ひのっき

あったかくてぐっすりでごはんがおいしくてよかったねうれしいねなんて小さなしあわせ探し雑記

株式とは何か その5

2007年12月15日 | 投資とか。
さてさて、「株式とは何か」の第五回です。
今回は「株式会社」について考えます。

前回、「株価」が
①正味価格(=1株あたり株主資本)
②将来見込まれる利益への期待値
の合計であるところまでお話しました。

一回の航海ごとに解散する当座会社の場合、
「将来見込まれる利益への期待値」
=「期待される配当額」
=「一回の航海で期待される儲け額」
とシンプルであるため、そんなに極端な株価高騰はありません。
最高でも見込まれる儲け額の満額、そこから航海の成功確率が割り引かれたものが「期待値」となり、「株価」は概ね計算の範囲内での値動きとなります。

しかし1602年、世界初の「株式会社」の誕生より、その前提が大きく変わります。
「株価」はその算定が極めて困難なものとなり、しばしば人智を超えた高騰や理性を失った暴落を繰り返す鬼子と化してしまいます。

それまでの「当座会社」から「株式会社」になって、何が変わったのでしょうか。
本質的な変更点は下記の2点です。
①利益が全額配当されず、一部が「利益剰余金」として資本に組み込まれる
②破綻しないかぎり解散せず、永遠に存続する

ん?たったそれだけ?
そう、でもこの2点がとてつもなく大きな意味を持ちます。

「利益が利益剰余金として資本に組み込まれる」とはどういうことでしょうか。

当座会社では、航海の利益は全額配当金として株主に分配されます。
前回のキャプテンペッパーの例では、航海の利益が3億円、株式発行数が100株ですので、1株あたりの配当金は300万円です。
この場合、株式の正味価格である「1株あたり株主資本」は100万円のまま変わりません。

これに対し株式会社では航海の利益を全額配当しません。一部を「利益剰余金」として資本に組み入れます。

キャプテンペッパーが、航海の利益3億円のうち1億円は資本として会社に残したいと考えたとします。2億金を配当として分配し、1億円は「利益剰余金」として資本に組み入れます。
この場合1株あたりの配当金は200万円になります。

なんだか株主が損するように見えますが、利益剰余金の組み入れにより株主資本が1億円から2億円に増えますので、株式の正味価格である「1株あたり株主資本」が100万円から200万円に増えます。つまり分配される「貨幣」が100万円減る代わりに、所有している「株式の正味価格」が100万円分増えますので、株主の受益額は300万円のまま変わりません。

これだけでは株主にとって別に得でも損でもないのですが、これに「会社が解散せず永遠に存続すること」が条件として付加されると、絶大な効果を発揮します。

会社が存続し続けるので、キャプテンペッパーは会社の資本金を使って次の航海に出発することができます。
資本金が前回より増えていますので、船数を増やすなどより充実した装備で航海に臨めます。これにより更に多くの胡椒を持って帰ることが期待できます。
また船員も前回の航海で経験値が上がった船員をそのまま雇うことができます。これにより更に安全な航行が可能となり、航海の成功確率の上昇が期待できます。
そして会社が永遠に存続する前提であれば、例えばインドに駐在員を置き、現地で胡椒が安いときに買い占めておくなどの施策が打てるようになります。これにより航海の利益率上昇が期待できます。

このように、会社を永遠に存続させることを前提とし、航海ごとに利益を資本に組み入れて資本増加させることにより、1航海あたりの利益と会社の規模が雪だるま式に大きくなっていくことが期待できます。株式の正味価格である「1株あたり株主資本」額もどんどん増えていきます

これが「株式会社」の凄い点です。
航海を重ねるごとに規模と儲けが大きくなりますので、株主はより高額の「配当」と「1株あたり株主資本」増加という利得を得続けることができ、キャプテンは規模と儲けに見合ったより高額の報酬を得続けることができ、また船員はより安定した職を得続けることができます。
そしてキャプテンペッパーの航海継続・拡大でヨーロッパ社会により多くの胡椒が流通するようになり、社会に暮らすみんなが潤い喜びます。

この好循環こそが、「株式会社」という組織、ひいては「資本主義」という社会の最大のメリットとなります。

うーん、「株式会社の株価」まで行けるかと思ったのですが、また長くなっちゃったので次回にします。


コメントを投稿