WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

ヨス・ヴァン・ビーストのビコーズ・オブ・ユー

2006年07月26日 | 今日の一枚(I-J)

●今日の一枚 17●

Jos Van Beest Trio    

Because Of You

Scan10001_3  澤野工房発売の1993年録音盤である。きれい系JAZZである。BGMジャズである。通常、私はこういう作品をあまり聴かない。日本ではこういう作品はある程度売れるのかもしれないが、はっきりいって、Jazz の演奏としては何かが足りないように思う。私は、何かJazzという音楽に幻想をもっていて、形而上学的な何者かを求めているわけではない。聴けばわかる。確かに、とりあえずゆったりとリラックスして聞ける音楽ではあるが、やはり何かが足りないのである。「何か」……、それはおそらく、JazzをJazzたらしめているものである。相手を煙にまくような、スノビッシュな、ずるい言い方だが、それはやはり非言語的な何かなのである。反語的な言い方になるが、こういう作品を聴くのも、Jazzという音楽を改めて認識し、評価する良い契機となるのではないだろうか。しかし、付属のライナー・ノーツのような紙に書かれた次のような文章をみると、そういうJAZZがあっても良いじゃないか、と思ってしまう。

 ……これでもかとばかりに詰め込んだ美しいメロディーを更に発展させようとするかのような演奏は、楽曲をアドリブの素材として扱うこととは対極にあるジャズならではの寛ぎを与えてくれる。クリエイティブな刺激だけがジャズだろうか?  スウィート・ジャズ・ピアノ・フォー・ラヴァーズ・オンリー。そんな作品があってもいいじゃない、と天国のエヴァンスも笑っているかもしれない。

 このことばに特に否定的な意見を述べるつもりはない。天国のエヴァンスが笑っているかどうかはわからないが、きっとそんな作品があってもいいのだろう。では、なぜ今夜このCDを聴いているのか……。選曲がいいからである。一曲目から、大好きな What Are You Doing The Rest Of Your Life (これからの人生)である。それだけではない、"いそしぎ"もある"酒とバラの日々"もある、"イン・ア・センチメンタル・ムーズ"もある、"ブルー・ボッサ"もある。寺島靖国ではないが、を聴きたくなる日もあるのだ。そう思って、このCDを取り出したのだ。

 しかし、やはり何かが足りない。


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