WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

素足で海辺に

2014年08月14日 | 今日の一枚(M-N)

●今日の一枚 373●

Michael Franks

Barefoot On The beach

 夏である。子どもたちが幼かった頃には毎日のように浜辺に連れて行ったものだ。駐車料金を払わなくて済む夕方を狙っていくのだ。私自身も、ショアブレイクでブギーボードで楽しんだ。子どもたちは成長し、ブギーボードはいつしかボディーボードと呼ばれるようになった。そして美しい砂浜はあの大津波で失われてしまった。今はもう、海岸線にはかつてのような砂浜はなく、砂利やコンクリートの破片と、土嚢と、そして巨大な工事現場があるだけだ。自宅から車で5分程のところには海が広がっているが、夏だというのにもう浜辺で戯れることもない。

 AORの推進者、マイケル・フランクスの1999年作品『ベアフット・オン・ザ・ビーチ』だ。夏に聴くにはもってこいの作品である。初期の頃のメランコリックな雰囲気は影を潜めたものの、ソフト&メローなサウンドはそのままに、よりジャージーでブルージーなテイストが加味されている。メランコリックな心の揺れは抑制され、対象から距離を置き、ある種の「諦観」の立場から風景を眺めた「大人のサウンド」だ。

裸足で海辺に
水に誘われるまま
青と緑がゆらめく 海のなかへ
なんという心地よさ

 そんな、かつてあった風景を夢想しながら、海に近い自室で、私はマイケル・フランクスを聴いている。