■消防出初式で見た海上保安庁船艇
昨日展開した名古屋市消防局消防出初式であるが、消防車両に関しては手元に資料が少なく、幾度かに分けて掲載したい。こうした中で、今回は昨日見た第四管区名古屋海上保安部の二隻を掲載したい。
写真は第四管区名古屋海上保安部に所属するヘリコプター巡視船“みずほ”で、“みずほ”型の一番船、観艦式で撮影した“やしま”と同型である。総トン数5259㌧、常備排水量5317㌧、全長130㍍、幅15.5㍍で、ディーゼルエンジン二基により18200馬力を発し、速力は23ノット、35㍉単装機銃、20㍉多銃身機銃各一基を搭載、この他ベル212型ヘリコプターを二機を搭載し、1986年に就役した大型巡視船である。
ちなみに、護衛艦などを表記する基準排水量や満載排水量と巡視船や船舶一般を説明するときに用いる総トン数は別物である。排水量とは英語でdisplacement,即ち、船舶を巨大な水槽に放り込んだ場合どのくらいの水を押しのけるか(水槽から排水されるか)により計算するので、実質的には目方である。対して船舶一般に用いられる総トン数とは船内の各種用途に使用できる空間容積をもとに算出する為、船舶の重さとは関係が無い。
さて、この“みずほ”型は国連海洋法条約に基づく新海洋秩序とSAR条約(海上における捜索及び救助に関する国際条約)へ1979年採択、1985年加入に際してヘリコプターを常時運用可能な複数機搭載し、求められる警備救難能力の拡大、特に200浬排他的経済水域以遠の広大な海洋を捜索する目的で建造されたもので、海上保安庁が13隻保有するヘリコプター搭載巡視船(内二機搭載型は3隻)の内の一隻である。
第四管区海上保安本部には、名古屋海上保安部(衣浦・蒲郡・常滑海上保安暑)、四日市海上保安部、尾鷲海上保安部、鳥羽海上保安部(浜島分室)にヘリコプター巡視船1隻、巡視船2隻、巡視艇14隻、その他8隻を保有しており、この他、第四管区情報通信処理センター、名古屋港海上交通センター、伊勢湾海上交通センター、伊勢湾航空基地(明野駐屯地に隣接)を以て、東海三県(内陸の岐阜も管轄に含む)の伊勢湾内、熊野灘など三重県太平洋沿岸、愛知県太平洋岸の警備救難にあたっている。
さて、“みずほ”ま、まさに偶然、文字通り朝駆けの成果(
といいつつもあと五分はやく名古屋港に到着していれば正面から“みずほ”の船橋を捉えたもっといい写真が撮影できたのだが・・・)といえるが、もう一隻は同じく名古屋海上保安部所属の消防艇“しらいと”。10万重量トン級タンカー火災への対応を想定して建造された“ぬのびき”型消防艇の四番艇で、総トン数92㌧、満載排水量89㌧、速力14ノット、航続距離は180浬である。
“ぬのびき”型の最大の装備は機銃などではなく、毎分2000~6000?の放水力を有する各種放水銃4基で、この他に自船が被災しないよう、自衛用噴霧ノズル、また散乱した油などに対応する油処理剤散布装置を搭載しているが、同型船は1974~1981年に10隻就役したものの老朽化により既に6隻が新型の“よど”型消防巡視艇と交代しており、1975年に就役した写真の“しらいと”もそろそろ退役の時期を迎えつつある。
海上保安庁の巡視船や巡視艇は大なり小なりの放水装置を搭載しているが、こうした消防艇はそれを遥かに凌駕する能力を有する。
なお、C.ジョニー氏によれば、例年であれば名古屋市消防局が運用する二隻の消防艇が出初式には海上パレードを行うとの事だが、今回は内一隻の“ぎんりゅう”(写真左)だけで、代わりに海上保安庁の“しらいと”が出てくるのは珍しいとのこと。
小生は当初、もう一隻の消防艇がドック入している為海上保安庁から“しらいと”が来たのではないか、と思ったが、もしかしたらば名古屋市消防局が間もなく退役するであろう海上保安庁の“しらいと”へ、組織は違えど同じ任務を受け持つ消防艇の32年間という任務の完遂を祝い、最後の晴れの場として消防出初式へ参加を呼びかけた、とも考えられるであろう。
HARUNA
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