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北朝鮮への「横流し疑惑」で、韓国半導体産業の終わりの始まり

2019-07-14 16:46:19 | 日記

北朝鮮への「横流し疑惑」で、韓国半導体産業の終わりの始まり

7/12(金) 17:45配信

                       

 

 

 

サムスン電子本社(Oskar Alexanderson/Wikimedia Commons)

 韓国の半導体産業が衰退のとば口に立った。「横流し疑惑」で開いたパンドラの箱から「地政学リスク」が飛び出したからだ。韓国観察者の鈴置高史氏が対話形式で読み解く。

「寸止め」の輸出管理強化

――世界の半導体産業は大変なことになりましたね。

鈴置: それが「大変なこと」にはなっていないのです。韓国が得意とするのがメモリー、つまり情報を記憶する半導体です。ところが、その2大アイテムであるDRAMもNAND型フラッシュメモリーも、国際的な価格は落ちついています。

「北朝鮮に核関連物質を横流しする怪しい国」と日本政府が韓国を認定しました(「日本に『怪しい国』認定された韓国 文在寅は『受けて立つ』というが、保守派は猛反発」参照)。

 7月1日に韓国向けのIT素材の輸出管理を強化すると発表したのですが、それ以降も半導体市況に特段の動きは見られないのです。

――「半導体価格が急騰。世界は混乱に陥って日本への非難が高まる」と思っていました。

鈴置: 韓国紙の日本語版や日本の左派系紙を読んで、そう思い込んでいる人が多い。恐ろしい誤解です。

 今、半導体は不況の真っ最中。一年前と比べ、メモリーの価格は半値になっていました。市場にあふれているので、日本が輸出管理を強化しようが、ユーザーは焦って手当てしようとはしません。だから市況が安定しているのです。

 サムスン電子のバランス・シートを見ると、2019年3月末時点の在庫資産は31兆4560億ウォン。1年前と比べ8・8%増です。相当部分が売れ残ったDRAMと見られています。

 半導体価格が上がらないもう1つの理由は、日本の規制強化が「寸止め」になっていることです。

「日本の輸出規制、韓国では『単なる報復ではなく、韓国潰し』と戦々恐々」でも書きましたが、韓国企業がメモリー生産に使っている素材は管理強化の対象ではないのです。

 確かに輸出管理を強化した3品目の1つ、レジスト(感光材)は半導体の製造に使います。しかし日本政府が管理を強化したレジストは極めて高品位のもので、メモリー製造用ではありません。

 だから、仮に日本からレジストの輸入が減っても韓国メーカーは直ちには困らない。輸出強化の対象となったエッチングガス(フッ化水素)も同様で、これに関してもメディアが大騒ぎするほど、韓国の半導体メーカーは困らないそうです。

「急所のすぐ横」を狙った

――なぜですか? 

鈴置: 日本製ほど純度が高くない中国、台湾、韓国製のエッチングガスも使えないことはない、のだそうです。もちろん日本製を使った時ほどの収率は出ないと言いますが。

 朝鮮日報が「日本は半導体の『急所のすぐ横』を狙ったようだ」(7月11日、韓国語版)で指摘しています。

 サムスン電子の株価は7月1日から8日まで、4日を除いて下げました。しかし、7月9日以降、12日まで戻しています。「すぐには大事に至らない」との認識が広がったからでしょう。

 朝鮮日報の先の記事によると、有機ELの製造に使うフッ化ポリイミドも、日本が輸出管理を強化するのは、サムスン電子がスマホを作る際には使わない品目だそうです。だから見出しに「急所のすぐ横」とあるのです。「寸止め」です。

――では、韓国に実害はない……。

鈴置: 短期的には。ただ、中長期的には韓国には、恐ろしい未来が待ち構えていると思います。先ほど「寸止め」と言いました。日本の突き出した剣の切っ先は韓国の喉元で止まっています。韓国が日本に強気に出たりすれば、切っ先は喉に突き刺さるでしょう。

 例えば、報復と称して日本にさらなる危害を加えれば、日本政府が輸出管理を強化する対象に、DRAM用レジストを加えるかもしれません。

 

 

 

韓国の2つの「半導体都市」

能力増強する米・日企業

――そうなったらDRAMが世界的に不足して……。

鈴置: 先ほど言いましたように、DRAMは今、余っているのです。それにDRAMを作るのは韓国企業だけではありません。確かにサムスン電子が46%、SKハイニックスが26%と高い世界シェアを誇っています。

 ただ、3位の米マイクロン・テクノロジー(Micron Technology)も21%のシェアを持っています。主力の広島工場(広島県東広島市)の生産能力の増強に動いています。

 6月11日に新工場棟の完成式典を開いて「サムスンを追い掛ける」と宣言しました。日経の「マイクロン、広島工場を1割拡張 次世代DRAM量産」(6月11日)が詳しく報じています。

 もう1種類のメモリー、NAND型に関しても東芝メモリ・ホールディングスが2020年の稼働を目指し、岩手県北上市に新工場を建設中です。

 日経産業新聞の「東芝メモリ、上場へ勝負手 売上高2兆円狙う」(6月25日)は、サムスン電子に真っ向勝負を挑む姿を描いています。

 東芝メモリのNAND型の世界シェアは約20%。サムスン電子の約33%に続く2位です。なお、SKハイニックスは5位の11%前後です。

 DRAMにしろNAND型にしろ、米・日の会社の供給能力が増す最中ですから、品不足で世界が困るなんてことはすぐには起きません。

事実を無視する左派系紙

――「日本経済に打撃」と書く新聞があります。

鈴置: 毎日新聞は「売り上げが減るフッ化水素など日本の素材メーカーが打撃を受ける」と報じました。「クローズアップ 対韓輸出規制 徴用工、通商で揺さぶり 資産売却、期限迫り」(7月2日)です。

 でも、韓国の半導体メーカーへの輸出が減ったとしても、その分、増産する日本や米国の半導体メーカーが買ってくれるのだから同じことです。

 東京新聞の「【核心】対韓輸出規制 保護主義 日本にも痛み」(7月2日)や、朝日新聞の「韓国半導体危機、日本に余波 輸出規制、韓国『在庫多くて数カ月分』」(7月4日)も「返り血」を心配しました。

 日本の半導体製造装置メーカーは輸出先を失う。韓国の半導体を輸入していた日本の会社も部品不足で困る、との理屈です。

 しかし半導体製造装置は、韓国企業の衰退の代わりに能力を増強する日・米の企業に売れることになります。韓国製半導体のユーザーは日・米メーカーから調達することになるでしょう。

 産業の実態や変化を調べずに、「大変なことになる」「安倍が悪い」と書くのは無責任極まりないと思います。

韓国から逃げだすユーザー

――日本政府は輸出管理の強化を武器に、韓国2社のシェアを落としていくのですね。

鈴置: 日本政府が誘導する必要はないかもしれません。なぜなら、韓国2社の半導体を買っていた世界の会社が、調達先を多様化して日・米の半導体メーカーへの注文を増やすであろうからです。

 いつ供給不安に陥るか分からない会社を頼りにはできません。日韓の摩擦がこれだけ有名になったのですから、もし韓国企業に依存し続け半導体の手当てに失敗したら、株主から訴えられてしまいます。

 世界のビジネスマンは米政府の動きに注目しています。もし、日本の輸出管理の強化に米国が口を挟むなら、今回の事件は日本の暴走と見なされたでしょう。

 しかし、米国は10日たっても動かない。そこで「日本は米国にお墨付きをもらっているのだな」と世界の関係者は見なし始めました。

 7月10日、康京和(カン・ギョンファ)外交部長官はポンペオ(Mike Pompeo)国務長官に電話し、日本を非難しました。

 韓国外交部の発表によると「日本の措置は米国企業にも世界の貿易秩序にも悪影響を与える」と訴え、これに対しポンペオ長官は「理解する」を表明したそうです。要は「一応、話は聞いた」ということでしょう。

 韓国政府は高官も相次ぎワシントンに送っています。が、米国は日本の措置に見るべき反応を示していません。国務省も「日韓は共に米国の友人であり、同盟国だ」と原則論を述べるばかりです。

「米国は韓国を助けないな」と見た半導体のユーザーは、韓国の半導体産業の将来に疑問を持って、調達先を韓国から日・米に切り替えるでしょう。

 すでにその動きが表面化しています。日経は「対韓輸出規制、広がる影響 VAIOは代替調達検討」(7月9日)で、ソニーから分社したパソコンメーカーのVAIO(バイオ、長野県安曇野市)が半導体を韓国以外から調達するよう検討し始めたと報じました。

撤収の前に焦土化

――「米国が口を挟まない」だけで、「脱・韓国」が始まるのですか? 

鈴置: 安全保障上からも韓国が米国に見捨てられることを示唆するからです。半導体は安全保障に直結する戦略製品です。普通の商品ではありません。

 DRAMの約72%、NAND型の約44%を韓国の2社で作っています。これを米国が許してきたのも、韓国が忠実な同盟国だったからです。

 ところが今、米韓関係の雲行きが相当に怪しくなっている。文在寅(ムン・ジェイン)政権は国際社会がこぞって経済制裁を科している北朝鮮に堂々と援助を始めました(「文在寅は金正恩の使い走り、北朝鮮のミサイル発射で韓国が食糧支援という猿芝居」参照)。

 妙な自信を持った韓国は日本にはもちろんのこと、米国に対しても「何するモノぞ」とばかりに高飛車に出ているのです(『米韓同盟消滅』第3章「中二病にかかった韓国人」参照)。

 一方、トランプ(Donald Trump)政権は北朝鮮を非核化するためには在韓米軍の撤収、あるいは米韓同盟の廃棄までも取引材料とする勢いです(「ついに『在韓米軍』撤収の号砲が鳴る 米国が北朝鮮を先行攻撃できる体制は整った」参照)

 同盟は維持しても在韓米軍が撤収する、あるいは削減するだけで、朝鮮半島は不安定化します。そんな国の企業に、米国が戦略物資の半分を作らせるでしょうか。

 麗澤大学の西岡力・客員教授は米国の安全保障の専門家から「我々がこの半島から撤収する時は、焦土化して引き上げる」と聞かされたそうです。

 焦土化とは物理的に燃やしてしまう、ということではなく経済的な資産を破壊する、との意味です。同盟を廃棄した後、つまり中立化した韓国は中国の衛星国となる可能性が極めて高い。

 中国の衛星国に世界のメモリーの半分を作らせるわけにはいかないと米国は考えるでしょう。米国の考えを見てとった半導体ユーザーは「今から購入先を変えておこう」と動くと思います。

傲慢な日本と強引な米国

――日本の輸出管理強化の背景には米国がいる……。

鈴置: 安全保障の専門家にはそう見る人が多い。1980年代に圧倒的な強さを発揮した日本のメモリーが一気に衰退し、韓国メーカーに市場を奪われたのを思い出して下さい。

 米政府はありとあらゆる手を使って日本に圧力をかけました。日本は輸出価格を引き上げさせられたうえ、自国市場での外国製半導体のシェアを20%に引き上げる、といった約束を飲まされました。

 米政府はこれにより日本メーカーのシェアを落としました。その隙を狙って韓国企業が急伸したのです。

――米国は強引だったのですね。

鈴置: 当時の、バブルの頃の日本や米国の空気を知らない人はそう思うでしょうね。日本は多くの工業製品で米国製品のシェアを奪い、飛ぶ鳥落とす勢いでした。

 日本人の鼻息も荒く、今の中国人や韓国人を見る感じでした。日米経済摩擦が激しくなる中で書かれたのが『「NO」と言える日本』(1989年1月)です。

 著者はソニーの創業者の盛田昭夫氏と、当時は衆議院議員だった石原慎太郎氏。この本にはこんな一節もあったのです。

・仮に日本が、半導体をソ連に売ってアメリカに売らないと言えば、それだけで軍事力のバランスががらりと様相を変えてしまう。そんなことを考えるのならアメリカは日本を占領する、とあるアメリカ人たちは言っています(14―15ページ)。

 もちろん、日本はソ連に半導体を売りませんでした。米国は日本を再占領もしなかった。でも「米国離れする日本」によるメモリーの独占は阻止したのです。

「米国の陰謀」から目をそらす

――韓国人は「米国の陰謀」に気づいているのでしょうか? 

鈴置: 「日本の陰謀」に関しては語り始めました。サムスン電子はメモリーからシステムLSI(大規模集積回路)など、非メモリー分野に経営の重心を移そうとしています。

 日本が今回、輸出管理を強化するレジストは「メモリー製造用ではなく、システムLSIを作るのに必要な水準の品目である」と韓国各紙は書いています(「日本の輸出規制、韓国では『単なる報復ではなく、韓国潰し』と戦々恐々」参照)。

 要は、日本の措置はサムスン電子がライバルに育つのを阻止する狙い、と韓国の専門家は見始めたわけです。ただ、「米国の陰謀」とまで報じたメディアは、ほとんどありません。

 そう書いてしまえば、今回の日韓半導体戦争で米国が韓国の味方をしてくれない、と書くのと同じになってしまう。さらには安全保障面でも「米国に見捨てられる」ことを意味します。「もっとも見たくない現実」から、韓国人は目をそらしたいのでしょう。

ロケット砲の射程に入った主力工場

――次の政権が保守派に戻ったら? 

鈴置: 仮にそうなっても、半導体の世界での「韓国離れ」は起きるでしょう。

 北朝鮮が最近、300ミリの8連装ロケット砲を配備した模様です。5月4日、北朝鮮がロシア製の「イスカンデル」と見られる弾道ミサイルを試射しました(「文在寅金正恩の使い走り、北朝鮮のミサイル発射で韓国が食糧支援という猿芝居」参照)。

 その時、同時に撃ったのが300ミリのロケット砲と思われます。射程は200キロ超で、GPSによる精密誘導が可能とされています。在韓米陸軍の主力基地である京畿道・平沢(ピョンテク)と隣接する烏山(オサン)空軍基地を攻撃するのが主な目的です。

 ただ、この300ミリロケット砲の射程圏にサムスン電子の主力工場である平沢工場と、SKハイニックスの主力の清州(チョンジュ)工場(忠清北道)が十分に入ってしまうのです。

 米国は北朝鮮を非核化するために、いざという時は中国との国境沿いの核基地に対する先制核攻撃も辞さない構えです(「米国が北朝鮮を先制攻撃するなら核を使うか? その時、韓国は? 読者の疑問に答える」参照)。

 その際、北朝鮮は軍事境界線沿いのロケット砲・長距離砲部隊で反撃します。ロケットや砲弾は迎撃ミサイルでは撃ち落とせません。

 韓国の、世界の主軸メモリー工場はかなり危ない場所に立地しているのです。政権が保守か左派かには関係なく、韓国の2社は半導体ユーザーにとって「危険な会社」なのです。

――米国が北朝鮮を先制攻撃するとは限りません。

鈴置: :しかし、この「危険な2工場」を放置しておけば、つまり西側の脆弱性をそのままにしておけば、北朝鮮に対する威嚇が効かなくなります。北朝鮮は「先制攻撃したいならやってみろ。世界中でメモリーが足りなくなるぞ」と言えるのです。

半導体の衰退は韓国の衰退

 それに保守といっても、韓国の保守は中国の顔色を見る人ばかりです(『米韓同盟消滅』第2章「『外交自爆』は朴槿恵政権から始まった」参照)。

 保守派の韓国だって中国の衛星国に戻っていきます。そうなればメモリー生産の半分を中国がコントロールすることになります。

 世界の半導体ユーザーも米政府も、それは望まない。韓国以外の場所で、韓国資本以外が半導体を製造する体制を構築したいと思うのは当然です。

 今回の日韓摩擦を期に、韓国の半導体産業が衰退の道をたどる可能性が出てきました。半導体の輸出は韓国の全輸出の20%を占めます。サムスン電子の時価総額は韓国市場全体の20%以上。半導体産業の衰退は韓国の衰退に直結します。

――日本政府の今回の措置は韓国政府を攻めるのではなく、韓国の基幹産業を攻撃するのが目的なのですね? 

鈴置: 少なくとも結果的にはそうなりそうです。文在寅政権は日本にどんなに痛い目にあわされようと、譲歩するつもりはないでしょう。結局、韓国の半導体産業が身代わりに痛めつけられるわけです。

 ただ、日本がそこまで図ったかどうか。日本政府にそんな戦略性があるとは考えにくい。でも、米政府なら、そこまで謀るはずです。

――つまり、今回の事件の黒幕は米政府? 

鈴置: そう見えます。証拠は持っていませんが。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95~96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年7月12日 掲載

 

 

 

 


韓国良識派、もう一つの声 西岡力(国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授)

2019-07-14 14:43:39 | 日記

2019.07.11 (木)          

【韓国情勢】

韓国良識派、もう一つの声 西岡力(国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授)

 文在寅政権は日本がとった対韓輸出優遇措置の廃止を「経済報復」だと無理やり規定し、国民の反日感情をあおって支持を得ようとしている。

それに対して、韓国の良識的保守派は戦時労働者の最高裁不当判決や慰安婦合意破棄により、文在寅政権が国家間の約束を破ったことから今の関係悪化が生まれていると指摘。

まず、日本を批判する前に文政権が反日親北政策を止めることが先決だと主張している。

 野党保守勢力も、文政権と与党が反日感情を刺激して事態を悪化させていると批判し、このようなときこそ感情的にならず外交的解決を模索すべきだと落ち着いた意見を出している。

 日本のマスコミがほとんど紹介しない韓国保守派の良識的意見を知るために、趙甲済氏が文在寅大統領の日本批判発言を全面的に論破した「趙甲済テレビ」のコラム(2019年7月8日、YouTubeにアップ)を全訳し、以下に紹介する。

過去の記事はこちら

 

韓国国民と野党が文在寅政権の対日外交に協力できない理由 日韓関係を悪
 
化させた原因は文在寅政権の親北反日政策

  文在寅大統領は7月8日、青瓦台の首席秘書官会議で日本の貿易制限措置に対して次のような立場を明らかにしました。

 「最近日本の貿易制限措置により韓国企業の生産への支障が憂慮され、全世界の供給網が脅かされる事態になりました。

互恵的な民間企業間の取り引きを政治的目的によって制限しようとする動きに対して、韓国だけでなく全世界が憂慮しています。

前例のない非常事態において何より重要なのは、政府と経済界が緊密に意志を疎通して協力することです。

事態の進展によっては官民による非常対応体制の構築も検討しなければなりません。

大統領府と関連部署がみな前面に出て、状況変化にともなう当該企業の隘路を直接聞き、解決方案をともに議論して、必要な支援を惜しむべきではありません。

 一方で政府は外交的解決のためにも着実に努力していきます。

対応と報復の悪循環は両国にとって決して望ましくはありません。

しかし韓国の企業に被害が実際に発生する場合、わが政府でも必要な対応をせざるを得ないでしょう。私はそうなることを願いません。

日本側の措置撤回と両国間の誠意ある協議を促します。貿易は共同繁栄の道具でなければならないという国際社会の信頼と、日本がいつも主張してきた自由貿易の原則に戻るよう願います。

日本は経済力で私たちよりはるかに先んじる経済強大国です。

与・野党の政界と国民が力を集めなければ政府と企業が困難を克服していくことができません」

 このように文在寅大統領は政界と国民が力を集めてほしいと言いました。

政界と国民が力を集めるためには、大統領にこの間の対日政策が正当であったという確信がなければなりません。

ところが、そのような確信を与えることができていません。

 文在寅大統領の対日政策は、まず朴槿恵政権の対日外交、国益守護外交を積弊だと規定することから出発しました。

2015年12月の朴槿恵・安倍の慰安婦最終合意を否定することから出発しました。

そのために、文在寅政権の対日政策を国民が支援することはできません。  しかし、国家と国家の約束は政権が代わっても守らなければならない。

これが国際法の大前提です。政権が代わる度にその前の政権の国際間の約束を無視してしまうなら、どこの政府が大韓民国を相手にして約束をしますか。

その上、朴槿恵・安倍の慰安婦最終合意は内容がよかったのです。これ以上望めない内容でした。

ですから、それで終わらせなければならないのです。ところが、再び問題を提起する程度でなく、それを積弊だとして覆し、合意をまとめた外交文書を一方的に公開したではありませんか。

 また、徴用工問題も同じです。

1965年の請求権協定ですでに終わった徴用工への賠償問題に、そして歴代政権も皆、終わったとしてきた問題に、大法院(最高裁判所)がそれと異なる判決を下しました。

もちろん、請求権協定に従うなら徴用工に対する賠償判決は不可能だという、2人の判事による少数意見がありましたが、多数意見は賠償判決を下しました。

これも検討してみれば文在寅政権と大法院が同じ脈絡で行動したのではありませんか。文在寅政権の性向がそこに投影されています。

 そのため朴槿恵政権時代は裁判を延期して、その間に政府が努力できる時間を確保したのに、それまでみな問題視して、今回のような報復が来るであろうことが確実な判決が下され、その判決の執行過程で日本企業の財産が差し押さえられたので、日本が経済報復あるいは貿易制限措置をとったのです。みな予想されていたことです。

 それなのに、今になって国民に助けてほしい、政界に助けてほしい、外交には与党野党はない、と言っています。

外交には与党野党があるということを見せてくれたのが文在寅勢力ではありませんか。

 高高度ミサイル防衛システム(THAAD、サード)の配備に中国が反対したとき、当然大韓民国の側に立つべきなのに、中国側に立って朴槿恵政権のサード配備に反対したのが文在寅勢力ではないですか。

それが今になって助けてほしいというのですから、全く説得力がありません。

 文在寅大統領は今日、こんなことを言うのではなくて、安倍総理の発言に反駁しなければなりませんでした。

安倍総理は、韓国は国家間の約束を守らない、だから貿易管理も信じられない、だから貿易制限措置をとる、と話しました。

全体的に韓国を信じられないと公に語ったのです。

それに対して文在寅大統領の言葉はあまりにも柔らかすぎます。そんな言い方ではだめです。  

安倍総理の発言は韓国の国家的権威に対する挑戦でした。

どうして大統領がその部分について答えず、このように浅薄な話をしたのか、誰が見ても自信がない、論拠が不足している発言だということが分かります。

文在寅政権が大韓民国と日本との間の約束に違反したのか、しなかったのかが問題なのです。

違反したのなら、文在寅政権の対日政策は国家利益に害を与える方向に行っているということです。

そうだとすれば、どうして野党や国民が文在寅政権を助けることができますか。

  文在寅政権の対日政策は対北政策と連係しています。文在寅政権は今、金正恩のための対北政策を行っています。

金正恩一人のための政策です、北朝鮮住民のためでもありません。

大韓民国国民だけでなく北朝鮮住民まで、すなわち韓民族全体に敵対する政策をしながら、同時に日本に敵対的に向き合っているのではないですか。  

世界が認めている旭日旗を戦犯旗として烙印を押して観艦式に来ることさえできなくし、ことごとく日本に敵対的に接した結果、このような事態を招いたのです。

対北政策と対日政策が一つのセットとして展開しているのではないですか。  

むしろ、文在寅政権の内部には韓日関係を破綻させ、韓米同盟を攻撃しようという勢力がいるのではないですか。

主体思想派が転向していないのですから、そのような考えを持っているとみるべきです。

それなのに今になって国民や野党に向かって助けてほしいと言えるのですか。

  これに対して野党・自由韓国党の黃教安(ファン・ギョウアン)党代表と羅卿瑗(ナ・ギョンウォン)院内代表が悩ましい発言を今日しました。同党最高委員会議で黃教安党代表は次のように苦しい立場を明らかにしました。

 「青瓦台の政策室長は日本の経済報復について十分に予想できたといいながら、まっとうな対案を出すことができずにいます。金融委員長は日本が資金を引き上げても、他から借りればよいと話しました。全く現実的でない輸入先の多元化や素材部品の国産化は当面の危機の解決策にはなりえません。

与党でも急いで特別委員会を作ると言うが抗日義兵(文禄慶長の役や李朝末期に日本軍と戦った非正規軍)を起こそうなどという感情的反応は望ましくありません。

果たしてこの時点で国民の反日感情を刺激することが国益にプラスになるのだろうかと思います。

それでも今になったとはいえ、青瓦台の政策室長と経済副総理が企業のトップと会って意見を収斂し、大統領もあさって大企業30社のトップと懇談会を持つというのは、遅くなりましたが期待を持っています。

文大統領は企業の憂慮と苦しさをよく聴取して、それを解決できる実効的な方案を出さなければなりません。

何よりもこの問題は結局、政治と外交から始まったのですから、政府次元での外交的解決策を急いで準備しなければなりません。

わが自由韓国党は政府が正しい解決策を出すなら、国民と国家のために超党派的に協力をするとお約束します」  かなり教科書的な模範解答です。  次に羅卿瑗院内代表はこう言いました。

 「日本の経済報

復措置に伴って産業界全般に恐怖の雰囲気が造成されています。安倍総理が今、韓国の対北制裁違反の可能性を持ち出しました。根拠のないこの発言について、安倍総理は責任をとるべきです。

根拠があるならば、正確に明らかにすることを要請します。

最近の日本の通商報復措置について、我が国国民の憤怒と失望は日ごとに拡大しています。不買運動、拒否権(veto)運動などが国民の中で言及されています。

私はこのようなときだからこそ、我が国政府と政界は沈着な論議が求められていると思います。

ところが昨日、与党が見せた姿は無責任だったのではないか、心配だと申し上げます。

事実上、与党が反日感情を刺激し、それを政治的に活用しようとしているのではないか、という憂慮がある中で、国会がするべきこと、政界がするべきことは、経済制裁を止めて危機を克服することであり、それに重点を置くべきだということを再度申し上げます。

歴史の葛藤を経済報復に持って行く日本政府のやり方や、そのような日本に反日感情を刺激することで対抗する与党はみな、円

滑な韓日関係の発展を妨げるものです。

政治は国民の生活に対する無限責任があります。政界までもが感情にまきこまれては国益が失われるだけです。今は解決策を準備することが最優先課題です」

 2人とも今は感情的反日ではだめだ、反日感情を刺激するときではなく政府が外交的解決策を出すべきだというのです。慎重な発言です。野党指導者2人の発言が文在寅政権の対応よりもより信頼が持てます。