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韓国、景気悪化の中で日本と対立負担、最後は米国仲裁で徴用工問題解決

2019-07-15 14:13:31 | 日記

勝又壽良の経済時評

日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。

2019-07-15 05:00:00

韓国、景気悪化の中で日本と対立負担、最後は米国仲裁で徴用工問題解決

テーマ:ブログ

 

4~6月期もマイナス成長?

 

S&P企業格付け引下げ示唆

 

韓国の外交専門家は日本寄り

 

日本は最後の米国仲裁に乗る

韓国経済は厳しい局面にあります。今年1~3月期の実質GDP成長率は、前期比マイナス0.4%でした。

内需不振が続いている上に、頼みの輸出不振が加わりました。

4~6月期のGDP統計は、7月下旬の発表と見られます。1~3月期の経済状況からさらに悪化して、2期連続のマイナス成長が予想されるほどです。

こういう状況下で、日本が韓国向け輸出の半導体製造の3素材について、輸出手続きの審査を厳重に行う旨を発表しました。3素材とは、次のようなものです。 

エッチングガス(高純度フッ化水素)、

レジスト(感光剤)、

 フッ素ポリイミド

  

日本が世界市場の70~90%を生産している独占的な強味を持つ半導体材料です。

個別審査で最大限90日という期間を設けたので、韓国は「輸出抑制」措置として反発しています。

日本は、あくまでも通関手続きであると説明しています。

このように、安全保障に関わる戦略物資の韓国向け輸出は、これまで「ホワイト国」とされ一括処理で済まされてきました。

韓国は、この「ホワイト国」27ヶ国の一カ国でしたが、この特典を外されました。

正式には7月末の法改正で正式決定となります。

 韓国が、この「ホワイト国」から外される理由は、戦略物資管理が厳格に行われていないという点が指摘されています。

そこで、日本が輸出審査を厳重に行うとしています。韓国は、この輸出通関手続きの煩雑化が「逆非関税障壁」の一種になるとしています。

 日韓関係が安定していれば、非「ホワイト国」でも通関手続きが順調に進み、輸出抑制という懸念がなくなるはずです。

日本は、これによって韓国の「反日行動」を抑制する効果が期待できるでしょう。

  7月以降、日本の「ホワイト国」外しによって、韓国主力産業の半導体(全輸出の約20%)に陰りが出る事態になると、問題は世界中のサプライチェーンに大きな影響が出てきます。

日本が、「半導体3素材の輸出にブレーキを掛けた結果」として、加害者の席に座らされるリスクを抱えます。そこで、日本としては難しい選択を迫られます。この問題の解決私案は、最後で取り上げます。

 4~6月期もマイナス成長?

 厳しい韓国経済の実態を見ていきます。

4~6月期のGDP統計が発表される前に、韓政府はそれとなく「景気悪化」を示唆する発表をしました。

 7月3日、韓国政府は2019年の実質GDP成長率見通しを半年前より0.2ポイント引き下げ、2.4~2.5%としました。

常識的に言えば、4~6月期の経済データが良くない結果、政府が早手回しに経済成長率の下方修正に踏み切ったと読むべきでしょう。

 次のような予測データが発表されました。参考までに政府発表データを上げておきます。基準は前年比です。

 最新の2019年韓国経済 主要予測データ

 民間消費 2.4%増加   前回(2.7%増)

 設備投資 4.0%減少   前回(1.0%増)

 建設投資 2.8%減少   前回(2.0%減)

 輸出   5.0%減少   前回(3.1%増)

 輸入   4.1%減少   前回(4.2%増)

 経常黒字 605億ドル   前回(640億ドル)

 GDP  2.4~2.5%  前回(0.2ポイント引き下げ)

  

これらのデータを見て気付くことは、設備投資(4%減)と輸出(5%減)の落込みが大きいことです。

それだけに景気への影響力は大きく、雇用にしわ寄せが出てきます。

それは、民間消費に波及します。政府予想では、ここにゲタを履かせて2.4%増にしていますが、達成は不可能でしょう。

 そのように見る理由は、最低賃金の大幅引上げが雇用状況を悪化させており、アルバイトすら高い競争率で、必ず採用される保証はありません。

これが、若者の海外旅行熱に水を掛けているほどです。

 その上、頼みの個人消費にさらなる警戒信号が出てきました。

日韓対立によって、半導体生産が滞る事態になれば、韓国経済は総崩れになります。

すでに、自動車は低収益にあえいでいます。ここで、最後の砦の半導体に黄信号が出れば、韓国経済は沈没しかねません。

 

こういう危機感がひしひしと迫る中で、個人消費が前年比で2.4%増(前回予想2.7%増)に止まれるか疑問です。

結局、今年の実質GDP成長率は、政府予想の2.4~2.5%でなく、さらに下がるという見方が出てきました。

 

  


日本の対韓国輸出管理 韓国紙「韓国経済には泣きっ面に蜂」 米紙「国家戦略の劇的な転換」

2019-07-15 13:54:23 | 日記

日本の対韓国輸出管理 韓国紙「韓国経済には泣きっ面に蜂」 米紙「国家戦略の劇的な転換」

7/15(月) 10:26配信    

産経新聞

日本政府は1日、韓国向け半導体材料の輸出管理を厳格化すると発表した。

日本は韓国を安全保障上の友好国として輸出手続きの簡略化を認めていたが対象から除外した。

韓国政府は日本の措置を「自由貿易の原則から外れる」と非難し国際世論の形成を試みている。

韓国メディアは日本政府の批判を展開する一方、米紙ウォールストリート・ジャーナルは「トランプ米大統領流の手法」と指摘している。



  ■韓国経済には泣きっ面に蜂
 

日本による半導体材料の輸出管理厳格化について韓国各紙は連日、大きく報じており、主要紙は「韓国経済の急所を狙った」と衝撃をあらわにしている。


  朝鮮日報は2日付の社説で、韓国の高高度防衛ミサイル(THAAD)導入時における「中国の報復と同じく非常識な報復措置」とし、「両国の互恵経済関係を覆し、信頼を壊す不当で稚拙な対応だ。国際社会全体が非難すべきだ」と批判した。

さらに「深刻な景気停滞で下り坂にある韓国経済には泣きっ面に蜂だ」と韓国経済に及ぼす悪影響を懸念した。
 

同紙は4日付の社説でも「日本の報復は50年蓄積してきた韓日経済協力の枠を揺るがすもので、信頼関係に根本的なヒビが入った」と強調。

「日本も結局は無道な経済報復を平気でやる中国と変わりない水準(レベル)だ」とし、「外交的な方法ではなく、経済報復という暴力的であさましい手段を持ち出していいのか。両国関係の未来を考えると実に嘆かわしい」と訴えた。
 

半面で同紙は韓国政府の「無責任さ」を強く批判。

「今回の事態は強制徴用者への賠償をめぐる外交での葛藤による、韓国政府が発した爆弾だ」とも指摘。

「日本の尋常ではない兆候は前から何度もあった」とし、昨年11月に日本政府が3日間、フッ化水素の輸出を中断し半導体業界などで大騒ぎになったと言及した。

「当時、産業通商資源省の対策会議で企業が、日本が輸出規制に出た場合、深刻な打撃を受ける素材や設備を報告したが、今回、日本政府が報復に出た3素材は全てこの報告で取り上げられていた」と指摘した。
 

さらに、

「今回の輸出規制品目は、韓国政府が作ったリストの1~3番目にあったというが、規制に政府が示した対策は何だったか」

「日本が世界市場で席巻している品目の輸入先をどのように多角化するのか。国産化が簡単に実現するなら、なぜ今までやらなかったのか」と韓国政府の無策ぶりを突いた。
 

左派系紙、ハンギョレは日本の管理厳格化を「稚拙な報復措置」とし、撤回を求めつつ、

「一部メディアと(保守系最大野党の)自由韓国党が安倍政権の経済報復を韓国政府のせいにしている」と非難した。

同紙は6日付の社説で「韓国政府が経済報復を自ら招いたとの主張は、事実関係に合わないどころか、政治的な理由で経済報復をする安倍政権を助けることになる」と断定。

朝鮮日報が日本政府を批判しつつも

「事態は強制徴用者賠償をめぐる外交での葛藤で起きた韓国政府発の爆弾だ」と主張したことを「強引な主張」と批判した。
 

日本批判の一方、韓国ではこのように今回の輸出管理厳格化が国内の理念対立に利用されている面もある。

ただ、韓国企業に日本の措置への対応策がないという現実的な問題を指摘し「韓国政府は掛け違えたボタンをすぐ掛け直さねばならない。

直ちに日本との対話を再開し外交的和解を模索すべきだ」(中央日報8日付社説)と対日関係改善への韓国政府の努力を促す論調も少なくない。(ソウル 名村隆寛)
 

□米国 ウォールストリート・ジャーナル
 ■国家戦略の劇的な転換示す
 

日本政府が半導体製造に必要な材料の韓国向け輸出で管理の厳格化を決めたことについて、欧米メディアは「新たな貿易戦争が勃発した」(米通信社)と伝え、米中貿易摩擦に続き日韓という経済大国間で起きた通商紛争に注目している。
 

米紙ウォールストリート・ジャーナルのコラムニスト、ウォルター・ラッセル・ミード氏は2日付の紙面で、「日本がトランプ(米大統領)流としか言いようのない手法で、自国の優位な立場を最大限に活用しようとしている」と指摘し、日本の姿勢に懐疑的な目を向けている。
 

トランプ米政権は中国のハイテク産業を締め付けるため、米企業による中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)への部品供給を禁じる措置を決定した。

ミード氏は、日本も同様の手段に出たとの見方から、「貿易に政治を絡ませる日本の決断は、国家戦略の劇的な転換を示している」との分析を示している。

 欧米の通商専門家には日本を自由貿易の「最後の旗手」とする認識がある。

トランプ米政権が貿易問題で追加関税を相次いで発動する一方、それを「保護主義的だ」と批判する中国政府に同調する声は国際社会に少ない。
 

ミード氏は、日本が「ルールに基づく多国間システムの信頼できる支持者だった」と述べつつ、輸出管理の厳格化と並び、日本が国際捕鯨委員会(IWC)から正式脱退した2つの出来事が、世界政治に「トランプ化」現象が定着することを示唆していると断じる。
 

こうした見方には異論もあるだろう。

いわゆる徴用工訴訟や慰安婦問題などでの韓国側の対応に、日本は外交レベルで抗議を重ねてきた。

日本政府は対韓輸出の基準厳格化について、安全保障の観点から実施する輸出管理の運用上の対応であり、世界貿易機関(WTO)体制と矛盾しないとの立場だ。
 

一方、ミード氏は、トランプ政権の立場について、「中国や北朝鮮に対処する上で東京とソウルの良好な関係を必要としている」と説明。問題の早期収拾を望む意向をにじませている。(ワシントン 塩原永久)

 
 

最終更新:7/15(月) 12:23