たわけ うつけ 『信長公記』の以前の記録
◆質問者
長谷川先生に『信長公記』を学びましたが
先生は「公記」に記された言葉のルーツや
故事来歴を『史記』『記紀』などの古典まに
まで遡り解説されて我々は驚いたものです。
◆反論者
その解説は変だと思います。『公記』ならば
信長の代の事だけ教えて頂ければそれで良い。
◆対談者
それでは歴史大観できない。信長の時代の事
だけして歴史展望していない事になりますよ。
何故信長は様々な催し事をしたのか解らない!
◆伝統系譜追求者
全ての物事には伝統や系譜が付き物ですルーツ
モトネタを知っているかでは含蓄が全然違う!
◆質問者
文献『信長公記』に登場する城は一流の城だと
思います。絶対に『信長公記』を読めば城へと
行く人や仲間が増えると思います!これ確実!
◆長谷川
その様な人は世の中には存在しないのが常識!
『信長公記』を読む人は「史読む人」ふみよむ
人です。城行きは勿論「城いく人」です従って
『信長公記』は文献史学で『城行く人』探訪分野
まあ文献も遺跡も両者を同時に学ばれたら文武
両道の人と言う事になりますが二刀流は少ない!
◆長谷川
人間は絶えず歴史を読み故事来歴を研究しな
から絶えず前史を模倣し繰り返す輪廻的反復
を絶えず繰り返し返しています。例えば信長
の実施した二回の馬揃えも元々宮中宮廷行事
です。人間は故事来歴温故知新を繰返すもの
◆長谷川
中国の杜甫の漢詩を日本の俳人松尾芭蕉など
は紀行文『奥の細道』で模倣的引用をしてる。
◆杜甫
『春望』(しゅんぼう)は、唐の詩人・杜甫が
安史の乱のさなかの757年(至徳二戴)春に長安
で詠んだ五言律詩。冒頭の「国破れて山河在り」
◆松尾芭蕉
<奥の細道原文>
国破れて山河あり、城春にして草青みたりと、
笠打敷て、時のうつるまで泪を落し侍りぬ。
◆対談者
日本の芭蕉は杜甫の漢詩を模倣引用しています!
◆長谷川
そう。つまり松尾芭蕉は文学の俳句のルーツたる
漢学の杜甫『春望』の基礎知識を持っていた事や
武田信玄のトレードマークとも言える風林火山の
旗も孫子兵法のコピー模倣といえ晴信は漢学好き。
◆質問者
『信長公記』にも登場する。
うつけ たわけ の意味の違いを簡単に解説を?
◆長谷川
うつの古語は
「宇津の」→「珍の」とも書く、
めずらしい、貴重な、という意味
うつけ=虚無的、空想僻、茫然とした精神状態
★ぼーつと、してる事 空想家 夢想家
うつ=空間=宇宙=宇津
空間に住む魚=うつぼ
うつぼ草=空間のある食虫植物
うつぼ=矢を入れておく空間のある道具
たわけ=無分別、馬鹿、乱暴狼藉、破戒的行為
★アウトロー、パンク、ならず者的な行為
『記紀』=あらぶる神、スサノウの命
うつけ、たわけ、の双方は信長の性格をよく
言い表した言葉のニュアンスと言えましょう。
◆対談者
長谷川先生と言えば城郭遺跡の先生と言う印象
ですがある別の人々からは文献や座学の先生と
して高く評価されてる事に大変驚きます。特に
民俗学や国学や東洋史学にも精通する幅広さに
◆長谷川
『信長公記』を読んでいる人なら著者太田牛一
が『史記』『記紀』様々な編年体記録や仏典
漢籍既読して様々な古典の記述に影響を受け
ている事を誰れでも気付く簡単な事と私は思
います。
◆対談者
ちよと待って下さい。長谷川先生の『古事記』
『日本書紀』を学ぶ環境で生活されて国学の
素養が備わっていた戦国城郭遺跡が多数残る
地域で自然体で城郭遺跡に振れながら民俗学
の書籍を学んで来られたバツクボーンがある
普段から接している事かも知れませんが私達
は偶然、テレビ、大河、小説など偶然歴史の
窓口に立った人々は古典知識が無いので先生
が一体何を解説されているのか解らない事も?
◆長谷川
御指導に感謝致します。何も知らない人の事
を前提に解り易く、解説する事が大事ですね。
◆対談者
先生の講義や解説とは物凄く広く深いのですよ。
引き出しが多くと、引きだしが奥深いのですよ。
◆質問者
具体的に「たわけ」が登場する日本の記録とは?
◆長谷川
『古事記』墨江の大神に「たわけ」が登場します。
現代語
天皇が突然亡くなられたので、皆は大変驚き恐れ
ました。いそいで天皇を殯宮(もがりにのみや)
に遷して安置し、更に国内から大幣(おおぬさ)
を取って供え、
- 生剥(いけはぎ)
- 逆剥(さかはぎ)
- 畔離ち(あはなち)
- 溝埋め(みぞうめ)
- 屎戸(くそへ)
- 親子婚(おやこたはけ)
- 馬婚(うまたはけ)
- 牛婚(うしたはけ)
- 鷄婚(とりたはけ)
- 犬婚(いぬたはけ)罪穢れを、大祓で清めた。
原文
生剥・逆剥・阿離・溝埋・屎戸・上通下通婚・馬婚
・牛婚・鷄婚之罪類、爲国之大祓而、とあります。
◆長谷川
また『延喜式』には
古代における「つみ」の分類。平安時代にできた
『延喜式(えんぎしき)』の大祓詞(おおはらえのこ
とば)では、畔放(あはなち)、溝埋(みぞうめ)、
樋放(ひはなち)、頻蒔(しきまき)、串刺(くしざし)、
生剥(いきはぎ)、逆剥(さかはぎ)、屎戸(くそべ)の
8罪を天津罪とし、生膚断(いきはだだち)、死膚断
(しにはだだち)、白人(しろひと)、胡久美(こくみ)、
己が母犯せる罪、己が子犯せる罪、母と子と犯せ
る罪、子と母と犯せる罪、畜(けもの)犯せる罪、
昆虫(はうむし)の災(わざわい)、高津神(たかつか
み)の災、高津鳥の災、畜仆(けものたおし)、蠱物(
まじもの)せる罪の14罪を国津罪としています。
◆長谷川
インセスト・タブー (Incest Taboo) とは近親相姦
のタブー(禁忌)の事。親子婚(おやこたはけ)
以下は獣姦「人間以外と性交渉」を禁忌「きんき」
として表現しています。
- 馬婚(うまたはけ)
- 牛婚(うしたはけ)
- 鷄婚(とりたはけ)
- 犬婚(いぬたはけ)
◆長谷川 忌言葉「斎宮忌言葉」
伊勢の斎宮で、仏語や不浄な語を避けて、
代わりに用いた言葉。経を「染め紙」
、死を「直り物」、
僧を「髪長かみなが」
、血を「汗」、
仏を「中子なかご」、
病気を「慰やすみ」
といった類。
◆長谷川
忌言葉では現代結婚式でもタブーとされる
語彙は使わない事が原則になっております。
帝「みかど」が死んだと一般人は言いません。
「御隠れ」「おかくれ」になったと言います。
崩御と言う言葉もあります。また非常に有名
な貴人を「隠れなき人」とも言います。神話
の天照大御神などの岩戸隠れも忌詞でしよう。
太陽に関する神事をする人が隠れたと言う事。
それは魏志倭人伝の卑弥呼「日の巫女」だと
言う人も昔からいるのですが?、、、、、、