平和エッセイ

スピリチュアルな視点から平和について考える

国際フォーラム・新しい文明を築く(2)

2005年11月15日 | Weblog
その次に講演が続きました。

最初は、エリザベット・サトゥリス(進化論生物学者)でした。要旨――

・我々はどこから来て、どこへ行くのか、それを解明したくて生物学を学んだ。

・人類は常に世界に関する一定の物語(世界観)を前提にして生きている。かつての物語には神(々)や霊という存在がいたが、デカルト、ニュートンに端を発する近代科学は、霊的存在を追放して、すべてを偶然で説明するという新たな物語を創造した。

・マルサスは、人口増が世界の食糧不足を招くと予測し、「食うか食われるか」という物語を作った。ダーウィンの適者生存理論は、マルサスの人口論の影響を受けている。

・しかし、ポスト・ダーウィン(ダーウィン後)の進化論は、生命が競争的・敵対的であるばかりではなく、協力的・調和的であることも解明している。

・自然(生命)は、順調なときは保守的であるが、危機においては革新的である。それがDNAの進化を引き起こした。

・たとえば、地上の原初生命バクテリアが光合成によって酸素を大量に吐き出し、いわば環境汚染を引き起こしたとき、酸素を消費する新たな生命が誕生した。

・生命はDNAを地球的規模で交換するWorld Wide Webを形成した。

・サナギが蝶に変身するとき、サナギにとって蝶の免疫システムは異物として危険であるし、蝶にとってもサナギの免疫システムは危険である。しかし、両方のシステムがうまく共存することによって、サナギは蝶になることができる。

サトゥリスさんの講演は非常にわかりやすく、興味深いものでした。とくに、サナギと蝶の話は面白かった。現在はまさに、物質文明(サナギ)から霊文化(蝶)の移行期にあたり、その二つが混在しています。表面的に考えると、この両者は相反的で、一方は他方を否定することになります。しかし、両者を対立的にとらえるのではなく、両者を共存させつつ、巧みに物質文明を霊文化に移行させることこそ、人類に求められている叡智ということになるでしょう。個人のレベルでいえば、現実生活と霊的・宗教的生活を両立させつつ、個人人類同時成道を目指すということになります。

行事の後のパーティーでサトゥリスさんと少し話しましたが、

「私はこのような講演を大学でやりたいと思っているが、大学という世界は非常に硬直的で、いまだに古いダーウィン的パラダイムにとらわれていて、私を受け容れてくれない」

と言っていました。

サトゥリスさんの本はまだ邦訳されていないようですが、どこかの出版社が早く出してくれるといいですね。