WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

露天風呂で聴きたい音楽

2014年08月17日 | 今日の一枚(E-F)

●今日の一枚 375●

Ella Fitzgerald & Joe Pass

Easy Living

 近所にスーパー銭湯のような施設ができた。津波で被災して鉄骨だけになった建物を利用してつくられたものだ。しばしば隣町の日帰り温泉までいっていた温泉好きの私にとっては、待望の施設だ。本物の温泉ではないが、「ナノ水」&「炭酸水」を使っているとのことであり、お湯の肌触りは悪くない。お湯がぬるいのがやや不満ではあるが、サウナはしっかり熱くて気持ちいいし、何より家から近いのがいい。なにしろ、入浴の後、車で5分我慢すれば、自宅でビールが飲めるのだ。開店して1か月程だが、もう7~8回も利用している。昨日も、露天風呂で空を見上げながら脱力してしまった。気分はもう最高だ。ただ、小さなスピーカーから流れてくるシャカシャカしたJ-popが耳障りだった。穏やかなジャズでも流れていれば「超」最高なのにと思い、頭に浮かんだのがこのアルバムだった。

 エラ・フィッツジェラルドとジョー・パスのデュオ作『イージー・リヴィング』である。1983年及び1986年の録音作品だ。1970年代後半から80年代にかけて、この2人のデュオ・シリーズは何作か制作されたが、学生時代に、結構はまって聴いていたように思う。ほとんどの作品をレコードレンタル&ダビングのカセットテープで聴いていたが、現在所有しているCDはこの一枚のみである。緊密で質の高いデュオでありながら、リラックスした「脱力系」のサウンドであるのが好ましい。歌に寄り添いながらしっかりとしたアクセントをつけるジョー・パスのギターは本当に素晴らしい。エラは歌詞の意味をかみしめるようにはっきりとした発音で歌っていく。英語の歌詞の意味をリアルタイムでは理解できない私は、歌詞の解釈がどうのこうのではなく、エラの歌唱をサウンドとして好きだと感じる。

 サウナで熱く火照った身体をウッドデッキに寝転んで冷やしながら、あるいは露天風呂で空を見上げながらこのアルバムを聴きたい。そう思う。