北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

弾道ミサイル脅威への備え 公共シェルター、耐爆建築物指定の必要性

2009-06-20 20:55:09 | 防衛・安全保障

◆一応は検討すべき命題

 防空壕、というとやたら大時代的な、前近代的な響きではあるが、公共シェルターや耐爆建築物という概念を、特に都市部、人口密集地域を中心に検討するべき時期なのかもしれない。

Img_4335  北朝鮮が再び、長距離ミサイル実験の準備を進めている旨、複数の報道機関により報じられている。五月末に、平壌近傍のミサイル工場から東倉里で建設中のミサイル施設に運搬されたという報道があり、舞水端里ミサイル試験場、南北国境近くの旗対嶺基地でもミサイルの試験準備が進められているとのこと。

Img_9660_1  自衛隊はミサイル実験により、ミサイルが日本列島を越える際、万一切り離したロケットが日本列島の人口密集地域に落下する事案を予防する目的で、首都圏、東北地方、京阪神地区へ、弾道ミサイルへの迎撃能力を有するペトリオットミサイルPAC-3を展開準備しているとも伝えられている。

Img_4353  弾道ミサイルを迎撃する自衛隊の手段は二つ。日本海などに展開したイージス艦より運用する比較的射程の長いSM-3、そして航空自衛隊が運用するペトリオットミサイルPAC-3だ。ペトリオットミサイルPAC-3は、もともと航空基地などを防護するための迎撃手段であり、迎撃高度にもよるが、半径十数キロ以内での迎撃が限界となっている。

Img_2164  大都市の人口密集地域だけを防護するとしても、中心部に展開する必要があり、新宿御苑や大阪城公園、名古屋城などに恒常的にミサイル部隊を展開する以外は、分屯基地からの迎撃は困難で、導入が検討されている射程が100km超のTHAAD配備が実現しなければ、即応性では問題がある。

Img_5949  現時点では、航空自衛隊のレーダーサイトなどが弾道ミサイルの接近さえ探知することが出来れば、全国瞬時警報システム、いわゆるJ-ALERTにより警報を発令することだけは出来る。J-ALERTは、主に緊急地震速報、津波警報、緊急火山情報、気象警報、震度速報の通知に用いられるが、必要に応じて指定河川洪水情報、弾道ミサイル警報、空襲警報、大規模テロ警報などの発令手段としても用いられることとなっている。

Img_6636  しかし、緊急地震速報であれば、落下物の無い場所への避難や減災措置を、緊急火山情報であれば火砕流危険地域からの避難と火山弾からの避難など、具体的な措置がとれるものの、現時点で、空襲警報や弾道ミサイル警報に対して、とることのできる具体的手段は必ずしも明確に示されている訳ではない。

Img_1007   こうした中で、ミサイル攻撃が行われたさいに、核シェルターのような頑丈で、長期間避難できるようなものではなくとも、ミサイルが直撃した際でも被害が局限化することの可能な施設の列挙、加えて、地下街や地下駐車場、地下鉄など爆風被害からだけでも回避することのできる施設などを指定し、万一の被害に備える必要があるのではないかと考える次第。

Img_3043  少なくとも、ミサイル攻撃を受けた場合、諸手をあげて対処方法無しという状況に陥ることが無くなるわけであるし、また核攻撃を受けた場合でも、避難場所が明確に示されていたならば、避難誘導などにより混乱を最小限に留めることができる。加えて、世論が外圧に左右される可能性も局限化することが出来る訳だ。

Img_5371  また、核攻撃なども想定し、こちらは避難のための施設だけではなく、気象情報などを有機的に包括化し、放射性降下物からの防護も視野に入れた被害局限化の訓練なども必要性は考えるべきだ。この種の訓練は、自衛隊ではマニュアル化されているようだが、自治体の国民保護法制に基づくマニュアルでは、必ずしも考慮されていないものが多いとされる。

Img_0965  もちろん、ミサイル攻撃や核攻撃を想定した耐爆建築物の指定や、公共シェルターとして転用できる建物の列挙には、一部市民団体から反発を招く可能性もあるのだが、弾道ミサイルに対して、その防衛能力の整備は過渡期にあり、急襲的に国土が攻撃された場合、加えて同時多数のミサイルにより飽和攻撃が行われた場合、現時点ではその迎撃は確実ではない。

Img_5513  もちろん、弾道ミサイル防衛に対応するイージス艦の増勢や、ペトリオットミサイルPAC-3の増強、将来的にはTHAADミサイルの整備や、より早い時期に探知するための航空機に搭載した赤外線センサーAIRBOSSの整備、早期警戒衛星の導入などの選択肢を経て、より確度の高い弾道ミサイル防衛能力を整備するという選択肢はある。

Img_9768  加えて、航空機や巡航ミサイルにより、弾道ミサイル攻撃が行われた際には、その策源地を攻撃する能力を整備し、抑止力として対応する選択肢もあるのだが、同時に、弾道ミサイルにより攻撃を受けた際には、避難するための避難所となる建物の選定なども、併せて行われるべきではないかと考える次第。

HARUNA

[本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる]

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海賊対処法本日成立、外国船舶も護衛対象、来週公布

2009-06-19 22:44:46 | 防衛・安全保障

◆船体射撃容認・武器使用権限拡大

 海賊対処法は、衆議院で可決され、本日参議院で否決された後、先ほど衆議院で再可決され成立した。公布は来週となり、甲府から30日後に施行される。

Img_6697  本日可決された海賊対処法の要点は、第一に日本に関係のない第三国の船舶も要請に応じて保護の対象とすることができる点、第二に海賊船に対して派遣部隊より出された停船命令に応じない場合には船体射撃が容認されており、これによって武器使用権限が拡大されている、この二点だ。

Img_7445  こうして、現在、海上警備行動命令では、第三国の商船などを警護する法的根拠はあいまいであり、遭難対処というかたちで実施されていた駆け付け警護の法的根拠が明確となり、また、万一海賊が武器による反撃を企てた際にも、護衛艦の強力な火力により瞬時にして無力化することが可能となる。

Img_5760  海賊対処任務として、ソマリア沖海賊事案への対処のため、護衛艦が派遣されているが、任務開始までに成立するとされた海賊対処法が、任務開始から遅れること数ヶ月、ようやく成立した。こうして海賊対処法の成立に伴い、浜田防衛大臣は3月に派遣された護衛艦部隊に続く交代として新部隊の準備を海上自衛隊に指示した。

Img_9794  現在、第4護衛隊群の第8護衛隊所属の護衛艦“さみだれ”、“さざなみ”が、3月14日から呉基地を出撃、28次に渡る護衛任務を続けており、5月28日には、P-3C二機も派遣され、6月11日から洋上哨戒任務に参加しており。自衛隊法に基づく海上警備行動命令に基づいて、任務にあたっている。

Img_25301  他方、ソマリア沖海賊事案への対処は、ソマリアの国家機能が破綻した状況が続いており、収束の見通しはまったくない。もっとも必要な対処は、国際平和維持活動としてソマリアの国家再建を達成し、海賊を取り締まる治安機関を再興することであるが、この命題に対しても、考慮する必要はあるのでは、と考える次第。

HARUNA

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航空自衛隊次期戦闘機(F-X) “F22輸出仕様”研究開発を米議会が容認

2009-06-18 22:39:17 | 防衛・安全保障

◆F-4後継機となり得るのか?

 F-X選定は、いつ決まるのか、本日もこのテーマを扱いたい。F-4戦闘機の飛行時間を減らすなどして延命措置を図るものの、その運用には限界があり、航空幕僚長も、先日、懸念を示したばかりだ。

Img_9865  こうしたなか、日経新聞Web版に、F-22に関する新しい動きが報じられていた。引用→F22「輸出仕様」の研究開発を容認 米議会、予算43億円を合意【ワシントン=弟子丸幸子】日本政府が次期主力戦闘機(FX)の有力候補に据える米最新鋭戦闘機F22を巡り、米上下両院協議会がF22の生産中止を防ぐ目的で、4500万ドル(約43億円)の予算を認めることで合意したことが17日明らかになった。F22の「輸出仕様」の研究開発費として使用することも容認した。

Img_9338  同予算は2009会計年度(08年10月~09年9月)の補正予算案に盛り込まれ、下院は16日に同補正予算案を可決。上院は近く採決する。F22を巡っては、ゲーツ米国防長官が4月に新規調達を停止することを決定し、生産が中止となる可能性が強まっていた。日本がF22を調達するには、米国内法による禁輸規定(オビー修正条項)が障害。さらに日本のFX選定までの間、F22の生産が継続している必要がある。米議会の「輸出仕様」の開発予算を認める動きが、禁輸解除のための法改正につながるかどうかが今後の焦点となる。(16:00)http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090618AT2M1801U18062009.html←引用ここまで。

Img_4374  F-22の導入について、新しい可能性が示されたことにより、航空自衛隊の次期戦闘機選定は、さらに時間を要する可能性が生じている訳であるが、本ブログでに何度か触れているように、第一にF-4戦闘機の耐用年数が限界を越えようとしている点、第二に現在生産されているF-2支援戦闘機の生産が終了し、日本国内での戦闘機生産能力に大きな影響が生じるという点から、時間は切迫している。時間が切迫しているという背景で、F-22導入について、F-4の後継機とは切り離して考えるべきではないのか、とも考えたい。F-22の有するポテンシャルは相応に大きいわけであるが、それでは、北部航空方面隊、中部航空方面隊、西部航空方面隊、南西航空混成団と防空を担当する管区において、F-4の後継機として導入する二個飛行隊では、すべての管区に行き渡るわけではなく、防空能力に格差が生じてしまう。

Img_7424  さらに、運用する基地が分散すればするほど、機密保護への真空地帯も生じやすくなり、可能であれば一か所の基地で一括して運用し、機密保護を行うことが望ましい。他方で、要撃対処にF-22を充てるならば、F-22の性能を必要とする国が、F-22の配備された基地に対して電子偵察などを実施する可能性もあり、単純にF-15などの航空機の任務をそのままF-22に充てるというのも、現実的ではないように思える。従って、横田基地などで航空総隊司令部飛行隊などでF-22は運用し、それとは別に、しかし、F-22取得に障壁とならない範囲内で次期戦闘機を選定する必要もあるのではないか。なんとなれ、F-22の導入は、日本でも小牧南工場で整備支援を行えるかは未知数であり、稼働率をこれまでの航空自衛隊が選定した戦闘機と同程度の率で維持できるかと問われれば難しい。

Img_9848  また、日本としては、航空産業の維持という観点からも、F-22とF-Xは、多少切り離して考えるべきかもしれない。ここでは、F-2支援戦闘機の生産延長という選択肢もあり得るし、場合によっては暫定的な機体をF-Xとして選定する、という施策もあり得よう。別の視点からは、本国で生産が終了した機体のライセンス権を取得し、日本向けの供給するとともにCH-46(V-107)が米国で終了後、ライセンス生産権を有する川崎重工が製造し海外に供給したように、今後も潜在的な需要がある機体をライセンス生産し、もちろん、これには引き輸出三原則の拡大運用の見直しも視野に含める必要があるのだが、国内に防衛省機として供給するとともに海外に供給する、という選択肢も生まれるのではないか、と考える。

Img_9419  実際問題として、日本にF-22が供給された場合、機密保護と併せ運用が可能な基地は、横田基地、嘉手納基地、このほかには、潜在的に米軍施設と航空機整備施設が隣接する厚木航空基地、などが考えられる。一方、米本土でも一般公開の際には厳重な警備の下で柵の向こうに展示され、機密保護の観点からパリ航空ショーにも展示されなかった機体が、航空祭などで身近に並ぶ様子は想像出来ない。F-4後継機には、相応しい機体は別にあり、F-22取得は、それとは切り離して調達する必要もあるのではないか、と考える次第。

HARUNA

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防衛産業と武器輸出三原則① 防衛装備品の輸出に関する一考察

2009-06-17 23:35:39 | 防衛・安全保障

◆日本の対外政策を左右する命題

 このまま調達数が削減された場合、防衛産業は維持できるのか、という観点から、武器輸出三原則運用の見直しについて、議論が交わされているが、どのような緩和があり得るのか、日本製装備の調達費用は高価なのか、などなど、数回に分けて考えてゆきたい。

2005116_071  三菱重工は、F-2支援戦闘機を年間12機生産できるラインを整備したが、年間5機しか発注が無く、今後は生産が終了する見込みである、ちょうどNHKの報道でF-2支援戦闘機の小牧南工場における生産ラインの様子が映像で出されており、神奈川県の戦車履帯を生産する企業でも、生産数が激減しており、技術継承が難しい、とのコメントを寄せていた。

Img_8843  防衛産業を構成する企業にとり、防衛産業への関与は、次第にリスクを伴うものとなっている。例えば、当初60機の調達を前提として陸上自衛隊はAH-64D戦闘ヘリコプターを採用。富士重工がライセンス生産を担当し、ラインを整備したものの、調査不足から機体の価格が高いとして調達は7機で終了、200億円以上を投じて整備したラインのみが残った。

Img_0750  防衛産業は、冷戦終結後どの国でも維持が厳しくなっており、今年春には、戦車誕生の国、イギリスで戦車数削減により最後の戦車工場が閉鎖、イギリスは今後スウェーデンの工場より戦車を導入することとなる。日本も戦車定数は防衛大綱の改訂とともに冷戦時代1200両の整備を定数としていたのが、今日では600両定数に、年末の防衛大綱改訂案ではさらに下方修正される可能性も高い。

Img_7356  日本は、装備品の奥を国産、もしくはライセンス生産として海外で開発され屋装備品の製造ライセンスを購入し、ブラックボックスとよばれる機密部品は輸入、それ以外は日本国内の下請け企業が製造し国内企業において生産を行うという基本指針のもとで防衛装備品の調達を行ってきた。

Img_8725  これは、第一に、国内で部品を製造するのであるから航空機の場合は、いちいち故障や定期整備を、海外の工場や、海外からの部品調達に頼らず国内整備を行うことで、稼働率を高めることが出来る。200機航空機が防空に必要な場合、稼働率が50%しかなければ400機の戦闘機が必要となるが、仮に100%であれば200機で事が済むのだ(戦闘機の場合、工場での整備中の機体と部隊配備の機体からみた稼働率は概ね95%程度とされる)。

Img_8408  見方を変えると400機保有している国の方が、200機保有している国よりも、対外的には強力な軍事力を有する、と見てとられる訳だ。つまり、国内に整備基盤を有することは少ない機体で日本を守ることが出来ることを意味する。もうひとつ、国内で製造できる基盤を有するということは、武器供給国の装備体系に選択肢を絞られなくなる、つまり国際関係の展開において中立性を保つことが出来る訳でもある。

Img_09241  日本の防衛産業を維持するにはどうすればいいのか。輸出に頼るというのは、あまりに単純な議論であるが、成功するかは微妙である。例えば冷戦後、ロシアは連邦軍の急激な縮小に対し、国外への輸出で補おうとしたが、マーケティングやアフターサービスなどの面で後れをとり、航空機や戦車で言えば、単純化させ前線での整備を重視したという運用思想が基本的に異なるロシア製装備は、安価、という以外には受け入れられないものであった。

Img_6070  また、日本製装備は、限られた国土での少数優勢を求めるなど独自の運用思想に基づく装備品も多く、これが果たして受け入れられるのか、という点も多く、加えて、世界中の軍需産業が生き残りをかけて市場を競っている中、冷戦終結後20年を経て市場に参加する日本製装備がどの程度受け入れられるのか、兵器見本市に自衛隊の部隊が参加し、戦車砲を発砲するなどのデモンストレーションでさえ、予算的にどこが負担するのかなど、早速問題が多い。また、生産基盤にしても、急激に、例えば短期集中生産で自衛隊の需要の10年分以上などを一度に要求された場合対処できるのか、など、問題は多い。

Img_1023  また、地上発射型の対艦ミサイルや、長射程の地対空ミサイル、潜水艦など、下手に供与してしまうと、国際関係を根本から変化させてしまうような装備品も多いことは事実だ。どの国にどういった装備品を輸出するのが可能か、どういった定義のもとでこれを決定するのかなど、簡単に結論のでなさそうな問題が多い。

Img_6464  日本では、攻撃用の相違を有さない、という観点から防衛力整備が行われたため、あたかも防御用装備に対して、攻撃用装備というものが存在するような錯覚を受けるが、これは専守防衛の政策を前提として生まれ得る概念であり、防御用の装備といえども、攻撃的な運用に用いる国が使用した場合はこの限りではない。

Img_7906  武器輸出三原則に関する現状の運用を見直し、輸出を行うとした場合、防衛装備品の輸出に際して、技術上の機密をどのように守るか、ブラックボックス技術などの開発も重ねて必要となる。また、それとは別に、日本側の技術などを必要とする国に対して、技術移転をどう扱うか、不正な技術移転をどのように防ぐかも重要な命題となってくる。

Img_9725_1  他方、花形装備は、海外でも多少は需要があるのかもしれないが、そのほかはどうするのか。防衛省の調達で補えない数量を輸出にて日本の防衛産業を維持できる数量の範囲内での輸出が出来るという見通しは全くない装備は、どのように扱うのか、外国製装備の運用は、日本の運用と合致しないため国内開発したものも多いため、外国製の装備を輸入するというかたちでの代替は難しい。

Img_6723  武器輸出三原則の現状の運用に対する見直しについて、簡単に考えるのではなく、防衛装備品の極力ファミリー化し、異なる装備間の部品の共通化などを積極的に図り、汎用部品の割合を多くすることにより、全体の生産数低下を補うような施策もあってしかるべきだと思うが、どうなのだろうか。

Img_7816  例えば、次期固定翼哨戒機P-X(現XP-1)と次期輸送機C-Xという、全く異なる任務と形状の機体を同時開発することで、外見には表れないような部品を極力共通化させることで、開発コストと調達コストの低減に挑んだ計画が進行中で、陸上自衛隊の装輪式装甲車についても、共通化の計画が進められている。続くように、戦車と装甲戦闘車、自走榴弾砲なども極力部品を共通化させる設計を採用し、汎用品の割合を増やすべきだろう。

Img_2906 特に重要なのは、防衛装備品を生産する防衛産業の中でも、主契約企業として完成した装備品の銘板に刻まれる大企業だけでなく、その装備品を支える中小企業がどのように生き残るかである。この点、多国間生産への参加などの点について、踏み込んで考える必要はあるし、同時に海外と競合する場合、後年度負担のような日本独自の防衛装備調達も受け入れられないのではないか、という議論からも見てゆく必要がある。

Img_9049  国際関係を考える上で、必要があるのならば、軍事力は維持する必然性がある。こうした中で、平和憲法とともに、武器輸出を行わないという一つの指針の下、日本国民には合意があるものだと考え、その代償として、結果、量産効果が生じず、調達する装備の価格が高く見えることも、つまり、余分な税金の負担も看過されているのだと考えてきたのだが、今日的には必ずしもそうではないようで、加えて防衛産業に対する誤解もあるようだ。今後は、数回に分け、改めて考えてゆきたい。

HARUNA

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防衛省 戦闘機の生産技術基盤の在り方に関する懇談会

2009-06-16 23:32:27 | 防衛・安全保障

◆6月17日 第一回懇談会(生産技術基盤の概況、今後の進め方等)

 欧州有数の航空関連行事であるパリ航空ショーがいよいよ始まり、いつもお世話になっている方も展開された模様。しかし、機密保護の観点から、パリ航空ショーへのF-22参加は見送りとなったとのことだ。

Img_6930  防衛省航空自衛隊は、次期戦闘機として、輸出が非常に難しいとされるF-22の導入を繰り返し希望しており、他方で、機密保護の観点からアメリカ空軍などでは日本を含むすべての同盟国に対して、輸出は極めて難しい、また、豪州に対しては輸出は不可、との回答を示している。戦闘機の生産技術基盤のあり方に関する懇談会は、こうした背景のともで開催される。

Img_7055  引用:趣旨 (1)我が国における防衛生産技術基盤は、厳しい財政事情、装備品の高性能化・高価格化による国内調達数両の減少といった状況に直面しており、特に、戦闘機については、F-2戦闘機の生産が終了する平成23年度以降は我が国で戦闘機を生産しない期間が生ずる見込みである。

Img_9481  (2)この様な状況が、戦闘機の生産技術基盤の維持にどのような影響を与え、如何なる問題点が生起するのかを整理することを目的に、有識者を含め、官民で意見交換するため、戦闘機の生産技術基盤のあり方に関する懇談会を開催する。引用ここまで。http://www.mod.go.jp/j/news/2009/06/16a.pdf

Img_9844  懇談会委員は、防衛省内局より、総合取得改革担当防衛参事官、技術監、経理装備局装備政策課長、航空機課長、技術計画官が出席。航空幕僚監部より、装備部長、技術部長、装備部装備課長、技術部技術課長が出席。有識者として、日本航空宇宙工業会専務理事今清水浩介氏、拓殖大学大学院教授森本敏氏、岡本アソシエイツ顧問安江正宏氏、このほか、座長が必要と認めるものが出席。懇談会の庶務は経理装備局航空機課が行う。6月17日の1500時より第一回懇談会が行われ、生産技術基盤の概況、今後の進め方等について話し合うこととなっており、概ね今後は月一回程度実施。議事要旨及び資料は原則公表するとのこと。

Img_3328  さて、戦闘機の生産基盤維持は、F-86以来続いたライセンス生産の体制を存続するか否かに関わる問題で、今後の日本の航空行政全般を左右する問題となる。例えばF-15Jの場合、ライセンス生産を担当する三菱重工の名前が思い浮かぶが、その下請けには1200社以上が関係している。もちろん、この中には汎用品の部品と共用性を有する部品もあるかもしれないが、基本的には、超音速で成層圏を飛行する、民生品では要求され得ない能力の発揮のために必要とされている技術である。このためには、どういう施策があり得るのか。

Img_7264  F-15近代化改修、これには一機当たり42億円程度を要するとのことだが、これにより、三菱重工小牧南工場のラインを維持することはできないか、これは一瞬考えることではあるが、定期整備のラインと生産ラインは基本的に別のものであるから、これを以て維持することは難しい。しかし、話は逸れるが、戦闘機生産の空白期間という数年間に、一気に航空自衛隊のF-15Jを近代化改修してしまうということはできるだろう。

Img_0242  技術開発を以て生産技術基盤維持に用いるのはどうか。技術研究本部を中心に、三菱重工などが参加し先進技術実証機(ATD-X)の開発が進められており、この初飛行は2011年を予定している。全長14.1㍍、IHI XF5-1エンジン二基により10㌧の推力を有し離陸重量8㌧の機体は、高いステルス性を有する形状と、将来アビオニクスシステム研究試作などの成果が活かされた機体となる。大きさは、JAS-39グリペンと同程度、離陸重量はグリペンよりも軽いATD-Xの開発により、一応一定以上の生産技術基盤を維持することはできるかもしれないが、基本、この機体は戦闘機ではない事と、年間5~7機を生産し続けるわけにもいかず、次期戦闘機のライセンス生産まで、生産技術基盤を維持できるかは疑問である。

Img_1159  F-2の増産はどうか。F-2支援戦闘機の開発が、当初供与されるはずであった技術が提供されないなど様々な理由により遅延した際、F-4を支援戦闘機に改修し、その分の要撃機の不足をF-15の生産により補ったということがある。F-2の生産数を継続することにより、生産基盤を維持できないか、という提案。これは妥当性もあるのだが、日米共同生産であり、三菱っ重工、川崎重工、富士重工、IHI、ロッキードマーティンが主要モジュールのブロック生産を担当している。主翼でさえ、右翼を三菱重工、左翼をロッキードマーティンが生産していることもあり、日本だけの意思で生産が継続されるかは、疑問符が付けられる。しかし、F-2は、日本主導による日米共同開発で誕生した機体であり、技術的に近代化改修への自由度は高い、いわば運用として使いやすい機体である。

Img_0177  なんとなれ、防衛産業の維持は、戦闘機のみならず、多くの装備に対して当てはまる問題である。装備の稼働率を上下させ、結果、少ない装備にて国土を防衛することが出来るのか、という問題や技術的独立性が政治的中立性に繋がる点、さらに技術力を抑止力とすることで、軍事安全保障に対し、軍事的抑止力以外の要素を加えることが出来るかなど、大きな問題であり、今後の推移を見守りたいと思う次第。

HARUNA

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舞鶴田辺城 京都府北辺にて丹後を治めた城郭の遺構

2009-06-15 17:46:35 | 写真

◆京都最北の城址公園

 山陰本線から舞鶴線で、京都府の日本海側、日本海防衛の要衝舞鶴基地へ向かう途上、西舞鶴駅を発車し終点の東舞鶴へ列車が動き出したところで、注意深く車窓の先を見渡すと、幽かに城郭のようなものがみえる。

Img_6977  この城郭こそ、舞鶴城として親しまれる田辺城の姿である。西舞鶴駅にて特急を降り、そこから歩くこと数分、田辺城の城門が見えてくる。田辺城は、細川藤孝が織田信長からこの地を与えられ、1579年に造営された城郭で、完成したのは1581年、本能寺の変の前年だ。もともとは宮津城を居城としていた細川藤孝が、交通の要衝である田辺に居城を移したことで誕生した。

Img_7039  田辺城は、輪郭式平城として天守閣も有した城郭構造となっていたが、1600年、東軍についた細川氏に対し石田三成隷下の15000名が攻撃を加え、当時の城主細川忠興以下2800名が徳川家康の上杉征伐へ出陣していたことから、城に残った僅か500名が細川藤孝とともに籠城することとなった。この田辺城籠城は、50日間に及び、細川藤孝の身を案じた後陽成天皇の仲介もあり、開城に至った。

Img_7036 その後、江戸時代に入り、細川忠興が小倉に移ったのち、京極氏のもとで舞鶴藩が創立されたが、一国一城令により破壊、舞鶴藩が宮津藩、田辺藩と別れた際、再び田辺城が藩主の居城として再興された。この混乱とともに天守閣などは失われており、京極氏から牧野氏と藩主の変遷を辿りつつ、1874年に廃藩置県とともに廃城となった。

Img_6981  当時の遺構は石垣、堀、庭園などとなっており、加えて1940年に櫓が、1997年に城門が再建され、現在は自由に立ち入ることが出来る公園として市民に開放されている。別名舞鶴城と呼ばれる田辺城だが、舞鶴とは舞鶴市と同じマイヅルではなく、ブガク、と読むのだそうだ。

Img_6982 旧海軍の航空母艦などで瑞鶴をズイカク、翔鶴をショウカクと読むのだから合点は行くのだが、まいづる、と呼び慣れた優美な地名の地に、ぶがく、という威厳を伴ったような響きの別名をを聴くと、ある種新鮮に思えてくる。他方、舞鶴、つまりブカクと呼ぶ空母も、あり得たのかな、と思ったりもしてしまう。

Img_7046  さて、舞鶴という地名は、天橋立を始めとした美しい地形が、舞う鶴の翼を思い起こさせる優美な地名なのだが、宮津、田辺という地名はあったものの、舞鶴という地名が定着したのは、明治時代に入ってのことである。これは、田辺という地名が和歌山にもあり、紀伊田辺との混同を避けるために、明治初期、廃藩置県の直前に舞鶴藩という名前が再興したことが、今日の舞鶴市につながっているともいわれる。

Img_6991  田辺城は、ごく一部が再建されているにとどまり、二層櫓、城門以外は、庭園が往時の様子と時の流れを現代に伝えているのみである。従って、舞鶴線の車窓からは、このような城郭らしい姿は見ることが出来ず、庭園が手前に、そしてその向こう側に二層櫓や城門がみえる、という配置になっている。

Img_6985  城門の銃眼。ここから鉄砲などを突きだしてみると、撮影につきだしたのはカメラとレンズだが、射線に道がしっかりと収まる。この写真を撮ったあたりで雨が降り始めてきた。城門の建築物は、その中が田辺城資料館となっており、こちらも無料で開放されているので、見学することとした。

Img_7010  “いにしへも今もかはらぬ世の中に こころの種を残す言の葉”、舞鶴と田辺城を造営した細川藤孝の言葉である。細川藤孝、またの名を細川幽齋は、古典文学や政治儀礼、能楽に秀でた伝承者で、朝廷との橋渡しとして、足利義昭、織田信長や徳川家康に仕えた安土桃山時代の武将だ。

Img_6996  田辺城資料館は、交通の要衝としての舞鶴の歴史や、田辺城の誕生や、変遷、田辺城籠城などの城の歴史などが展示されている。ちなみに、今日、舞鶴市役所は、東舞鶴に置かれているが、もともと東舞鶴は、旧海軍が舞鶴鎮守府を置くにあたって誕生した軍事都市で、東舞鶴市と西舞鶴市が合併することにより舞鶴市が誕生したとのこと。

Img_7002  歴史などを解説するパネルだけではなく、舞鶴の昔を再現した模型、そして大名行列などの情景の模型に加え、火縄銃や刀、甲冑などといった武具も展示されている。この田辺城資料館は、0900~1700時に開かれており、閉館日は毎週月曜日、月曜日が祝日の場合は、その翌日が閉館日となる。

Img_7044  大きな城郭でもなく、建築物も重文や国宝のようなものはないが、京都府北辺の城郭ということで、楽しむことが出来た。こうして田辺城を一通り見学し、西舞鶴駅に向かう。西舞鶴と東舞鶴はひと駅違いだが約7kmの距離があり、舞鶴線の運行本数が特急を含めても毎時0~2本と、非常に少なく、さらに終電が運行される時間も早いことから、移動には時刻表と時計の確認が必要だ。西舞鶴は、JR西日本と、北近畿タンゴ鉄道が乗り入れている。

Img_7052  田辺城と京都府警舞鶴警察署。庭園とともに親しまれる田辺城、夜の城郭というと、立ち入ることができるとしても、やや怖く感じることもあるが、警察署が隣にあるので、治安は安心だ。場所は、西舞鶴駅から歩いてゆくので基本、町が合うことは無いと思うが、線路から見える道筋を歩いてゆけば迷うことは無い。

Img_70511  田辺城と警察署、そして駅前と駅前に広がる商店街。典型的な城下町としてのつくりとなっている。駅前を歩いてみると、東舞鶴と比べ、西舞鶴の方が商店街の規模もやや大きく、ホテルの数も多いようだ。これは、天橋立に向かう北近畿タンゴ鉄道の始発駅が西舞鶴にあるということで、観光地としての役割がある為だろう。

Img_7161  田辺城最寄の西舞鶴駅へは、JR西日本の特急まいづる号が、京都駅から運行されており便利である。使用される183系特急車は、北陸本線特急雷鳥に使用される485系から改造されたものもあり、設備も含め、古いことは否めないが、言いかえればレトロ感溢れる特急だ。窓が小さいのがやや残念だが、旅情を感じることが出来る特急。

Img_5566  観光特急として、北近畿タンゴ鉄道のタンゴディスカバリー号が運行されている。本数は、まいづる号と比べ少ないが、KTR-8000形気動車は比較的新しく、展望スペースも設けられている。また、新大阪から北近畿タンゴ鉄道線を経由し西舞鶴に向かうタンゴエクスプローラ号には、眺望が素晴らしいハイデッカー構造のKTR001形気動車が使われている。

HARUNA

[本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる]

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平等院鳳凰堂 梅雨の晴れ間に京都宇治の世界文化遺産

2009-06-14 22:32:10 | 写真

◆蓮花咲く平等院

 京都もいよいよ梅雨入りの季節。雨に煙る古都も風情があるのだが、やはり写真は晴れていた方がいい。そんな中、平成の大修理も終わったということで、久しぶりに宇治の平等院へ足を運んでみた。

Img_7338  平等院が建立された1052年は、仏教が興ってから釈迦の入滅より2000年を経て、仏教の教えが廃れ、天災や病厄により世界は破滅に向かう、と考えられていた時期にあたる。この末法思想を背景として、信仰を改めて広めるべく、平等院は建立された。気候変動や新型インフルエンザ、なんとなく現代にも当てはまるのかもしれないと、ふと頭に浮かんだ。

Img_7326_2  宇治駅まではJR奈良線で、221系の快速で行く予定だったのだが、普通電車の方が早く着くとのことだったので103系の普通電車に揺られていった。それでも鋼製の頑丈な箱型で奈良線を行くこと20分少々意外と近いのだ、宇治駅からは徒歩五分で参道に、参道を五分で平等院へ至る。

Img_7323  宇治では、新茶を示す季節の掲示が印象的だが、同時に修学旅行シーズンにもかかわらず、勘さんとしているのも印象的であった。平日に足を運んだのだが、地方からの観光客でもう少し賑やかでしかるべきなのだけれども、これも新型インフルエンザのえいきょうなのだろうか。お茶の店では、奈良県の中学生が店員の体験実習を行っていた。

Img_7336  平等院に到着。伝統的塗料を用いているので、服に付きます、との注意書きがあった。拝観料600円を支払い、久々の平等院だ。平等院は、拝観料が個人600円、中高生400円、小学生300円となっている。拝観時間が0830~1730(受付は1715まで)となっているが、午後からは逆光になるので、午前中の拝観がお勧めである。

Img_7339  国宝の平等院鳳凰堂。十円玉に描かれている鳳凰堂だ。前回足を運んだ際には、平成の大修理の最中にあり、この平等院鳳凰堂にも足場が組まれていた。足場に囲まれた鳳凰堂も貴重な情景であったと考えるのだが、十円玉には足場は描かれていないので、硬貨でみなれたこの情景の方がしっくりとくる。

Img_7341  鳳凰堂の中堂。中には本尊である阿弥陀如来像が安置されている。ここには、14面から成る鳳凰堂壁画として、極楽浄土への道筋が描かれている。その復元模写が博物館である鳳翔館に記されており、その様子は、エジプトの最初期の文学作品、死者の書を思わせる、いわば日本版死者の書というべき内容。

Img_7355  浄土式庭園の池には蓮の花が浮かぶ。本来ならば、この写真の背景は青空が映える美しい写真となる予定なのだが、それは梅雨の時期、悲しいかなこの日の天候は曇天で、灰色の空となってしまったのは残念。曇りならば、午前でも午後でも、露光時間と露出値を工夫すれば、なんとかなるものだ。

Img_7359  それにしても、新型インフルエンザの影響は、ここまで、というべきか、修学旅行生はひと組のみ。今回の流行禍となったH1N1型は、比較的弱毒で脅威度は中。免疫を持つ人間がいないので感染力が物凄いのだが、ここで強毒性のH5N1型が蔓延した場合の社会機能維持は、改めて考える必要があるようにも思う。

Img_7369  鳳翔館。ここに保存された美術品は、物凄い。千年前にこれだけの木造仏教美術が創り得て、しかも今日に至るもその姿を見ることが出来るのは驚きの一言に尽きる。一見の、いや、何度でも拝観する価値があるのだが、同時にこの鳳翔館は撮影禁止。ちなみにスケッチも禁止だ。足を運ぶことをお勧めしたい。感動の美術、歴史とともに歩む文化財と出逢うことができる。

Img_7396  鳳凰。フェニックス。ちなみに、鳳凰堂の上に並ぶこの鳳凰は、複製で、実物は鳳翔館に展示されている。鳳凰とは、伝説上の鳥で、瑞獣として中国の古い文献や美術などに出てくるものだ。瑞獣は、麒麟、霊亀、応龍。これは風水の玄武、蒼龍、白虎、朱雀を印象づけるものだ。京都の南にあるので、鳳凰=朱雀、なるほど、と一人納得した。

Img_7403  こうして、平等院を一回りした。鳳凰堂は、別料金で拝観することが出来るのだが、毎時あたりの拝観回数は決まっているようで、時間の関係上、残念ながら今回は拝観は割愛した。宇治市には、今回紹介したここ平等院のほか、万福寺、宇治神社、宇治上神社などの名所旧跡が点在している。

Img_7419  ここでサイレンが聞こえた。宇治川上流の天ケ瀬ダムが放流を開始するとの警告だ。天ケ瀬ダムは、高さ73㍍のアーチ式ダム。平等院から2km上流にあるダムで、宇治市の観光名所の一つとして知られている。時間があれば、放流の様子も撮影したかったのだが、今回は、急に増した水嵩をみて、その迫力を体感するに留めた。

Img_7427  天ケ瀬ダムの放流により、宇治川を流れる水量は急激に増すため、国土交通省の警戒車が巡回している。なんでも淀川水系(宇治川は淀川の一部)唯一のダムということで、貯水量も凄いとのことだ。天ケ瀬ダムには、水力発電所も併設、発電量は総出力で約60万キロワットに達するとのこと。

Img_7474  宇治へは、大阪淀屋橋や京都出町柳から、京阪本線を中書島駅で宇治線に乗り換え。京阪本線でも中書島駅は、特急停車駅で、京阪特急、旧3000系(現8000系30番台)や8000系特急、その中でも特別料金不要で利用できる二階建のダブルデッカー車にて、足を運んでみるのも面白いかもしれない。

Img_7319  JR利用の場合は、JR京都駅にて、東海道本線(琵琶湖線・京都線)や東海道新幹線から、奈良線に乗り換える。旧山手線塗装と同じウグイス色の103系が普通電車で、また、クロスシートの221系電車が快速電車として運行されている。京都駅から宇治駅まで地下鉄初乗り料金と同じくらいの値段で行くことが出来るのはうれしい。

HARUNA

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ユーロファイターに新しい動き 航空自衛隊次期戦闘機(F-X)選定

2009-06-13 22:33:04 | 先端軍事テクノロジー

◆欧州機か、米国機か、それとも・・・

航空自衛隊次期戦闘機選定で、F-22について、動きがある中、欧州機であるユーロファイタータイフーンについても新しい動きがあった。本日は、この話題について考えてみたい。

Img_5027 11日付日経新聞Web版より以下の通り引用する:英BAEシステムズ、「FX」採用ならユーロファイターの技術情報を開示
 英BAEシステムズのアンディー・レイサム副社長は11日都内で記者会見し、日本の次期主力戦闘機「FX」の候補機である欧州のユーロファイターについて、日本が採用を決めた場合、日本でライセンス生産がしやすいよう詳細な技術情報を開示する考えを明らかにした。日本の戦闘機は代々、米軍機をライセンス生産してきたが、詳細な設計情報を開示しない「ブラックボックス」化が進んでいる。日本の防衛産業は先端技術に触れられず、生産や整備面での障害になっている。
Img_9490  レイサム副社長は「我々はブラックボックスを設けない」と述べ、米国との違いを強調。ユーロファイター採用のメリットを強調した。
 FXを巡っては、防衛省の大本命だった米ロッキード・マーチンの最新鋭機F22がオバマ政権の発足を受けて生産中止される方針となり、選定作業が混迷している。(19:51):引用は以上。http://<wbr></wbr>www.nik<wbr></wbr>kei.co.<wbr></wbr>jp/news<wbr></wbr>/sangyo<wbr></wbr>/200906<wbr></wbr>11AT1D1<wbr></wbr>106Y110<wbr></wbr>62009.h<wbr></wbr>tml

 F-22の導入について、厳しいとの声が改めて寄せられる中で、ユーロファイタータイフーンの導入について、これを後押しするような動きといえる。

Img_7214  ただし、ブラックボックスを設けないという点には、かなり疑問があり、過去にもユーロファイターについては、これに近い発言もあったことから、慎重に見てゆく必要がある。加えて、ユーロファイターは、段階発展の過渡期にある機体であり、レーダーの換装などを最初から織り込んで調達を行い、ライフサイクルコストについても、将来、急激に増大するという前提で見て行かなければ、その能力を十分に引き出せない運用となる可能性もある。もともとタイフーンは、絶対航空優勢確保を念頭に開発された航空支配戦闘機としてのF-22と、各種攻撃機の能力と運用の要求を統合した統合戦闘攻撃機F-35の中間を上手く取り入れた多用途戦闘機である。レーダーの性能などでは未知数であるものの、自衛隊F-X選定の候補では、F-22に次ぐ制空戦闘での能力を発揮できるとされている。

Img_4903  航空自衛隊のF-X選定は、F-22の導入を繰り返し求めることについて、F-22を必要としていると同時に、国内で航空開発を行う際に、米国製戦闘機導入という政治的圧力をかわすという目的があるのではないかと、みえてくる。先端技術実証機の開発により得られる技術と、日本独自では有してない技術をと併せれば、F-2が有するポテンシャルと同等のものは開発できる余地はあるものの、米国製戦闘機導入を求めるという圧力を回避するには説得力は限られる。米国製戦闘機の輸入を求めるアメリカからの圧力を、それならばF-22の導入を希望するという対案を提示できる。仮にそこで相当不利でもF-22を日本が取得できるという道筋が立てられるならば、それも可。F-35が、日本の防衛産業や防空体制に寄与する形で取得できるまでに、何らかの形で国内での技術開発に見通しがつけば、エンジンなどの米国からの輸入という形での共同開発機の目途も立てられる。

Img_1874  一方で、これらの命題とは別に、航空自衛隊にF-4戦闘機の後継機が必要となっていることも確かである。戦闘機の性能だけで考えるならば、比較も可能であるが、同時に政治的問題も絡んでくるため、一概に決めることが出来ない要素も含まれている。他方で、F-4の後継機だけではなく、時期的にはF-15Jの近代化改修に対応していない初期の、いわゆる非MSIP機の後継選定とも重なることから、安易に特定の機体を後継機としてしまうと、将来の航空自衛隊要撃機体系を必然的に方向付けてしまうことにもなる。この点、米国製か、欧州機か、という問題は大きくのしかかり、これが問題を複雑化させている。

Img_4658  米国を主導として開発されている機体について、現在、F-35のみであり、将来的には現行のF-22の数的不足を補完し、F-15Cの後継となる機体が開発されることも考えられるが、もうひとつ、いえることは、2004年頃から欧州共同開発のトーネード攻撃機の後継機に関する技術開発、その模索が始まっているということだ。米国から最新の技術が得られないのであれば、国産で開発する技術を十年単位で模索するか、もしくは欧州共同開発に日本として参加という選択肢を加えるかである。ユーロファイターの導入が具体化すれば、これを契機として欧州でのユーロファイターの近代化改修や、次世代戦闘機開発への参加という展開も考えることが出来るようになる。もちろん、このためには、技術の相互移転を阻む国内法的要素を克服する必要が出てくるが、これは政治の問題だ。

Img_9473  F-4後継機と、F-22導入問題は、切り離して考える必要も、一つあるのに対して、やはり、F-4後継機について慎重を要する要素として忘れてならないのは、F-22以外は、基本的にライセンス生産を希望していることであり、もちろん、すべての部品を国内で調達しライセンス生産するわけではなく、F-4で5%、F-15で25%が有償軍事供与部品に依存している。このため、ライセンス生産でも開発国には利益が生まれるわけだが、同時にライセンス生産は少数多年度生産となる。したがって、調達は長期間続くわけであり、結果的に長期間運用されることとなる。40機をライセンス生産するとなれば、実際の運用は2050年代まで続く可能性もあるわけだ。

Img_8096  はたして次世代戦闘機はどのようになっているのか、ステルス性とアンチステルスレーダーとの駆け引きはどうなっているのか、また、現在ロシアが進めており、年末までには技術実証機が飛行するとされるロシア空軍の次世代戦闘機PAK FA-T-50計画や、その他のステルス戦闘機がどのような発展を遂げるのか、未知数な点も多い。この点で、現在の第4世代戦闘機は一気に陳腐化するのか、レーダーなどの電子戦技術の発展と近代化改修により第一線での任務対応能力を維持できるのか、これも問題を複雑化させる背景の一つであろう。

HARUNA

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平成二十一年度六月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報 続報

2009-06-12 23:49:04 | 北大路機関 広報

◆ひえい、はたかぜ、おおなみ寄港

 6月期の護衛艦寄港、そして一般公開について、ヘリコプター護衛艦ひえい、ミサイル護衛艦はたかぜ、護衛艦おおなみ寄港情報が発表されていたので、本日は掲載。

Img_2708  北朝鮮が国連安保理決議による制裁決議が採択され、新しい制裁が課されるならば、三度目の核実験を強行するのではないかとの分析がCIAより出されている旨、CNNにより報じられていた。今後、場合によっては米空母機動部隊などによる策源地攻撃の行使を認める内容のさらに新しい決議に展開するのか、今後の極東安全保障情勢の展開に興味がもたれる。

Img_7179  他方、核武装を図る隣国が、その仕様を前提とした国際関係の展開を図っていることは、第二次大戦後異例の事態であり、わが国の安全保障の根幹にもかかわる大きな転換期が近づいているのやも。日本海から、はるな、が除籍されただけで、これだけ北朝鮮が増長するのか、と一瞬思ったりもする次第。閑話休題。

Img_3130 東京港晴海埠頭護衛艦おおなみ一般公開。6月21日に予定されており、1000~1130,1400~1530時に体験航海が実施、併せて制服着用体験、陸上自衛隊車両一般公開、戦闘防弾チョッキ着用、自衛隊OBによる物品(グッズ?)販売、軽飲食コーナーなどの販売も行われるとのこと。詳しくは東京地方協力本部HP:http://www.mod.go.jp/pco/tokyo/を参照していただきたい。

Img_7582  ヘリコプター護衛艦ひえい一般公開が、6月25日から27日まで、実施される。実施場所は、宮城県日向市細島港である。こちらについて、詳細は、宮崎地方協力本部によれば細部調整中とのこと。はるな型護衛艦の一隻、ひえい一般公開について、詳細は宮崎県地方協力本部HP:http://www.mod.go.jp/pco/miyazaki/を参照されたい。

Img_6304  ミサイル護衛艦はたかぜ、一般公開が、宮崎県日南市油津港にて6月26日と27日に実施予定である。従来型のミサイル護衛艦とイージス艦の過渡期に建造された、はたかぜ型ミサイル護衛艦の一般公開、こちらについて、詳細は、こちらも宮崎地方協力本部によれば細部調整中とのこと。詳細は宮崎県地方協力本部HP:http://www.mod.go.jp/pco/miyazaki/を参照されたい。

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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国連安保理北朝鮮制裁へ 核実験を受け新決議案を合意

2009-06-11 21:13:15 | 国際・政治

◆実効性を持たせることが今回の目的

 10日、北朝鮮核実験を受け、国連安全保障理事会が米英仏ロ中の5常任理事国と日韓の七カ国で、北朝鮮制裁に関する新決議案で合意に達した。

Img_1386  新決議の内容は、北朝鮮への船舶の貨物検査強化、及び人道目的を除く北朝鮮への融資や援助を禁止した金融制裁などが盛り込まれた。船舶の貨物検査は、いわゆる臨検にあたり、この臨検を通じ、事実上の海上封鎖も可能な内容が検討されたが、強制的な臨検ではなく、要請する、と表現が弱められ“公海上では船舶が所属する国の同意が必要”との文言も盛り込まれている。

Img_5652  また、弾道ミサイル実験を受け、今回の決議案により、北朝鮮に対しては、小火器を除くすべての武器の輸出が禁止され、航空機や対艦ミサイル、対戦車ミサイルなどの国産能力を持たない北朝鮮では、通常戦力の稼働率確保や維持に大きな問題が生じることとなる。政府は、今回の国連安保理決議案を受け、日本の領海内夜行海上での船舶検査を行うための整備について、検討を開始しているとのこと。

Img_5013  中曽根外務大臣は、必要な対応や措置は当然採っていかなければならないと思います、と表明、高須国連大使は、100点満点ではないが、それはどこの国でもそうであり、今回の決議案の合意内容は中国が当初考えていた内容以上に強い内容だと思う、と会見で述べた。この決議案は、強制力を持たせるか否かで、米中の激しい駆け引きがあったものの、勧告などではなく、法的拘束力を有する安保理決議というかたちで各国が合意に至ったことが重要であろう。

Img_0831  この決議は、実は非常に重いもので、例えば海上での臨検は、国際法上の武力行使にあたるのだが、安保理決議により認められたことで、臨検を行使する権限を国連から授与されたこととなり、この決議案が採択されれば、北朝鮮に向かう船舶や航空機に対する臨検は、国連憲章が禁じた武力行使に含まれないことを意味する。

Img_7421_1  また、臨検を行う艦船は、勝手に北朝鮮沿岸を艦砲射撃したりすることは国連憲章の上では禁じられているものの、臨検の際に、北朝鮮の海軍艦艇やそれに準じる組織から攻撃を受けた際、安全保障理事会が必要な措置を採るまでの間、反撃や策源地攻撃、つまり国際法上の自衛権を行使することは、可能である。実効性を持たせることが重要であるとした、外務省や日本政府の目的は、達せられる内容といえる。

HARUNA

[本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる]

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