北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】バイパー攻撃ヘリとチヌーク輸送ヘリ,アナコンダ-ブッシュマスター-フェネク

2021-07-27 20:21:38 | インポート
■週報:世界の防衛,最新13論点
 今回はヘリコプターと空中機動部隊等が運用できる軽装甲車両等の話題を中心に13の最新情報をお伝えしましょう。

 バーレーン陸軍が導入するAH-1Zバイパー攻撃ヘリコプター初号機がベルヘリコプターテキストロン社において製造を完了したとのこと。バーレーン陸軍は2019年にAH-1Zを12機、9億1200万ドル導入する契約を結んでいます。バーレーン政府はAH-1Z導入を強く期待しており、政府視察団のベル社のヘリコプター製造施設訪問等も行っています。

 AH-1Z攻撃ヘリコプターは2021年後半にもバーレーンへ納入される事となっています。このAH-1ZはAH-1W攻撃ヘリコプターを抜本的に改良したもので、アメリカ海兵隊へ配備されています。ロングボウレーダーは搭載しませんがアパッチロングボウに匹敵する性能を有している事が強調されるものの、取得費用もアパッチロングボウ並みの機体です。
■ドイツ軍H-145LUH導入進む
 日本ではOH-6がそのまま後継機無に除籍されましたがドイツは手頃な機体を思い切った導入に臨んでいます。

 ドイツ連邦軍はH-145LUH-SAR救難ヘリコプター7号機をエアバスヘリコプターズ社より受領したとのこと。ドイツ連邦軍は7機の導入計画を進めており、今回の納入を以て完納となります。7機のH-145LUH-SARはニーダーシュテッテン空軍基地とネルフェニッヒ空軍基地に配備、新たにホルツドルフ空軍基地にも配備し即応機を待機させる運用を執る。

 H-145LUH-SAR救難ヘリコプターにはBK-117C2として開発されたH-145を原型として高性能カメラ及び高光度サーチライトと緊急ビーコンロケーターシステム及び医療機器一式とレスキュー用ウインチが装備されているとのこと。H-145はUH-1HやOH-6の後継機として各国に売り込まれており、アメリカ陸軍州兵もUH-72として運用しています。
■ドイツ軍UH-1運用終了
 日本ではベル412が新規調達されていますがUH-1をUH-1Dのまま運用していましたものが遂に除籍されました。

 ドイツ連邦軍はUH-1D多用途ヘリコプターの53年間にわたる運用を終了させました。ドイツ連邦軍は1967年にUH-1多用途ヘリコプターの導入を開始して以来ドルニエ社によるライセンス生産により1981年までに352機のUH-1を製造しています。ドイツ連邦軍では多用途ヘリコプターとして重宝、最後の運用は救難ヘリコプターとしての運用でした。

 UH-1Dは老朽化と共に救難ヘリコプターの運用を順次エアバスH-145-LUH-SARへ移行させています。H-145-LUH-SARはメッサーシュミットベルコウブローム社と川崎重工が共同開発したBK-117の改良型BK-117-C2のエアバス仕様機で、連邦軍に7機が配備されます。多用途ヘリコプターとしてのUH-1はNH-90多用途ヘリコプターに代替されました。
■イギリスCH-47,14機を20億ドル
 CH-47輸送ヘリコプターは輸入すると物凄く高価なのですね。

 イギリス軍はボーイングよりCH-47輸送ヘリコプター14機を20億ドルで取得する構想を発表しました。これはブルームバーグが3月25日に報じたものでこれらの航空機及び関連資材は2030年までに納入を目指すという。ボーイング社では現在、CH-47の生産ライン維持に苦慮しており、アメリカ陸軍のCH-47導入下方修正の穴埋めを模索中とのこと。

 ボーイング社ではCH-47の生産ラインを維持するには年間18機の量産が必要であるとしており、一方、イギリスでは1980年にCH-47初号機を導入して以来整備を継続しており、現在は近代化改修機を含め60機が運用中となっています。ボーイング社では特に初期のCH-47についてイギリスが新造のCH-47へ更新するよう、商戦を強化している構図です。
■オランダCH-47F受領開始
 CH-47輸送ヘリコプターの話題をもう一つ。

 オランダ空軍は4月、CH-47F重輸送ヘリコプター初号機を受領したとのこと。オランダ空軍は長らくCH-47重輸送ヘリコプターを運用しており、今回導入したのは最新型であるF型へ再生改修されたもの。オランダ空軍は先ず6機のCH-47DをCH-47Fへ改修する事としています。オランダ空軍は新規購入と併せCH-47Fの20機体制を目指しています。

 CH-47F重輸送ヘリコプターはアメリカ陸軍のCH-47F-MYII-CAAS仕様にあたるもので、2015年にオランダ政府が導入を決定しています。この決定では、CH-47Dの11機を延命改修できるものは改修し、改修できない機体はそのまま新規製造機に更新する方針です。これらの機体はギルゼレイエン基地の第298統合ヘリコプター航空隊へ配備されます。
■DMVアナコンダ警戒車輛登場
 DMVアナコンダ警戒車輛は軽量ですが興味深い装備と云えるやもしれません。

 オランダ海兵隊はDMVアナコンダ警戒車輛をアメリカ本土での合同訓練へ参加させました。この訓練はオランダ海兵隊第32襲撃中隊が参加したもので、キャンプレジューンにて実施、アメリカは第2海兵師団が参加した。DMVアナコンダはイタリアのイヴェコ社製7t型四輪駆動車の車体部分に180hpのイヴェコ社製ディーゼルエンジンを搭載したもの。

 DMVアナコンダ警戒車輛は厳密には装甲車ではありませんが、装甲化キットにより車体底部と扉部分やフロントガラスが防弾化されており、最高速度は110km/hで航続距離は1000kmと優秀で、後部は荷台で車体上部には12.7mm重機関銃を搭載しています。オランダ海兵隊はこの車輛を2019年1月に36両導入、平凡な車輛ですが実用的な設計です。
■オランダ,ブッシュマスター増強
 自衛隊もブッシュマスターを買い足すか性能は兎も角安価な96式装輪装甲車の量産継続を行うべきではないか。

 オランダ軍はブッシュマスターMEDIVAC装甲救急車5両をオーストラリアのタレスオーストラリア社より納入されました。オランダ軍は2004年にアフガニスタンでのISAF国際治安支援部隊用に最初の25両を緊急導入していらい、ブッシュマスター耐爆車両98両を既に歩兵機動車輛として導入し、装甲戦闘車両を補完する重要な装備となっています。

 ブッシュマスターMEDIVAC装甲救急車には最大8名を収容可能で、装甲救急車として運用する際には、衛生分遣班と担架収容重症者1名及び着席可能である軽傷者4名を輸送可能であり、また装甲防御力は7.62mm徹甲弾の直撃や81mm迫撃砲弾の至近距離での炸裂や地雷の爆発から乗員を防護可能です。また歩兵機動型も1両、同時に納入されています。
■イギリスがマスティフ海外派遣
 マスティフは軽装甲機動車をそのまま巨大化させたような頑丈な耐爆車輛です。

 イギリス国防省は運用するマスティフ耐爆車両の改良型をアフリカのマリへ派遣しました。マスティフはNPエアロスペース社が開発した耐爆車両で、2000年代から2010年代にかけてのアフガニスタンやイラクでの安定化任務に際して巡回中の部隊をIED簡易爆発物やロケット弾攻撃から防護する目的で調達された、その名の通り非常に大柄の車両です。

 マスティフは12両が700万ポンドで強化されており、特に暫定的な車両として設計された為に老朽化が目立っており、この改修では独立懸架装置への換装や運転装置の更新、走行装置や制動システムの更新、中央車輪空気圧制御システムを搭載しています。マリでの安定な任務はCOVID-19影響を受けており、今回漸く新しい装備を搬入できた構図です。
■ベーオウルフ全地形車両
 ベーオウルフ、自衛隊も水に浮くし不整地突破能力の高い車両を極地というよりは被災地輸送と山岳戦を想定し導入するべきです。

 アメリカ陸軍はベーオウルフ全地形車両試作車2両をBAEシステムズ社より納入されました。ベーオウルフ全地形車両はCATV寒冷全地形対応車として計画している全地形車両の候補車輛で、イギリス海兵隊などに配備されているBvS.10装甲全地形車両の非装甲型であり、今回アメリカ陸軍は迅速な配備の必要性から既存車輛の改良型を導入する計画です。

 ベーオウルフ全地形車両は連接車体方式を採用しモジュール方式の後部車体には最大8tの貨物輸送能力を輸すると共に45度までの登坂能力を有しており浮航能力を有しており、当面は北極圏等の極地方での運用を見込んでいますが、酷寒地域や積雪地の他に砂漠や池沼地帯に山間部での運用が可能である本車を後方支援や人道支援任務に投入する方針です。
■MALE長時間滞空型無人機
 MALE長時間滞空型無人機は旧式弾薬をそのまま近代化改修するというもの。

 トルコ空軍が開発するMALE長時間滞空型無人機はKGK-SIHA-82滑空爆弾の投下試験を完了させました。この試験は4月26日に実施され、黒海沖の兵器試験場にて投下、30kmを滑空し目標に命中したとの事です。KGK-SIHA-82滑空爆弾は既存の750ポンド爆弾に誘導装置と滑空翼を装着したもので、500ポンド爆弾型なども開発されているところです。

 MALE長時間滞空型無人機は双発単胴型の無人機で、28時間の滞空が可能、ブロンコCOIN機のような形状となっています。KGK-SIHA-82滑空爆弾の搭載により無人偵察機や観測任務に留まらない長距離打撃力の一端を担うとともに、このKGK-SIHA-82滑空爆弾については射程を45kmに延伸させる構想、1000ポンド爆弾型の開発などが進められています。
■ジャベリン台湾輸出
 台湾は自衛隊の様なカールグスタフさえ第一線に揃っていません。

 アメリカ政府は台湾及びリトアニアへFGM-148ジャベリン対戦車ミサイルの輸出を承認しました。台湾は3900万ドルでジャベリン発射装置40基とジャベリンミサイル360発、リトアニアは5500万ドルでジャベリン発射装置74基とジャベリンミサイル220発を追加取得します。ジャベリンはトップアタック方式で第三世代戦車を撃破可能なミサイルだ。

 台湾陸軍では中国軍の脅威を前に、対戦車火力の深刻な欠如が問題視されており、現在のところ第一線の携帯式対戦車火力には旧式のM-40-106mm無反動砲と戦車への効果が怪しいM-72LAWが主力となっています。106mm無反動砲は第三世代戦車に対し側面の限られた部分を狙う事となり、M-72は軽装甲車に対する限定的な威力しか有していません。
■フェネクへBAAⅡ監視システム
 フェネク装甲偵察車、自衛隊は軽装甲機動車を多用して威力偵察から戦場監視へ転換するのか16式機動戦闘車を用いた威力偵察を行うのか迷いが。

 オランダ軍はフェネク装甲偵察車用にBAAⅡ監視システム188基を7500万ユーロにてヘンソルト社より取得する方針です。BAAⅡ監視システムはレーザー測距装置及び昼間光学TVカメラと熱線暗視装置の複合光学装置です。フェネクはドイツとオランダが共同開発した四輪式装甲偵察車輛、従来の20mm機関砲を持つルクス装甲偵察車を置換えています。

 フェネク装甲偵察車は7.62mm弾への耐弾性能を有しており、伸縮式ポールマストにより偵察を行う車輛です、BAAⅡ監視システムの搭載は旧式化した偵察装備の更新であり、改修作業はドイツのクラウスマッファイベクマン社が対応、センサーは2022年に供給され2023年より改修完了車輛の引き渡しを開始、2027年までにすべての車両を改修します。
■ブラジルLMV-BR受領開始
 LMV-BRは意外に使いやすそうなものですが取得費用とライセンス生産により国内整備できるように運用基盤を構築した場合の費用が気に成る。

 ブラジル陸軍はイヴェコLMV-BR軽装甲車32両を初受領しました。イヴェコLMV-BR軽装甲車はイタリア製軽装甲車両でブラジル陸軍は2019年に63両の取得で契約しており、2023年までに納入する予定です。イヴェコLMV-BR軽装甲車はイギリス陸軍FCLV軽指揮連絡車輛選定でパンサー装甲車として採用される等、広く輸出されている装甲車両です。

 イヴェコLMV-BR軽装甲車のブラジル陸軍納入はセッテラゴアスの現地工場において製造されており、ブラジル陸軍仕様としてエンジンスノーケル等が挙げられる。イヴェコ社では最大186両のブラジル陸軍取得を期待しています。イヴェコ社製装甲車はブラジル陸軍に広く採用されており、六輪型の装甲車であるVBTPは既に480両が納入されています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【防衛情報】フランスラファ... | トップ | 【京都発幕間旅情】千代神社(... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

インポート」カテゴリの最新記事