流星、夜を切り裂いて ~FLY HIGH~ ver.2

米たにヨシトモファン 京アニに興味あり アニメ語りメイン

シン・エヴァンゲリオン劇場版:|| を少し語る

2021-03-12 21:32:34 | ■アニメレビューとか
以下ネタバレ感想









冒頭。
個人的に気になったのは敵がポジトロンライフルを使ってくる点。
使徒相手に絶大な威力を発揮した武装がマリ1人に破れるのが気になった。
ここを考えていて、エヴァ全機アンビリカルケーブルを使っていないのに気づく。
序では電力という人の力をシンジに与えることが重要な点だったので、
人の力を宿していない電気は敵ではない、という考え方のかも知れないと感じたというか。
トウジが破ではずれを引くのも鉄塔の地中線引込架台がバックで、
地下に潜る暗示だったのか、みたいに思ったり。
妹に続いて医療系だったのがちょっと驚きかな。

第3村に入って、今回は本気でエヴァを終わらすつもりなんだなとちょっと見ていてウキウキしました。
大体エヴァって謎の組織力、資金力で全ての困難を克服してきたけど、
ここでは克服する力そのものが失われ、不自由な世界と陥っているが、
私達が生活している世界に最も近い。
シナリオの都合通りに資源が溢れる世界ではないというリアリズムがエヴァが持っている組織の万能感を破壊していて、
地に足をついた描写だったのは、エヴァという飛躍した世界を手繰り寄せるにはこのぐらい寄らないと無理だという判断と、
旧来のファンが嫌がりそうな展開を持ってきている覚悟に感服させられたというか。

重機を並べて見せているのも示唆的で、役割を果たさない機械に用はないという点と、
かつてはこの機械類を使ってこの集落を作ったんだろうなという予感があったかな。
なんでもすぐ直るエヴァ世界に置いて実際に世界を作り変える機械を見せる意義は何か、という疑問。
ここも私達の世界に近づいていることを予感させられるカット群でした。

エヴァは現実に帰れというテーマでよく語られますが、
今作を見て私達視聴者が共有している現実のイメージは思っているよりそれぞれ乖離しているのではないかと感じたな。
はっきりと今の現実とは自分の日常生活なわけで、
その個々の日常以外の現実に対する想像力の貧困さを示唆されているような気もします。


今回はプラグスーツがかなり目立った形になっているなと感じました。
というのも乾かしているプラグスーツが首なし死体のようなイメージを喚起させられたというのがまずあって。
これは最後に磔にされたエヴァ浄化?ラッシュに合わせてパイロットも浄化されているという感じだったのかな。
黒綾波が最後に消えるところでプラグスーツが白くなっていきますが、
TVシリーズのレイの自爆シーンはビデオ版で零号機が白いレイへと変化する追加カットがあったので、
あの形を意識しているのかなとも感じたかな。
以前の綾波レイに近いものになった、アスカの言う死装束としてのプラグスーツなど、
色々示唆に富んだシーンになっていたように思います。
レイが死を選んだ場所、生きてきた場所で死のうとするのはTVシリーズを思い浮かべると、
ちょっと感慨深いものがあったかな。
ゲンドウではなくシンジでもなく、綾波レイとして生きた場所で消えることが人間っぽいというか。

あとトウジが見知らぬ天井と化している感じが印象的だったかな。
Qもシンジはわけわからない感じで搬送されますが、
今回もわけがわからない形でシンジの主観が強調されるので、
シンジがみる見知らぬ天井は場面転換として効果的に使われてる感があったなぁとか。
見知らぬ天井とは過去を見つめるという点と、風呂は心の洗濯よ、というセリフも同時に思い出す感じかな。
シンジが過去に囚われるのは見知らぬ天井という話数と同じく、
過去の戦闘に思いを馳せてしまうから、なのかな、みたいな。

後の戦闘に見知らぬ天井はないので、
最後まで挫けなかったのは過去でできた世界だったから、
というのはあるのかもしれない。
克服した世界の中では負けない、負けられない、みたいなね。
いろいろな場所でバトルするのはもう笑っちゃうような展開で、
そこから第3村を蹂躙するのがゲンドウであると思っていくことで、
ゲンドウがシンジから見て明確な悪として描かれるのも気になったかな。
ゲンドウを否定するための第3村、というのはかなり大きな意味合いかなぁと。

そもそもネルフ側にゲンドウと冬月先生しかいないので、
第3村の地に足がついた描写に比べると非常にご都合主義的な組織になっちゃってますよね。
そのエヴァもどきたちとか第13号機とか2人だけで作ったの?戦艦も?みたいな。
現実感がなく、虚構感が強い。
ネルフというかつて所属していた組織を打倒するという形に持っていくために第3村が必要だった、
というのに非常に納得できるのがこの点。
しかし撮影スタジオ感出た演出は『ぱにぽにだっしゅ!』っぽくて、
ぱにぽにXとかエヴァパロも補完するイメージだったのかなとか思ってしまったな。


アスカの裸を見て動じないところを見せるのは旧劇から離れたところにある、
という位置づけのギャグとしても惹きつけられるシーンでしたね。
今作はアスカもレイもマリもミサトも魅力的なヒロインしていて凄かったですね。

マリがアスカの髪を切るシーンはあまり好みな髪切りアニメではないとは思いつつ、
こういうのをやってくれるのが嬉しかったのと、
初号機の中にいたレイの髪が伸びてるのもグッと来る感じでしたね。
そこで何年間も生きていたのか、と思わされる感慨深さみたいな。
長い髪を切るのもいいけど、短い髪が伸びるのもいいな、と思わされました。

中盤、アスカとマリが死装束と称したプラグスーツを着て出撃しますが、
過去作品の『トップをねらえ!』で出撃前に化粧をするシーンがあるので、
ああいうシーンとダブるような印象がしたな。
歌が流れるバトルで少女2人で無数の敵を蹴散らすとかトップっぽいし。
アスカが使徒の力を使いシーンも髪がオレンジに輝いてどこのバスターマシン7号とか、
左目の眼帯の下が実はってどこのディスヌフだよみたいな『トップ2』感もあり、
『ナディア』『旧エヴァ』を経て『トップ』に回帰する流れだったのかなとも思ったりも。
マリがちょっとユングっぽいとかね。
今回はちゃんと会えたし、という点から『トップ』をも補完されたような気がしたな。


槍がどうこうとか専門用語連発ですが、ちゃんとある程度説明してくれるし、
リツコがノータイムでゲンドウに発砲したり、槍作っちゃったり、
ヤマト作戦という名称からなんか真田っぽい扱いになってきたな、という感じに。
私達で槍を作ればいいんだ!もあまりエヴァっぽい展開ではないなという点で最終話っぽい感。


旧劇の最後の海のシーンを下敷きにしたアスカとの別れのシーンは、
成長したアスカの肉体ががプラグスーツを破っていてエロかった。
ここで「最低だ、俺って」「気持ち悪い」からだいぶ離れたところにきた感があってまた感慨深かったですね。
個人的に幼少期のアスカの回想、碇一家と孤独なアスカの絵が最後のマリと並んで好きなシーンでした。
おさるさんのキーホルダーはトラウマを呼び起こされる感じで見ていてドキドキしましたが。


怒涛の勢いでエヴァという作品が終わっていくジェットコースター感が終盤強く、
もう終盤はずっと笑顔で見てしまっていましたね。
心の中であ~!あ~!あーーー!みたいな叫びがこだまするような感じというか。
記事では語り尽くせない複雑な感情の波に覆われて、憑き物が落ちたというか。
作品が完結するということはこれほどまでに幸福なことなのかとも。

エヴァという作品が完結した。
この幸福感をしばらくは味わっていたい。
そんな作品でした。

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