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【防衛情報】AIAMD陸軍複合防空防衛システムとFAAD-C2前方戦域防空指揮統制システム,LMADIS軽量海兵統合防空システム

2023-01-09 20:00:13 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 今回は防空関連の最新情報を集めてみました。

 アメリカ陸軍はTPQ-53レーダーの対無人機防空システムへの統合実証試験を実施しました。C-UAS対無人機防空システムの構築はこの十年間、無人航空機は民生無人機の高性能化と製造費用の低減により小国の空軍や中堅国の陸軍に大国の空軍がかつて担った航空作戦を限定的でも可能とさせる性能を得ており、新しい脅威として認識されています。

 TPQ-53はロッキードマーティン社が開発した対砲レーダ装置で、従来は砲弾や迫撃砲弾とロケット弾などの飛翔を検知し、弾道計算をおこない発射位置を評定する事が任務でした、このTPQ-53にはMMRマルチミッションレーダー機能が付与されており、またアメリカ軍と友好国同盟国に195基が配備、今回多機能性能が無人機対処用にも応用されたかたち。

 FAAD-C2前方戦域防空指揮統制システム、今回統合実験の対象となったのはTPQ-53は砲兵用システムに統合されていたため、これを防空用のFAAD-C2とも連接することにありました。一方、対砲レーダ装置は一般論として強力な電波発信源となり標定されやすく、音響測定と併用される装備です、敵に発見される対標定の技術について今後の課題でしょう。

 ドイツ海軍はフリゲイトによるレーザー砲発射実験を実施しました。ドイツ海軍は将来の沿岸部などにおける脅威として水上戦闘艦への小型無人機による攻撃などを重大な脅威として認識しており、ARGE海軍レーザー評価試験委員会を設置、MBDA社が開発している高エネルギーレーザー兵器のフリゲイトへの搭載研究を継続的に実施してきました。

 ザクセン級フリゲイトザクセンにおいてドイツ海軍は2022年8月30日、初の実験を実施しています。フリゲイトザクセンでの実験はエッカーンフェルデ湾での発射試験のほか、キールでの改修、シュレンドルフの海軍施設での船舶搭載試験なども実施、レーダーセンサーとの連動と目標識別から捕捉と射撃管制と迎撃までの一連の流れを試験しています。

 高エネルギーレーザーシステムは装備モジュールへの統合化と射撃管制装置や情報処理装置をMBDA社が担当し、レーザー砲システム単体はラインメタル社が担当しています。これは無人機のスウォーム攻撃の阻止、また地上に設置し迫撃砲弾などにも対応可能とのことで、出力を強化したばあい、対艦ミサイルや巡航ミサイルの迎撃も可能とのことです。

 アメリカ陸軍はAIAMD陸軍複合防空防衛システムの実試験に成功しました。試験は11月17日、ニューメキシコ州ホワイトサンズミサイル試験場において実施され、これにはアメリカ陸軍統合射撃研究司令部と第43防空砲兵連隊第3大隊が参加、IBCS統合防空ミサイル防衛指揮通信システムとペトリオットミサイル及びセンチネルレーダーが参加した。

 AIAMDは様々な脅威に対する統合射撃管制という新しいシステムであり、これは従来の巡航ミサイルやロケット弾に短距離弾道ミサイルのほか、極超音速滑空兵器や徘徊式弾薬と無人機攻撃と滑空砲弾など、空からの脅威は多様化しています、これらの脅威に対応するには各種レーダー以外に無人航空機や宇宙からの防空情報包括管理が必要となってきます。

 ホワイトサンズミサイル試験場での実験では巡航ミサイルを擬した目標が用いられ、迎撃にはペトリオットミサイルが用いられました。従来アメリカ陸軍は空軍の絶対的な航空優勢下での作戦運用を念頭としてきましたが、制空権の圏外から例えば沿空域の低空攻撃や宇宙からの攻撃には空軍は万能ではなく、陸軍は防空砲兵部隊の強化を急いでいます。

 アメリカ海兵隊は新型のLMADIS軽量海兵統合防空システムの実証実験を実施しました。これはドローン小型無人航空機の戦場運用での増大という新しい脅威を受けたもので、MV-22オスプレイ可動翼機に車両ごと搭載できる近距離対空レーダ装置を複数同時運用し、沿空域と呼ばれる非常に低い高度から中高度までを警戒するという野戦防空システムだ。

 ポラリス特殊戦車両が、今回このLMADISの端末車両として採用されています。ポラリスは所謂バギータイプの小型車両で日本でも市販されているものですが、海兵隊はグロウラー軽機動車のようなオスプレイに搭載できるが格納庫数cm幅しか余裕がなく乗降に長時間を要する車両に代えて多用していて、また空軍特殊作戦部隊などでも使用しています。

 RPS-42レーダーとCM262U複合光学監視装置、そしてスカイビュー電子妨害装置、AN/PRC-158広帯域無線機をポラリスの車体に搭載しています。これらの装備は海兵隊の将来戦闘部隊構想であるフォースデザイン2030において、無人航空機能力と対処能力及び電子戦能力の強化として示されていて、実証実験は第2海兵航空団が支援しています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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