WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

フェレンツ・シュネートベルガーのノマド

2006年07月23日 | 今日の一枚(E-F)

●今日の一枚 13 ●

Ferenc Snetberger   NOMAD

Scan10001_2  ハンガリー系のジプシーギタリスト、フェレンツ・シュネートベルガーの2005年録音作品だ。CDの帯に「パット・メセニー&チャーリー・ヘイデンによる名作『ミズリーの空高く』を彷彿とさせるコンテンポラリー・ギターアルバムのマスター・ピース誕生」とあるのを読み、期待して購入した。しかし、どこが『ミズリーの空高く』を彷彿とさせるのだ。理解できない。そんな宣伝文句にのせられた私も愚かだった。しかし、考えて見れば、この宣伝文句は汚いやり方ではないか。他のアーティストの作品を引き合いに出して、それを「彷彿とさせる」とは一体どういうつもりだろう。『ミズリーの空高く』のおこぼれにでも預かりたいのだろうか。その根性がさもしい。下品である。作品にそんなに自信がないのだろうか、と思ってしまう。

 この作品自体は悪くはない。幻想的で絵画的な音楽世界は、オリジナリティーあふれるものだ。典型的なジャズとは異なるイディオムで演奏されるギターは大変新鮮であるし、NOMAD(流浪の民)の悲しみを連想させる旋律は魅惑的でもある。私自身としては、推薦したい一枚である。

 だからこそ、先の宣伝文句は悔やまれる。はっきりいって、このことばを考えた人は、このギタリスト・フェレンツ・シュネートベルガーを、そしてこの作品を侮辱している。せっかくのいい作品に泥を塗ってしまったことばである。

 堂々とその作品自体の素晴らしさを伝えることばを考えて欲しい。それがまっとうな宣伝というものだろう。


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