北大路機関

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【くらま】日本DDH物語 《第五七回》技術的限界,ターター並列と防空デジタルシステム化

2019-06-01 20:10:50 | 先端軍事テクノロジー
■ターターシステムの限界
 戦後日本の空母建造構想、この主軸は艦隊防空の達成というものが挙げられるのでしょう。その上で、艦隊防空の主軸は航空機かミサイルか、という視点は分岐点に位置しています。

 アメリカ海軍によるターターDシステムの開発、ターター並列とデジタルシステム化による決着は、簡単なものでした、思った以上にターターシステムの単純並列が使いにくかった為です。ミサイル誘導レーダーと同数の目標しか同時迎撃できないならば、誘導レーダーを増やせば、その分だけ同時多目標を迎撃できる、即ち高角砲針鼠装備の発想ですね。

 複数のターターシステムへ担当方位を付与し、船体からみて、一定方位はターターA,その隣の方位はターターB,というような運用を構想します、多数のミサイルや攻撃機による飽和攻撃に際しては、複数のミサイル巡洋艦が重複するミサイル防空網を艦隊機動により迅速に構築することで、飽和攻撃を阻止する試みを行ったといい、説得力はありました。

 イルミネータによりミサイルを誘導するビームライディング方式は、識別技術が未整備の時代、同型のターターシステムを甲板上に並べるならば、無論若干の装置位置によりレーダー反射面積の多寡が生じるため完全に同一とはなりませんが、条件は同じなのですからもっとも反射の大きな目標を探せば基本同じ目標を指向することは単純明快な理論です。

 せっかく複数のターターシステムを同一艦上に配備した場合でも、結局複数のターターシステムが同じ目標を照準するのでは意味がありません。目指した技術はイージスシステムのような技術、と説明しますと理解が早でしょう。実際、ターターシステムの並列化は統合指揮システムが必要となり、優先目標の選定と火器管制装置一体化というものが必要に。

 カリフォルニア級原子力ミサイル巡洋艦等は複数の艦隊防空システムを搭載しますが、レイヒ級ミサイル巡洋艦やベルナップ級ミサイル巡洋艦といった通常動力方式のミサイル巡洋艦は、ターターDシステム一基に一本化しています。同時迎撃対処能力は個艦優越性ではなく海軍戦術情報システムNTDSでの艦隊防空統合化を暫定的に充てる事となりました。

 海上自衛隊の巡洋艦構想、ミサイル巡洋艦という艦種はイタリア海軍のヘリコプターミサイル巡洋艦などに見出せるのですが、ターターシステムの並列配置では当時として必要な能力を満たせない問題がありました。しかし、レイヒ級ミサイル巡洋艦やベルナップ級ミサイル巡洋艦、それでは無価値か、アメリカ海軍はどのように考えていたのでしょうか。

 レイヒ級ミサイル巡洋艦やベルナップ級ミサイル巡洋艦よりも、チャールズアダムス級ミサイル駆逐艦のような手頃な防空艦を複数整備した方が合理的なのか、と問われますと一概にはいえず、巡洋艦であれば高出力のレーダーを搭載出来ます。巡洋艦用のSPS-42レーダー等は索敵距離が400kmに達するもので、情報共有により防空中枢艦となった訳です。

 Mk.86射撃式装置、5インチ艦砲用の射撃指揮装置ですが、5インチ艦砲の射程は比較的長く、この照準用に用いるSPG-60はスタンダードミサイルの誘導用にも応用できるものでした。巡洋艦には艦砲を複数装備しているものがあり、スタンダードミサイル誘導用のSPG-62イルミネータに併せてSPG-60も誘導に用いる事で、迎撃能力を高める事も出来た。

 ベルナップ級ではこの点、5インチ艦砲1基とスタンダードミサイルMk15連装発射装置を搭載しており、ターターシステムの同時迎撃能力は3基まで、海軍戦術情報システムNTDSと艦隊情報を共有する事でSPS-42の超長距離目標情報を艦隊全体で共有する事が、空母航空団の防空網を突破する航空飽和攻撃への大きな対処法となるよう考えられました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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