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航空自衛隊次期戦闘機(F-X) “F22輸出仕様”研究開発を米議会が容認

2009-06-18 22:39:17 | 防衛・安全保障

◆F-4後継機となり得るのか?

 F-X選定は、いつ決まるのか、本日もこのテーマを扱いたい。F-4戦闘機の飛行時間を減らすなどして延命措置を図るものの、その運用には限界があり、航空幕僚長も、先日、懸念を示したばかりだ。

Img_9865  こうしたなか、日経新聞Web版に、F-22に関する新しい動きが報じられていた。引用→F22「輸出仕様」の研究開発を容認 米議会、予算43億円を合意【ワシントン=弟子丸幸子】日本政府が次期主力戦闘機(FX)の有力候補に据える米最新鋭戦闘機F22を巡り、米上下両院協議会がF22の生産中止を防ぐ目的で、4500万ドル(約43億円)の予算を認めることで合意したことが17日明らかになった。F22の「輸出仕様」の研究開発費として使用することも容認した。

Img_9338  同予算は2009会計年度(08年10月~09年9月)の補正予算案に盛り込まれ、下院は16日に同補正予算案を可決。上院は近く採決する。F22を巡っては、ゲーツ米国防長官が4月に新規調達を停止することを決定し、生産が中止となる可能性が強まっていた。日本がF22を調達するには、米国内法による禁輸規定(オビー修正条項)が障害。さらに日本のFX選定までの間、F22の生産が継続している必要がある。米議会の「輸出仕様」の開発予算を認める動きが、禁輸解除のための法改正につながるかどうかが今後の焦点となる。(16:00)http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090618AT2M1801U18062009.html←引用ここまで。

Img_4374  F-22の導入について、新しい可能性が示されたことにより、航空自衛隊の次期戦闘機選定は、さらに時間を要する可能性が生じている訳であるが、本ブログでに何度か触れているように、第一にF-4戦闘機の耐用年数が限界を越えようとしている点、第二に現在生産されているF-2支援戦闘機の生産が終了し、日本国内での戦闘機生産能力に大きな影響が生じるという点から、時間は切迫している。時間が切迫しているという背景で、F-22導入について、F-4の後継機とは切り離して考えるべきではないのか、とも考えたい。F-22の有するポテンシャルは相応に大きいわけであるが、それでは、北部航空方面隊、中部航空方面隊、西部航空方面隊、南西航空混成団と防空を担当する管区において、F-4の後継機として導入する二個飛行隊では、すべての管区に行き渡るわけではなく、防空能力に格差が生じてしまう。

Img_7424  さらに、運用する基地が分散すればするほど、機密保護への真空地帯も生じやすくなり、可能であれば一か所の基地で一括して運用し、機密保護を行うことが望ましい。他方で、要撃対処にF-22を充てるならば、F-22の性能を必要とする国が、F-22の配備された基地に対して電子偵察などを実施する可能性もあり、単純にF-15などの航空機の任務をそのままF-22に充てるというのも、現実的ではないように思える。従って、横田基地などで航空総隊司令部飛行隊などでF-22は運用し、それとは別に、しかし、F-22取得に障壁とならない範囲内で次期戦闘機を選定する必要もあるのではないか。なんとなれ、F-22の導入は、日本でも小牧南工場で整備支援を行えるかは未知数であり、稼働率をこれまでの航空自衛隊が選定した戦闘機と同程度の率で維持できるかと問われれば難しい。

Img_9848  また、日本としては、航空産業の維持という観点からも、F-22とF-Xは、多少切り離して考えるべきかもしれない。ここでは、F-2支援戦闘機の生産延長という選択肢もあり得るし、場合によっては暫定的な機体をF-Xとして選定する、という施策もあり得よう。別の視点からは、本国で生産が終了した機体のライセンス権を取得し、日本向けの供給するとともにCH-46(V-107)が米国で終了後、ライセンス生産権を有する川崎重工が製造し海外に供給したように、今後も潜在的な需要がある機体をライセンス生産し、もちろん、これには引き輸出三原則の拡大運用の見直しも視野に含める必要があるのだが、国内に防衛省機として供給するとともに海外に供給する、という選択肢も生まれるのではないか、と考える。

Img_9419  実際問題として、日本にF-22が供給された場合、機密保護と併せ運用が可能な基地は、横田基地、嘉手納基地、このほかには、潜在的に米軍施設と航空機整備施設が隣接する厚木航空基地、などが考えられる。一方、米本土でも一般公開の際には厳重な警備の下で柵の向こうに展示され、機密保護の観点からパリ航空ショーにも展示されなかった機体が、航空祭などで身近に並ぶ様子は想像出来ない。F-4後継機には、相応しい機体は別にあり、F-22取得は、それとは切り離して調達する必要もあるのではないか、と考える次第。

HARUNA

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コメント (9)
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