仔羊の回帰線

詩と散文のプロムナード :Promenade

*ローマの護民官、コーラ :ベルゲングリューンより

2023年04月07日 09時10分39秒 | *現代ドイツ短篇選

   14世紀初めごろ、ローマにコーラ・ディ・リエンツォーという男がいた。

父親はチベル河の水車小屋から そう遠くないところに居酒屋を構えていたが、この男、今ではローマを統治し 市民は誰一人知らぬものはなかった。 が、アナーニの僻地までは、叔父のガブリーニが棲んでいたが、彼の統治者である知らせは届いてはいなかった。


 ガブリーニはやもめ暮らし。
が 不都合はなかった。自由気ままな一人生活が気に入り、子供もなく 田畑はひとりで間に合うほどだった。代わりに 小さなベッピーノがいて、この薔薇椋鳥を こよなく愛していた。 腹と胸部がバラ色で 椋鳥の羽毛は濃い紺色の光沢は見事なものであった。ベッピーノは柳の枝で創られた籠に入れられ、毎年、羽の抜け替わる時期には新たにガブリーニは鳥籠を編んでやったのだ。


    或る日のこと、蹄の音がすると、一人の騎兵が立っていた。騎兵は豪華な甲冑を身につけ、武器は携えていなく、代わりにオリーブの木の枝が巻かれた銀のステッキを持っていた。


「これは、ガブリーニ殿ですかな?..}
「そうぢゃが・・」                         
と、その時、間髪を入れずベッピーノがしゃべった。           〈おっはようございます。もう一杯、いかが?...》             すると 使いの騎兵は白い歯を見せ、任務中であることに気づくと、馬から降り 仰々しく一通の書状を手渡した。
「わしは字が苦手でのう」ガブリーニが云うと、騎兵は声高く読みあげた。:そこには格調高くかかれ、最後にはこうあった。: 

ローマのカピトル宮殿に来られたし。・・
   


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