蘭州牛肉麺の聖地は、変幻自在の手打ち麺が魅力
西川口駅の西口から県道110号「環状線通り」を歩いて7分ほど。住宅街でひっそり営業する「ザムザムの泉」へ。ここ数年、首都圏では蘭州牛肉麺を提供する店が増えているが、その火付け役とも言われているのがこの店である。遠方から来る客もいる人気ぶりだが、人手不足のため、現在は金・土・日と祝日のみの営業である。
店を切り盛りするのは蘭州出身でイスラム教徒の馬暁軍さんご夫妻。豚肉などイスラムの禁忌である食材を使っていない「ハラル」の店が近所に無かったため、一念発起し自分で店を出すことを決意。蘭州で料理人をしている姉から牛肉麺のレシピを学び、2017年8月に西川口に創業したという。
その味が評判を呼び、第19回東京ラーメン・オブ・ザ・イヤー(TRY)2018-2019で「新人賞・蘭州麺特別賞」を受賞。蘭州牛肉麺は未体験という方には、まずこの店で啜ることをオススメしたい。メニューは現在「牛大(ニューダ)=蘭州牛肉麺」と、白ご飯の上に煮込んだ牛肉と味付け卵、パクチーを乗せた「ザムザム丼」のみ。
まず驚くのが麺の多彩さだ。大きく平打ち麺、三角麺、細麺と分かれるのだが、平打ち麺は幅の広い順に大寛、薄寛、寛韮葉、搾韮葉の4種。同様に細麺も4種あり、二細、三細、細的、毛細の順に細くなっていく。これに断面が三角の蕎麦棱を加えた計9種類から選ぶことが出来るのだ。まさに麺を楽しむための料理と言えよう。
更に手打ち麺と、製麺所で作るカスタム麺と別れていて、手打ちの方が割高で1杯1300円、カスタムは1杯900円となる。なお、カスタムの場合は選択肢が薄寛と韮葉、細的の3種のみとなるので注意を。1300円とは少々お高めだが、手打ちの手間とハラル対応の牛肉のコストを考えれば仕方がない。今回は手打ちの薄寛でオーダー。
スープは牛骨や牛肉を10種類以上の薬膳と煮込んだもので、アッサリした飲み口ながら牛の旨味も十分引き出した逸品。一方の麺は、オーダーに合わせてご主人が打ってくれるので、まさに打ち立て。幅広麺は厚みがあるが決して重過ぎることはなく、コシもあって非常に旨い。小麦も厳選しているようで、香りがまた良い。
上に乗るのは牛肉、大根、パクチー、葉ニンニク、ラー油、そして追加でトッピングした味付け卵(100円)。アッサリしたスープの中で、味の染みた牛肉はよいアクセントになっている。お好みで卓上のラー油と黒酢を加えて食べ進めていく。これが細麺なら、三角麺なら一体どんな食感になるのか・・・何度も通いたくなる店である。
ちなみに「ザムザムの泉」とは、イスラムの聖地・メッカのハラームモスクにある泉。イスラム以前からこの泉を中心にオアシスが栄え、イスラム誕生後も聖なる泉として崇められてきたのである。この店も、まさに日本の蘭州牛肉麺の聖地たる存在となった。人手不足、ビザの問題などで泉が枯れないことを願っている。
<店舗データ>
【店名】 蘭州料理 ザムザムの泉
【住所】 埼玉県川口市西川口3-32-9
【最寄】 JR京浜東北線「西川口駅」徒歩7分
★東京都渋谷区広尾5-8-13に移転。