流星、夜を切り裂いて ~FLY HIGH~ ver.2

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さよならの朝に約束の花をかざろう を語る

2018-02-25 22:09:33 | ■アニメレビューとか
PA作品って結構苦手意識あるんだよなぁとか、
脚本の方が監督で大丈夫なのだろうかとか、
そもそもどんな作品なのかよくわからないので不安だなとか、
見る前はマイナスイメージが強かったんですが、
見終わったところにはこれはPA史上最高の作品なのでは、
とか俗っぽいことを思わせられる程度に面白かったです。
以下ネタバレ感想。


最初始まって金髪と白い服の姿しか見えない集落というのは、
ユートピア的なイメージなんでしょうが、
一生を機織りをして過ごすというのを機織り機と共に美しく描く半面、
やや虚しくというか近寄りがたいイメージがあったかな。
その後に出てくる布はどれもカラフルな色遣いをしていて、
人と交わる生き方に多様性を意識させられてそういう面が気にかかったかな。

天井から垂れている透明感のある布と、
その後に国の国旗的な垂れ幕が対比的なイメージで、
大小はあれど村や国家が持つナショナリズムみたいなものを意識されているようにも見えたかな。
特に捕らえられた幼馴染を助けようとしてするけど、
幼馴染は身籠ってしまったがために、子供を捨てることができずに、
元の場所へ帰ることを拒否するシーンなんかではそういうのを強く意識させられたかな。

主人公マキアが息子になるエリアルを見つけるシーンのイメージも印象的でした。
のどを剣で刺された母親とその手に守られた赤ん坊の姿をマキアが見つけますが、
その剣を象徴的に描いているのが目を引いたかなと。
死後硬直によって固まった指を一本一本ほどき赤ん坊を自分の手に取るわけですが、
その力強い手から赤ん坊を取り上げるという行為が、
選定の剣的なイメージを持っているようで興味深いなと。
赤ん坊を助けようとしたその瞬間に彼女の心に剣が宿ったように見えたというか。
覚悟といってもいいのかもしれない。
罪や十字架的な意図、赤ん坊が兵士になるという暗示など、
様々な意図がありそうな雰囲気もありましたが、
自分的にはそういうイメージが強かったな、と。
剣など振り回さない華奢な少女ですが、その思いには剣があった。
そんな風に思わせられたかなという感。

赤ん坊のエリアルとマキアの関係や、
マキアが正体を隠すために髪を染めるなど、そういうのが新鮮だったかな。
長寿の種族と人が関わりあう悲劇、時間のすれ違いによる悲劇、
みたいなのは『凪のあすから』とかでもされていてその延長だったかなという感。
でもそんなのは『あの花』の幼馴染を2度見送るのと同じくらい、
絶対泣いてしまう物語の王道的な感じで、
その時点で最近はもう飽き飽きして忌避してしまうのですが、
今作は割とそうでもなかったですね。

エリアルが成長してマキアと背格好が同じようになるころには、
出生の話、自分がマキアの実の子ではないこと、
マキアの姿が全く変わらないことを当然のように理解しているわけですが、
そこからマキアを母親だと呼ばなくなる辺りで色々な可能性を考えてしまうんですよね。
母親に、育ての親に恋をしてとか、
実子でないことに強いコンプレックスを抱いてしまってとか、
母と子の関係というのを違うものにしていくのではないかという、
可能性を匂わされている感じで。
またマキアも元々の思い人との繋がりもあって、
その辺もどう振れるかわからない面があって。

そういうあやふやな関係の中でエリアルがマキアを母と呼んだところでもう号泣ですよ。
もう物語の流れ的にも決着がついて、
あとはエリアルの中でマキアがどういう立ち位置の人物なのか。
それが焦点になったところできちんと呼んでくれたことが心から嬉しかった。

もう一人の母親、レイリアと、そしてドラゴンと共に滅びゆく種族として、
朝の光へと旅立っていく姿が美しく、個人的にはそこで終わりで良かったな、
というのがある意味で心残りかもしれない。
天寿を全うする時になって、本来であればとうに亡くなっているだろう母と、
実際に再開してしまうっていうのはちょっと、という気がしましたが、
それはエリアルに寄りすぎた考え方で、
マキア的にはやはり会いに行かなければ嘘だろうという感じだったので、
エリアルとの関係を描き切ってくれたのは良かったと思います。

主人公のマキア、幼馴染のレイリア、2人の母親の話という感じでしたが、
レイリアの母親としての覚悟は色々と鬼気迫るものがあって、
そちらもグッときましたね。
2人目の子を期待された時に、宝石で着飾らないと抱けないの!
みたいな切れ方をしていたのが特に印象的だったかな。
無理やりな婚姻だったけど、子ができたことや覚悟でそこまで変わるのかとか、
普段の深夜アニメだったらもっとセックスの話を生々しく突きつけられる気がしたので、
抱かれることより自らの魅力の無さに怒る姿が新鮮に映ったかなぁ、と。

スタッフ的に副監督の篠原さんがガッツリやって、
岡田さんはとりあえず監督という立場なのかなというイメージでしたが、
コンテマンは監督も含め7人、演出5人、コアディレクター1人。
作画も井上さんを始め力のある方が結構いて驚きました。
演出で長井さん、作画監督補佐で田中さんと、
とらドラ、あの花、ここさけのの盟友が力添えしているのも良かったです。
長井さんはコンテからガッツリやってるかもと思いましたがそうでもなかったですね。
作品の持つ距離感的に付かず離れずと言った印象。

そういえばパンフレットの設定画見ていてキャラが吉田明彦さんっぽいイメージだな、
と思ったらご本人でビックリ。
ちゃんとインタビューも載っていてまたビックリ。

個人的にはかなり満足の高い作品でまた見たいですね。
『true tears』からここまできたというのも感慨深いものがありますし。
そういえば今作もバンダイビジュアルから出るんだな、と。
そういう意味では直系の作品なのかなと思えたり。
岡田さんが今後も監督業をするのかわかりませんが、
また色々と楽しみです。


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