◆6月17日 第一回懇談会(生産技術基盤の概況、今後の進め方等)
欧州有数の航空関連行事であるパリ航空ショーがいよいよ始まり、いつもお世話になっている方も展開された模様。しかし、機密保護の観点から、パリ航空ショーへのF-22参加は見送りとなったとのことだ。
防衛省航空自衛隊は、次期戦闘機として、輸出が非常に難しいとされるF-22の導入を繰り返し希望しており、他方で、機密保護の観点からアメリカ空軍などでは日本を含むすべての同盟国に対して、輸出は極めて難しい、また、豪州に対しては輸出は不可、との回答を示している。戦闘機の生産技術基盤のあり方に関する懇談会は、こうした背景のともで開催される。
引用:趣旨 (1)我が国における防衛生産技術基盤は、厳しい財政事情、装備品の高性能化・高価格化による国内調達数両の減少といった状況に直面しており、特に、戦闘機については、F-2戦闘機の生産が終了する平成23年度以降は我が国で戦闘機を生産しない期間が生ずる見込みである。
(2)この様な状況が、戦闘機の生産技術基盤の維持にどのような影響を与え、如何なる問題点が生起するのかを整理することを目的に、有識者を含め、官民で意見交換するため、戦闘機の生産技術基盤のあり方に関する懇談会を開催する。引用ここまで。http://www.mod.go.jp/j/news/2009/06/16a.pdf
懇談会委員は、防衛省内局より、総合取得改革担当防衛参事官、技術監、経理装備局装備政策課長、航空機課長、技術計画官が出席。航空幕僚監部より、装備部長、技術部長、装備部装備課長、技術部技術課長が出席。有識者として、日本航空宇宙工業会専務理事今清水浩介氏、拓殖大学大学院教授森本敏氏、岡本アソシエイツ顧問安江正宏氏、このほか、座長が必要と認めるものが出席。懇談会の庶務は経理装備局航空機課が行う。6月17日の1500時より第一回懇談会が行われ、生産技術基盤の概況、今後の進め方等について話し合うこととなっており、概ね今後は月一回程度実施。議事要旨及び資料は原則公表するとのこと。
さて、戦闘機の生産基盤維持は、F-86以来続いたライセンス生産の体制を存続するか否かに関わる問題で、今後の日本の航空行政全般を左右する問題となる。例えばF-15Jの場合、ライセンス生産を担当する三菱重工の名前が思い浮かぶが、その下請けには1200社以上が関係している。もちろん、この中には汎用品の部品と共用性を有する部品もあるかもしれないが、基本的には、超音速で成層圏を飛行する、民生品では要求され得ない能力の発揮のために必要とされている技術である。このためには、どういう施策があり得るのか。
F-15近代化改修、これには一機当たり42億円程度を要するとのことだが、これにより、三菱重工小牧南工場のラインを維持することはできないか、これは一瞬考えることではあるが、定期整備のラインと生産ラインは基本的に別のものであるから、これを以て維持することは難しい。しかし、話は逸れるが、戦闘機生産の空白期間という数年間に、一気に航空自衛隊のF-15Jを近代化改修してしまうということはできるだろう。
技術開発を以て生産技術基盤維持に用いるのはどうか。技術研究本部を中心に、三菱重工などが参加し先進技術実証機(ATD-X)の開発が進められており、この初飛行は2011年を予定している。全長14.1㍍、IHI XF5-1エンジン二基により10㌧の推力を有し離陸重量8㌧の機体は、高いステルス性を有する形状と、将来アビオニクスシステム研究試作などの成果が活かされた機体となる。大きさは、JAS-39グリペンと同程度、離陸重量はグリペンよりも軽いATD-Xの開発により、一応一定以上の生産技術基盤を維持することはできるかもしれないが、基本、この機体は戦闘機ではない事と、年間5~7機を生産し続けるわけにもいかず、次期戦闘機のライセンス生産まで、生産技術基盤を維持できるかは疑問である。
F-2の増産はどうか。F-2支援戦闘機の開発が、当初供与されるはずであった技術が提供されないなど様々な理由により遅延した際、F-4を支援戦闘機に改修し、その分の要撃機の不足をF-15の生産により補ったということがある。F-2の生産数を継続することにより、生産基盤を維持できないか、という提案。これは妥当性もあるのだが、日米共同生産であり、三菱っ重工、川崎重工、富士重工、IHI、ロッキードマーティンが主要モジュールのブロック生産を担当している。主翼でさえ、右翼を三菱重工、左翼をロッキードマーティンが生産していることもあり、日本だけの意思で生産が継続されるかは、疑問符が付けられる。しかし、F-2は、日本主導による日米共同開発で誕生した機体であり、技術的に近代化改修への自由度は高い、いわば運用として使いやすい機体である。
なんとなれ、防衛産業の維持は、戦闘機のみならず、多くの装備に対して当てはまる問題である。装備の稼働率を上下させ、結果、少ない装備にて国土を防衛することが出来るのか、という問題や技術的独立性が政治的中立性に繋がる点、さらに技術力を抑止力とすることで、軍事安全保障に対し、軍事的抑止力以外の要素を加えることが出来るかなど、大きな問題であり、今後の推移を見守りたいと思う次第。
HARUNA
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F-22の件、本当なんですかね?なんか以前にもフランスがその性能を解析するためにレーダーで追跡していたとか?でもいずれは解析され真似されるし、どこかで要撃されればその性能や研究もされるでしょう。なんかステルス性能というものも研究がなされてそれを探知できるレーダーが近日できるような気がしてなりません。
フランスのレーダーに関する話はいろいろ聞きますが、まあ、嘉手納で日米合同演習を実施した際にも、空自は、レーダーに映らず、本当に離陸したのか?と驚いた旨、新聞に出ていましたので、日本も少なくとも捕捉しようと努力はしていたのだろうと。フランスも考えることは同じなのでは、と。
技術に関してですが、早い話、今のレーダーでも、F-22は映っているわけなんですが、反射が少なく、ノイズに隠れてしまうのみ。これを情報処理する技術を合わせれば、発見はできるでしょう、なんとなれ、ステルスとは、見えにくくする技術ですからね。
他方、1998年にユーゴスラビアでF-117ステルス攻撃機が低空飛行中に対空砲火で撃墜され、その残骸はロシアに運ばれました。もともと、ステルスの原理、電波吸収材の理論はソ連製なので、遠からず、F-117を真似た航空機が出来るのでは、といわれていたのですが、現実問題として、十年以上を経ても出ていません。形状だけを簡単に模倣しても無意味ですし、所要の性能を達成するには底支えする技術が無ければ模造さえできないのでは、と。
>生産技術基盤
けっこうもう拙い状況らしいですね・・・戦闘機に関係する中小企業の場合、レドームや燃料タンク、スチール鋳物部品、レドーム用樹脂を生産する企業、精密鋳造品会社など約20社で事業から撤退中か、または撤退を決めているそうで・・・・
特殊かつ独占的に部品を製造している会社さんが多いですから・・・1社の撤退でもかなりまずいでしょいうね・・・・最近タダでさえも、航空機は長期運用が増えていますから・・現用機でも故障しても、部品が調達不能なモノも出るかも知れません・・・・
とりあえず・・・・F-2で繋いで(1SQ分でも・・・)T-4の後継機辺りを三菱に担当させないと持たないかも知れませんね・・・とりあえず、どの様な当てが有るのかは知りませんが・・・・空自が来年度予算もFXを見送るに関しては何かとんでも無い「失策」をしつつ有るのではと素人ながら疑ってしまいます。
武器輸出三原則や輸出云々よりも、戦闘機や戦車など、95年大綱水準に戻せば何の問題も無いと思うのですけどね・・。戦車に関して、FVでも良いのですけど、地皺が多く縦深の浅い国土の防衛には、道を選ばない装軌式車両のポテンシャルは大きいですし、F-Xが難航してるのも、少数精鋭に走ろうとするからですから・・・。
企業が撤退の場合は海外からの部品供給とか、その可能性も含めて模索するか、もしくは撤退せず維持できる程度の技術支援資金や、予備部品としての発注増加などを行う必要があるようにも。一方で、官主導で業界再編を促しては、と仰る方を、軍事雑誌の誌上やブログなどで散見しますが、今回問題になっているのは中小企業の撤退如何の方が重いですので、注意する必要もありそうです。
生産延長について、F-2飛行隊の定数をFS部隊発足当初の24機に見直してみるとか、海上自衛隊のU-36後継(補完?)にF-2Bを導入してみては、と思ったりします。