北大路機関

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八月八日は八八艦隊の日【1】2010年発案から大きく変容した2020年代の我が国周辺情勢

2021-08-07 20:10:36 | 北大路機関特別企画
■護衛艦隊,DDH×8&DDG×8
 明日は八月八日です。八月八日は八八艦隊の日とは毎年恒例の八月八日ですが、遡ってみますと海上防衛に関する北大路機関のこの提案はかなり前から続くものでした。

 八月八日は八八艦隊の日、2010年8月8日に北大路機関が提唱しました記念日です。八八艦隊、大正9年度に提案された日本海軍の艦隊建造計画で、最新鋭の戦艦8隻と巡洋戦艦8隻からなる8隻と8隻の艦隊構想です。この八八艦隊一番艦となったのは建造当時世界最大の戦艦である戦艦長門、続いて巨大な天城型巡洋戦艦と加賀型戦艦が計画されています。

 新しい88艦隊が必要だ、この提案は2010年に護衛艦いずも型が22DDHと称されていた頃に提案したもので、護衛艦隊隷下の護衛隊群が4個護衛隊群8個護衛隊を基幹、この8個護衛隊にDDGミサイル護衛艦とDDHヘリコプター搭載護衛艦を各1隻配備し、ミサイル護衛艦8隻とヘリコプター搭載護衛艦8隻の88艦隊を造る必要がある、というもの。

 88艦隊、海上自衛隊では護衛艦しらね型の建造と護衛艦はつゆき型の量産とともに、護衛隊群を護衛艦8隻とヘリコプター8機からなる88艦隊を構築する計画が昭和に示され、平成に入りイージス艦みょうこう竣工とともに一応の完成をみています。ただ、現代の水雷戦隊というべき編成では2020年代の厳しい安全保障環境を乗り越えるのは、極めて難しい。

 護衛隊の事実上の任務群運用、ヘリコプター搭載護衛艦の増強について大きな意義は、航空隊規模のヘリコプター部隊が展開可能である全通飛行甲板型護衛艦、ひゅうが型、いずも型を活用した場合、護衛隊の艦上に航空隊が展開することで、二つの隊からなる群運用が事実上可能となる点で、日本としては作戦単位に余裕を持たせる事が可能となるのです。

 シーレーン防衛、日本の防衛は第二次大戦以前の艦隊決戦のような前時代的なものではありませんが、冷戦時代に想定されていたような短期間での米ソ対決というものでもなく、現在の日中関係を筆頭に安全保障情勢を俯瞰しますと、平時の警戒監視とプレゼンスオペレーションの比重に必要な部隊を捻出できるかが、武力紛争回避を左右し、重要でしょう。

 DDH,ヘリコプター搭載護衛艦の数に余裕を持たせるならば、プレゼンスオペレーションとして遠隔地の友好国との連携強化と、そして日本周辺海域で行われる周辺国空母による示威行動に対する接遇という名の警戒監視を両立可能となりますし、全通飛行甲板型護衛艦は現在、F-35B戦闘機を搭載することで周辺国空母による示威行動に対応し得るのですね。

 F-35Bは第五世代戦闘機であり、しかも全通飛行甲板型護衛艦でも運用が可能、そしてヘリコプター搭載護衛艦の建造は我が国造船能力からはそれほど難しいものではなく、特に船渠の余裕は充分あります。一方、日本へ軍事圧力をかける国にはSTOVL能力をもつ第五世代戦闘機はペーパープランのみであり、この装備は日本の優位性を端的に示すものです。

 日本の経済力はCOVID-19により低迷下にはありますが、-3%と主要国の中では奇跡的な水準に感染を抑えた効力が示されています。おおむね550兆円規模、少子高齢化に終止符を打ち成長軌道に戻すには政治の決断が求められるところですが、この経済規模であれば、昔の八八艦隊計画のような無茶苦茶な計画でない限り、現代では充分実現できるでしょう。

 長門型戦艦二番艦陸奥建造中にワシントン海軍軍縮会議が開始され、建造中の戦艦加賀、土佐、巡洋戦艦天城、赤城の建造中止が決定、救済措置として3万3000t以下の空母転用が認められたため、赤城、加賀は航空母艦となり、土佐は標的艦に、関東大震災で被災した天城は解体されています。しかし、当時の日本の国力から考えると、困難な計画でした。

 戦艦と巡洋戦艦ならばなんとかなりそうに太平洋戦争へ参加した12隻の戦艦を思い浮かべれば錯覚しますが、八八艦隊は最新鋭の戦艦と巡洋戦艦を想定しており、この最新鋭の定義は建造から8年以内、つまり毎年、長門型戦艦よりも巨大な戦艦や巡洋戦艦が計2隻竣工し、これを支える巡洋艦部隊や駆逐艦部隊、航空機も膨大な数の建造が想定されました。

 ワシントン海軍軍縮会議が破綻して日本が八八艦隊を建設していれば、今度は日本の国庫が破綻していたでしょうから、太平洋戦争は経済破綻で回避できたのかもしれません、当時の日本のGDPは算定方法が今と異なりますが148億8600万円、対して長門型の建造費は4400万円ですから、今の感覚ですと護衛艦建造に毎年3兆円を投じるようなものだ。

 大正時代の八八艦隊計画を例に取るならば、毎年いずも型護衛艦12隻、まや型護衛艦12隻を建造するようなもので、中期防衛力整備計画で各60隻、艦艇の寿命は長いですが、普通通りに35年使ったとして、いずも型護衛艦は420隻、まや型護衛艦も420隻、艦名で日本百名山はもちろん三百名山でも足りず、旧律令国の艦名も足りず市町村名が要ります。

 420&420艦隊というような無茶ではなく、提案しているのは現在の計画の延長線上にある新しい88艦隊、これならば日本の経済力でも対応できるでしょう。ただ、2020年代、現在の中国海軍が計画する003型航空母艦などをみますと、新しい88艦隊さえあれば自由で開かれたインド太平洋は永遠、と一概に言えるかは、どうしても不安な要素が否めません。

 周辺国、特に中国軍の現状について調べる機会がありまして、今後の2050年代までを見通した場合、もう一つの88艦隊、というものが必要ではないか、という率直な印象があります。それは別にイージス艦16隻とヘリコプター搭載護衛艦16隻を建造しろ、というものではありませんが、ミサイル防衛などを考えますと、イージス艦の総数は充分と言い難い。

 アメリカ海軍へ全通飛行甲板型護衛艦を本格的に提案する必要があるようにも思います、例えばズムウォルト級駆逐艦を補完する大型駆逐艦として、ひゅうが型と同程度の航空駆逐艦をカリフォルニア級駆逐艦として提案してはどうか、との提案を過去に特集していますが、あれ程高価な水上戦闘艦、3隻で打ち止めとなりましたが、あれよりはDDHが良い。

 SAG水上戦闘群ではタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦の代替としてDDHは機能し得ます、具体的にはSAGの編成は現状と同じ3隻で、DDH仮称カリフォルニア級を中心にアーレバーク級2隻を配置、基本はMH-60R多用途艦載ヘリコプター4機とMQ-8無人ヘリコプター6機を搭載し、必要に応じて航空機の分遣隊をミッションパッケージで収容する方式で。

 F-35B戦闘機の分遣隊を収容でき、甲板係留を含めば飛行隊の収容も可能、MV-22可動翼機を搭載してSPMAGTF危機対応特別目的海兵空地任務部隊をそのまま展開も可能、NSM無人発射機とCH-53重輸送ヘリコプターを積む、AH-1Z攻撃ヘリコプター4機とUH-1Y軽輸送ヘリコプター3機を加えて海兵中隊の空中機動に充てる等の運用も可能となります。

 カリフォルニア級駆逐艦、これは一案ですが、F-35Bにはイージス艦のスタンダードSM-6ミサイル誘導実験が行われており、射程370kmのSM-6は空対空ミサイルを部分的に補完する打撃力です。日米でF-35B運用艦艇を最大限確保し、戦術の基本がF-35B運用DDHの集中、という構図を採る事が、今後の日本周辺における空母対策の理想形と、信じます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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