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リニア中央新幹線建設ルートの模索① 運賃・距離・工費・所要時間に1~2割の差

2009-06-22 21:53:45 | コラム

◆リニア新幹線を考える

 リニア新幹線構想が経路を巡り揺れている。JR東海は、大深度地下工事技術に目途がついたことから、南アルプスの地下を掘削し、東京と名古屋を最短距離で結ぶ構想だ(リニアの写真が無いので長野を通る北陸新幹線の写真で代用)。

Img_0203  このリニアを用いての中央新幹線構想で、現在検討されている経路は、木曾谷ルート、伊那谷ルート、南アルプスルートの三ルートである。木曾谷ルートは、東京名古屋間334kmを46分で結び建設工費は5兆6300億円。伊那谷ルートは東京名古屋間346kmを47分で結び建設工費は5兆7400億円。南アルプスルートは東京名古屋間286kmを40分で結び建設工費は5兆1000億円と見積もっている。

Img_0225  また、JR東海によれば、リニア新幹線が運行するすべての都道府県に、1駅づつ駅を建設するとのことだ。南アルプスルートであれば、最も少ない資材で完成させることができ、東京名古屋間の新幹線運賃との差額も千円から二千円程度という範囲内であるから、のぞみ号と比べても大幅に速度は向上している。

Img_0227  毎時10往復の運行を計画しているということであるので、のぞみ号は、リニア新幹線に特化し、他方、東海道新幹線は、のぞみ号中心ダイヤから、ひかり号、こだま号に再びシフトすることになることから、静岡県をはじめ、東海道新幹線の、のぞみ号停車駅以外の駅を多く有する地域での利便性が高まることにもなる。

Img_0160  JR東海は、建設費を全て自社負担する構想だ。最短の南アルプスルート以外の二ルートであれば、所要時間は、一割から二割近く増加することとなり、当然運賃も増額することとなる。特に、伊那谷ルートを経由した場合、距離は二割増加することとなり、建築工費も一割以上増額することになる。結果、運賃は最大で二割程度の増額を見込まなければならない可能性が浮上する。

Img_8020  しかしながら、リニア新幹線を地域振興の起爆剤としたい観点から、長野県の村井仁長野県知事は、伊那谷ルートの建設を支持する見解を示し、諏訪市を経由し、最大で2から3の駅をJRの負担で建設を求めている。リニア新幹線でも、のぞみ号運行はノンストップであろうが、それ以外は、ひと駅増えることで所要時間は6分、つまり最短ルートよりも一割五分増えることを意味し、長野県に三駅を建築した場合所要時間は最大三割増えることを意味する。

Img_7995  地域振興の観点から、リニア新幹線を政治的に誘致したいという意思や、新幹線用地の土地などの関係から、過去の新幹線計画でも見られた状況ではあるものの、大本は、のぞみ号の高速化、つまり京阪神、名古屋、首都圏を高速で結ぶことを意図した計画であるため、所要時間を一割以上増加させる施策は、果たして、と思う事が無いでもない。

Img_0204  さて、今回は、運賃・工費・所要時間の観点から、一割以上が増加してしまい、結果的にリニア新幹線のポテンシャルを大きく減退させかねないという問題を提示した。続いて、次回は、もうひとつ、中央新幹線は、長野県の福祉を増進させる位置づけに就くことが果たして可能なのか、別の視点からみてみたい。

HARUNA

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コメント (6)
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