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【広島 尾道】 尾道ラーメンたに 尾道駅ビル店「尾道ラーメン(700円)」

駅ビルで啜れる絶品尾道ラーメン

広島県東部、いわゆる備後地域で長く親しまれている「尾道ラーメン」。地元ならずとも、その名前を聞いた事がある方も多いだろう。今や全国区の知名度を誇るご当地麺だ。鶏ガラベースの醤油清湯で、表面にはたっぷりの脂と背脂のミンチ。このスタイルの原型を築いたのは、台湾出身の朱阿俊氏と言われている。

朱氏は昭和22年、鶏ガラ醤油清湯に平打ち麺、豚の背脂のミンチを乗せた中華そばを尾道の屋台で提供し始めた。尾道には戦前、鶏と豚の白湯麺があったそうだが、それとは違う独自の一杯である。その後「朱華園」の屋号で店を構え、2019年に閉店するまで愛される存在であった。私自身、未訪なのが非常に悔やまれる。

この鶏ガラベースの「朱華園」スタイルに、魚介出汁を加えるアレンジを施したのが、お隣の福山市にある練り物などを得意とするメーカー「阿藻珍味(あもちんみ)」だ。ご当地麺という言葉がまだ無かった90年代に、お土産用の「尾道ラーメン」の販売を開始した、まさにお土産ラーメンのパイオニアともいえる会社である。

開発の際、ただ「朱華園」の味を再現するのではなく、オリジナリティをと平子鰯を合わせたスープにしたところ大ヒット。以後、鶏ガラに魚介を加えた一杯を提供する店が増加した。「阿藻珍味」は尾道ラーメンに新たな潮流を作り出した存在と言えるだろう。今では「尾道ラーメン」と言えば、鶏+魚介を指すことが多いそうだ。

さて前置きが長くなったが、今回訪れたのは、JR尾道駅の駅ビル1Fにある「尾道ラーメン たに 尾道駅ビル店」だ。代表の谷森公治氏は、福山の松永地区で親族のラーメン店を引き継ぎ1997年に「たに」を創業。福山駅前の「一丁」のご主人に教えを乞うたそうだ。その後、2000年代になると尾道市長江口に2号店、駅ビルの2階に3号店を展開。

本格的に尾道市内に拠点を移し松永店は2007年に閉店した。さらに駅ビルの1階のテナントが空く事になったのを機に、2011年12月に2号店と3号店を統合し現在の駅ビル店に集約したという流れだ。店内はカウンターのみ23席。多くの名店が夜8時までには閉店してしまう中、コチラは少し多い夜9時閉店というのがありがたい。

麺メニューは「尾道ラーメン」の1本勝負で、チャーシュー、もやし、辛みなどを追加することが出来る。また、ライスやチャーハン、唐揚げ、ギョーザと麺のセットも用意している。ほか、コロナ禍でお持ち帰り用やお弁当も盛況だそう。今回は呑んだシメなのでシンプルに「尾道ラーメン(700円)」のみをオーダーすることに。

到着までは2分弱。スープは魚介出汁と鶏ガラ、豚骨を炊いた醤油清湯で、スープでタレを割らない「ストレート」で作っている。こうする事で冷めにくくなるそうだ。さらに表面には香ばしい油の層があり、油断しているとヤケドするほどにアツアツの仕上がりである。濃い茶色ではあるがカエシの塩味は強すぎず、ほのかな甘みを感じる。

魚介よりは動物系の旨味を強めに感じるチューニングだ。さらに粒の大きな背脂のミンチが浮かんでおり、スープに深いコクを与えてくれる。それでいて嫌な油臭さはなく、食感が面白いので良いアクセントに。合わせる麺は、地元・井上製麺所製の低加水でしなやかな中細ストレート。スープとの相性は抜群である。

チャーシューは薄切りのバラロール肉が2枚。1日寝かせてから炊いて、タレに漬け込むので完成まで3日かかるそうだ。八角だろうか、香辛料も聞いており旨い。ほか、細メンマ、刻みネギとシンプルな構成ながら満足度の高い一杯であった。尾道にはまだまだ名店が犇めいている。ぜひ様々な店のラーメンを食べ比べてみたい。

<店舗データ>

【店名】 尾道ラーメン たに 尾道駅ビル店
【住所】 広島県尾道市東御所町1-7
【最寄】 JR山陽本線「尾道駅」駅ビル内

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