WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

再会

2007年05月05日 | 今日の一枚(A-B)

●今日の一枚 160●

Art Pepper

Among Friends

Watercolors0012_1  悪いが気持ちの悪いジャケットだ。全体の構図はすっきりしてお洒落なのだが、何といってもラス・フリーマンがアート・ペッバーにチューしているのがいけない。若い頃のハンサムなペッパーならまだしも、すっかり姿形が変わってしまったおじさん二人である。よく見ると、さらに気持ち悪い。(興味のある方は写真をクリックして拡大してください)

 1978年録音のアートペッパー『再会』。1950年代の若き日々に何度も競演したラス・フリーマン(p) とフランク・バトラー(ds) を迎えての録音作品だ。そのジャケットのせいもあるのだろうか、私はこの後期ペッパーの快作といわれるアルバムを数度聴いたきりでCD棚の片隅にずいぶん長い間放置してきた。刺激されることの少ない退屈な作品と思われたのである。選曲が有名曲ばかりであることや、ペッパーの演奏があまりに快調でわかりやす過ぎたということも原因したのかもしれない。

 しばらくぶりに聴いてみた『再会』はずいぶん違った印象だった。ローリー夫人は、録音当時「このアルバムはアートのカムバック後のベスト・アルバムになるわよ」といったそうだが、その言葉もうなずけるものだった。たまたま妻や子が不在ということもあり、音量を上げて比較的至近距離で聴いたのだが、ベースのドライブ感がすごい。当時新進気鋭の若手ベーシストだったボブ・マグヌッセンがかなり自己主張している。当のペッパーも絶好調で、旧友たちを迎えてやる気満々な感じが伝わってくる。アルトの音色は弾けるように張りがあり、アドリブも滞ることなくスムーズである。そして何より、よく歌っている。麻薬によって失われた長い長い日々を取り戻すかのように、ペッパーのアルトはいつになくエキサイティングだ。

 なぜ、こういう作品を見逃していたのだろうと考えたりもするのだが、年齢とともに嗜好が変わり、あるいは見えなかったものが見えてくる、聴こえなかったものが聴こえてくるというのもジャズ聴きの醍醐味のひとつだとも思う。

 今日は「こどもの日」。仕事もオフだ。これからクルマで一時間ほどの妻の実家に妻や子を迎えに行き、そのまま日帰りの家族サービスだ。二日酔いのお父さんも辛いが、子ども達と遊べることは何より楽しみだ。


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