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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】フランスラファールF4-1&ラファールF3Rと韓国KF-21ボラン,戦闘機開発競争

2021-07-26 20:11:29 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 日本ではF-2戦闘機後継機開発が本格化しつつありますが、ここでフランスと韓国という手堅く凡庸ながら革新的な手法と宝くじ一発屋方式を比較してみましょう。

 フランスのDGA国防装備総局は最新鋭のラファールF4-1戦闘機について評価試験を開始したと発表しました。ラファールF4-1戦闘機の試験はフランスのイストル空軍基地にて4月26日から29日まで実施され、この概要は一か月後の5月に発表されました。ラファール戦闘機の最新型はラファールF-3Rでインドやエジプトへ順調に輸出が進んでいます。

 ラファールF4-1戦闘機の評価試験へはフランス国内の防衛産業各社を筆頭にダッソー、タレス、MBDA海軍よりラファールM戦闘機2機、空軍よりミラージュ2000戦闘機2機、アルファジェット練習機2機が参加しています。フランス空軍ではラファール戦闘機の改良を継続する一方、ミラージュ2000戦闘機の後継となる次世代機開発も開始されています。
■ラファールF4-1戦闘機開発
 F-2戦闘機もラファールのように改良型を順次開発して往く方式を執れば次期戦闘機へ上手く繋げたように思います。

 フランス軍が評価試験を開始したラファールF4-1戦闘機は新しくヘルメット統合情報表示装置や新型の1000kg級空対地ミサイル等の運用能力を付与されるとのこと。この新型ヘルメットはSCORPIONヘルメット照準器で、フランス軍データリンクシステムの情報を操縦士の視界を動かす事無く視線と共に表示する2010年代からの先端システムのひとつ。

 ラファールF4-1戦闘機には情報表示のほか現行のMICAミサイルの次世代型であるMICA-NG空対空ミサイルの運用能力が付与される、これはアクティヴレーダー誘導の素子にAESAレーダーを採用したものでステルス機等へ探知能力が向上している。フランスではラファールF4-1に続きラファールF4-1RAUの開発が決定しており、改修が継続的です。
■ラファールF3R戦闘機輸出
 日本の戦闘機開発から参考にする場合、ラファールの最新型を開発し続け旧式化したラファールを改修して格安で輸出する方式は興味深い。

 クロアチア空軍が進めるラファールF3R戦闘機中古取得は12機で9億9900万ユーロとなります。これは2021年5月に発表されたもので、9億9900万ユーロの契約にはラファール用のミサイル等の弾薬はもちろん、整備支援や予備部品及び予備エンジン、またフランス国内で行う定期整備やラファール運用要員の教育訓練受け入れなどが含まれます。

 ラファール戦闘機、クロアチア政府は次期戦闘機としてJAS-39戦闘機とともにラファール戦闘機を検討してきましたが、2020年10月4日にフランスより中古ラファール戦闘機12機の無償譲渡を受けると発表しました、今回導入するラファールは比較的新しいラファールF3R仕様であり能力向上に関わる実費については有償供与となりましたかたちです。

 クロアチア空軍では現在運用している機体がMiG-21戦闘機24機であり、整備性の高い機体ではあるのですが老朽化が深刻であり、第二世代戦闘機から第4.5世代戦闘機に置き換わる事で防空能力が大幅強化されます。ただ、機体は無償であっても引き渡しに関わる実費で12機で9億9900万ユーロという費用は、戦闘機というものの費用を考えさせられます。
■KF-21ボラン試作機開発状況
 F-2戦闘機を眺めていた隣国では戦闘機開発が進められていますが。

 韓国が開発を進める准第五世代ステルス戦闘機KF-21ボランはKAI韓国航空宇宙工業社において5機の試作機製造を進めている、韓国のハンギョレ新聞が報じました。試作初号機は4月9日にロールアウト式を行い、現在はKAIのKF-21試作機製造ラインと向かいに在る実験棟において試験中で、ハンギョレ新聞によれば一年ほどで試験を完了するという。

 KF-21ボランは2022年にも初飛行を予定しており、2026年に完成、2028年までに先ず韓国空軍が40機を調達し、その上で2032年までに全体で120機を量産するとともに、国際共同開発として開発費の一部を分担するインドネシア空軍へも配備される計画だ。しかし、開発の遅れが指摘されてており、KAIは今回特別にハンギョレ新聞へ報道公開している。
■KF-21ボラン初号機への疑念
 戦闘機開発は一筋縄ではないか無いという事をF-2後継機開発に際しても冷静に見るべきでしょう。

 韓国が開発を進めるKF-21ボラン戦闘機初号機は事実上のモックアップの可能性が指摘されている。KF-21戦闘機は韓国がインドネシアとともに開発を進める准第五世代ステルス戦闘機であり、4月9日に初号機がロールアウトしている、しかし韓国国内報道koreajoongangdailyによれば、この機体は飛行する事無く解体されている展示用という。

 KF-21ボラン戦闘機初号機について関係者の話として、機体は自立する事は出来ず支柱により転倒を防いでいたと、韓国退役将官の発言を報じている。もっとも、エンジンは実物が用いられており、純粋なモックアップではなく、間に合わせで飛行は勿論自立さえ出来ないものの既に存在している部品を組み込んだ半分実物の実機に近いモックアップという。

 初号機は着陸装置と燃料系統や燃料タンクとエンジン及びコックピット等は実物を搭載しているが、この報道について韓国空軍は最終的な地上滑走試験を行うまえの計画段階の一部としているが、本来であれば初号機はそのまま地上試験を経て飛行しなければならないものであり、飛行する事無く展示会場で組み立て解体される初号機には謎と不合理が多い。
■KF-21ボラン初号機疑念背景
 国際共同開発はF-2のFSX計画とは違う意味で斜め上の状況となっているのが隣国のよう。

 韓国空軍が4月9日に発表したKF-21ボラン戦闘機初号機がそのまま会場で解体された事について、韓国国内報道では初号機を当日に訪韓していた、インドネシアのスピアント国防相へ展示し、インドネシアの開発費分担金支払い見合わせが、そのまま共同開発計画中止に繋がらないよう繋ぎ止める目的があったのではないかと考える向きがあるようだ。

 インドネシア政府はKF-21ボラン戦闘機開発遅延と性能不足を憂慮し、また当初韓国政府が約束した開発計画へのインドネシア防衛産業の参画が認められない状況から分担金支払いを延期させていた。しかし、スピアント国防相がKF-21実機を視察した事で一転、開発費分担を再開している。その初号機が飛行不能のはりぼでとすれば再度一転しかねない。
■時事:自衛隊五輪支援8500名
 ここからは時事です。東京オリンピックがいよいよ開始されましたがテロ攻撃等への警戒も怠る事は出来ません、警察と共に自衛隊も協力します。

 防衛省自衛隊は東京で行われる東京オリンピック及び東京パラリンピック支援へ陸海空自衛隊より8500名を派遣することとなりました。新型コロナウィルスCOVID-19の世界的感染拡大を受け一年延期された五輪、防衛省自衛隊では東京五輪準備支援隊を2013年より運用していますが、本番においては聖火台支援や各国国旗掲揚、会場警備に当ります。

 東京オリンピック及び東京パラリンピック支援について、岸防衛大臣は18日に支援隊編成完結式において隊員を激励しました。なお、当初計画では各国要人の空港から式典会場へのヘリコプターによる空輸支援等が含まれていたと考えられますが、最近のCOVID-19変異株デルタの感染拡大を受け五輪は無観客へ、各国要人の来日も大幅に減少しています。
■アフガン五輪休戦は成らず
 アフガニスタンの治安悪化はオリンピック期間中もオリンピック休戦とはなりませんでした。

 アフガニスタンでは7月19日、日米欧主要国大使館15か国とNATO北大西洋条約機構代表が連名で首都カブールへの攻撃を武装勢力タリバーンへ要請しました。アメリカ軍およびNATO有志連合軍の撤退により急速に情勢が悪化しているアフガニスタンではカブールにある各国の大使館や領事館などの運営にも影響が及びかねない情勢となっています。

 タリバーンとアフガニスタン政府との間での停戦交渉が7月上旬にカタールの首都ドーハで行われていますが、成立には至らず、また例年7月20日にはイスラム教の祭典犠牲祭イードアルアドハーに併せ停戦が行われていますが、外国軍隊の撤退を受け2021年はイードアルアドハー停戦は行われていません。アメリカ軍の完全撤退完了は8月31日の予定です。
■時事:五輪米製無人機1852機
 東京オリンピックに関する話題ですがブルーインパルスよりもむしろこちらに考えさせられました。

 東京五輪開会式において小型無人機1852機が活用され地球儀などを上空に描きました。東京五輪開会式1852機の無人機運用を防衛利用する、こう考えると凄い可能性を秘めているのですね。今回使用されたのはアメリカのインテルが開発したシューティングスター無人機、なにかT-33シューティングスター練習機を思い出すものですが、比較的安価です。

 インテル社によればシューティングスターは200機での飛行展示費用が9万9000ドルとい、これは01式軽対戦車誘導弾の半額程度でしかありません。日本国内で運用できるということはT-33を川崎重工でライセンス生産し自衛隊へ配備したように、自衛隊にこの無人機を採用する事も可能だ。勿論、攻撃用ではありませんが、防御用に非武装の無人機は有用だ。

 1800機あればスウォーム攻撃、ミツバチの大群のような攻撃が可能になると考えるのは初歩の初歩でして、攻撃用ではなくまもりの壁として、敵対するドローン攻撃から地上の非戦闘員を防衛するドローンの壁に使えるし、対戦車ミサイルによる攻撃をドローンの壁で防ぐ事も出来る。しかもこれは一機3億するスキャンイーグル無人機より格段に安価です。
■時事:シューティングスター
 シューティングスターができる能力は意外と多いのかもしれません。

 東京五輪開会式に飛行しましたインテル社製1800機の無人機活用法を考える、例えば海上での護衛艦防空用に、デコイとして活用する事も出来る、ミサイルシーカーからみれば2000機のドローンがレーダー反射板と共に一定間隔で150mの幅をもって海面すれすれを飛行しているのと、となりの161mの護衛艦はレーダーで見分けつかない。正に新時代だ。

 従来は中国が最も先進的で、同程度の技術を既に2010年代広範に行っていましたので、日本でも示せたのは大きな意味がありました。問題はあれを防衛利用する気構えが在るか、もちろん当事者としては防衛装備庁は技術研究本部時代から球体型ドローンという建物内を飛行できるものを開発していました、問題は予算を担うもっと上の気構えという所ね。

 一方、電子妨害による脆弱性をどのように対応するか、という事。GPS電波でさえも欺瞞される可能性があり、AI運用はまだ過渡期、補助的でありドローン運用を完全にAIのスタンドアローンとして師団長級の権限をAIに付与できる段階には至っていません、すると、例えば非可視光レーザー通信による管制など、装備化への技術が求められることでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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