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陸上防衛作戦部隊論(第五七回):航空機動旅団、9個中隊戦闘群の発揮する機動防衛力

2016-08-23 22:56:19 | 防衛・安全保障
■多用な任務へ対応
 中隊戦闘群/中隊戦闘隊は航空機動旅団連隊戦闘団の基幹部隊となり複数の戦闘群を有機的に運用し広域での機動戦闘を展開し、且つ航空支援による火力と補給により常続的運動戦を展開します。

 中隊規模であっても独立した戦闘能力を持ち、しかもデータリンクによりクラウド化し、確実に旅団全体の戦闘行動を統合して展開する、我が国へ侵攻する敵の視点からは、なにより一個旅団の独立戦闘単位が各連隊3個中隊戦闘群、旅団全体で9単位の部隊が、段列や火砲支援網から独立して、浸透し迂回し包囲し突破し攪乱し、防衛行動をとるのですから、攻めにくくて仕方がない。

 高機動車/四輪駆動軽装甲車14両、軽装甲機動車7両、中距離多目的誘導弾4両、81mm迫撃砲4門、120mm重迫撃砲2門、牽引車と併せ車両数はこれだけで31両、ここに3t半トラック等の支援車両が加わります、人員規模は概ね250名、車両共々輸送艦おおすみ型一隻にまとまって乗艦して、なお余裕があります。こうした意味からも、島嶼部防衛、水陸両用戦にも資する編成として中隊基幹の独立戦闘部隊の意味をあげる事が出来るでしょう。

 中隊戦闘群/中隊戦闘隊と呼称する通り増強中隊ではあるのですが、陸上自衛隊の普通科中隊は元々独自の対戦車小隊と迫撃砲小隊を有し、NATO各国の歩兵中隊にはこの種の迫撃砲小隊や対戦車小隊は元来大隊直轄部隊との位置づけであった為、独立した火力を持つ、本部機能の充実、という意味で、その編成規模から縮小大隊に近い規模の大型中隊という編成を採ってきました。

 この中隊戦闘群/中隊戦闘隊が独立した戦闘を展開できるため、有事の際に一方面を担当する連隊戦闘団の一個中隊というだけではなく、在外邦人救出任務や緊急国際人道支援任務に際し、一つの纏まった戦闘群としての能力を発揮します。中隊戦闘群/中隊戦闘隊は後述する機動戦闘車や特科火砲と施設部隊との連携を連隊戦闘団の一員として担う事となります。

 ですが、例えば中隊戦闘群/中隊戦闘隊は普通科連隊を構成する四個中隊のうち、軽装甲機動車中隊を除く三個中隊が中隊戦闘群/中隊戦闘隊を構成する事となり、各連隊戦闘団は三個中隊戦闘群/中隊戦闘隊、各旅団は九個中隊戦闘群/中隊戦闘隊を隷下に置くこととなります。例えば、機動戦闘車小隊若しくは連隊戦闘団へ配属する機動戦闘車を増強小隊として5両から可能ならば6両で編成できるならば、中隊戦闘群/中隊戦闘隊へ機動戦闘車分遣隊として2両を置くことが可能となる。

 その上で、直接火力支援を可能とする機動戦闘車を分隊若しくは分遣隊として配属出来るならば、あらゆる任務へ独立した戦闘が可能となります。また、連隊戦闘団へヘリコプター隊より戦闘支援に当たる多用途ヘリコプターを前進位置することを通じ、例えば全通飛行甲板を有する輸送艦へ車両航空機を人員と共に搭載可能となることから、戦略展開任務等として輸送艦おおすみ型により同時機動が可能となるでしょう。

 この意味するところは、自衛隊が進める統合機動防衛力整備へ大きく寄与すると共に、我が国周辺情勢への対応能力や抑止力全般も向上する事となります。更に航空自衛隊へ配備されまもなく部隊配備へ進むC-2輸送機へも、機動戦闘車を筆頭に全ての装備が搭載可能です。C-2輸送機の貨物室は搭載能力37t、全長16mと幅4m及び全高4mとランプ長5.5mとの車体規模であるため、例えば現用装甲車の場合、96式装輪装甲車2両と軽装甲機動車1両の総重量34.1tを同時空輸可能です。

 C-2輸送機の貨物室幅4mは81mm迫撃砲を車載する1/2tトラックの全幅1.76mと中距離多目的誘導弾のシステムを搭載する高機動車の全幅2.15mを並列に収容できるため、各3両の計6両をC-2輸送機1機に纏めて搭載出来、弾薬車両等を加え対戦車及び迫撃砲の2個小隊を2機で搭載可能です。

 勿論、各車1tトレーラ等を牽引しますし、集積資材等の空輸も必要となりますので、C-2輸送機1個飛行隊10機に支援としてKC-767空中給油輸送機を2~3機支援に充て、弾薬等2基数を運搬するのが精一杯となりましょうが、更に先行し警備班やフォークリフトや地上支援要員等別枠でC-2輸送機による搬入も必要となりますが、海外派遣任務へも中隊戦闘群/中隊戦闘隊は資する編成といえます。

北大路機関:はるな くらま
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