平和エッセイ

スピリチュアルな視点から平和について考える

復活(2006年5月号)

2006年06月01日 | バックナンバー
 四月四日に日本テレビ系列で放映された「たくさんの愛をありがとう」というドラマは、先間(さきま)敏子さんという方の同名の本(ごま書房)に基づいている。

 スクールカウンセラーをしていた先間さんは、五〇歳ころ、突然、足に激痛をおぼえた。病院での詳しい検査の結果、ユーイング肉腫という特殊な病気であり、余命一年と診断された。こういう告知を受ければ精神的なショックは大きい。先間さんも最初は落ち込んだようである。また、手術や放射線や抗ガン剤などの治療はたいへん苦しかったようである。にもかかわらず、先間さんは常に明るく前向きに、残されたいのちを生ききった。その勇気ある生き方が周囲の人々に深い感銘を与え、本の出版、そしてテレビドラマ化へとつながったのである。

 ドラマでは描かれていなかったが、先間さんの根底には強い信仰心があった。鹿児島県に生まれ育った先間さんが子どもの頃から心の支えにしたのは、「川辺の神様」と呼ばれる老人であった。この方は悩める人々の相談相手になり、多くの人を救っていたいう。先間さんはこの「神様」についてこう述べている。

 「順番がきて、対座すると、妙に気が落ち着き、安らかさを取り戻すのです。耳は不自由ですが、心眼、巌も通す神通力を持った仙人のような方でした。おじいさんは、最後にいつも言いました。《あいがとうごわっすと感謝しやはんせ。そいで物事は必ず解決しもっす》」

 先間さんは、苦境や病気の中にあっても常に感謝の心を持つことによって、それを乗り越えることができた。そしてやがて、世界平和の祈りを知った。

 「国連に加盟している国の名前を一つひとついい、各国の平和を祈るのです。合掌して、二百に及ぶ国々の平和を祈るうちに、なんだか涙が出てきて、止まりません。川辺の神様の合掌と祈念でずいぶんエネルギーをいただきましたが、自分の祈りもまた天に通じて、世界に通じるのだと、実感した瞬間でした」

 日常生活の中でも世界平和の祈りを祈るうちに、先間さんの心は次第に穏やかにやさしくなった。

 不治の病になっても、先間さんが不動心で、常に家族や教え子への思いやりを失わないでいたのは、霊としての自己の生命の永遠性を確信していたからに違いない。

 「人の幸福を祈ることは、自らもまた素晴らしい幸福感に包まれることでもあります。その朝の心からの長い祈りで、私のあらゆるものに対する執着は、拭い去られたような気がして、爽快でした。なぜか手帳に《復活》という文字を書き記しました」

 先間さんは、肉体を脱ぎ捨て、霊の世界へと復活したのである。

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