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【防衛情報】フィリピン軍特集-メルカヴァ戦車橋導入と広がる憶測にAW-159対潜ヘリコプター初度作戦能力

2022-09-26 20:01:09 | 防衛・安全保障
■特報:世界の防衛,最新論点
 フィリピン軍の進化は多種多様な装備調達に進んでいる一方で2000年代初頭のナイジェリア軍やケニア軍のように種類だけが増えすぎるのではという関心と共に見守っています。

 フィリピン軍はイスラエルよりメルカヴァMk4-AVLB戦車橋2両を導入しました、これは近年フィリピン軍等で進められる機械化部隊再編により、戦車部隊の半世紀以上ぶりの再編など重装備が増加した為の陸軍工兵機材強化の一環です。なお、車体だけとはいえイスラエルがメルカヴァシリーズを海外へ輸出するのは今回が初めての事例となりました。

 しかし、メルカヴァMk4派生型の戦車橋導入には憶測も浮かんでしまいます、エンジン系統などはメルカヴァMk4そのままであり、整備補給面でメルカヴァの運用能力を得る事となり、将来的にメルカヴァMk3-BIZ等を中古で取得する道も開けます、一方、レオパルド1派生工作車などはレオパルド1採用国以外に採用されるなど、何とも言えぬ一面もある。

 フィリピン軍は現在、装甲戦闘車に砲塔を搭載した軽戦車部隊を運用していますが、かつて運用していた戦車はM-4戦車であり、現在の第四世代戦車は勿論、第一世代戦車や第二世代戦車の運用経験もありません。これは考え過ぎともいえるのですが、フィリピン軍は中古のメルカヴァ戦車を視野に含めているのか、増強急ぐフィリピン軍の関心事でしょう。
■VBTP-MRグアラニ
 自衛隊の96式装輪装甲車に見慣れているとやけに豪華に思えてくる選択肢と思う。

 フィリピン軍はブラジル製VBTP-MRグアラニ装輪装甲車28両を導入します。フィリピン軍は少なすぎる装甲車を補強するべく28両を4700万ドルで取得する方針です。この導入計画はイスラエルのエルビット社が仲介しており、近年のフィリピン軍は装輪自走榴弾砲や工兵車両にミサイルシステムなどイスラエル防衛産業との防衛協力を強化しています。

 VBTP-MRグアラニ装輪装甲車はブラジル製ですが元々の設計はイタリアのイヴェコ社でイヴェコラテンアメリカ社がEE-11ウルツ軽装甲車を置換えるブラジル軍次期装甲車調達計画の為に現地防衛企業と合弁会社として創立しています。VBTP-MRグアラニ装輪装甲車は様々な派生型が在りますが、フィリピン軍は六輪型を導入するとのことでした。

 フィリピン軍の装甲車部隊は元来、治安作戦や対ゲリラ戦闘を想定していましたが、中東からの武装勢力浸透により発生したマラウィ騒擾と、近年の中国軍軍事圧力を背景に正規戦への対応能力強化が必要と認識されており、VBTP-MRグアラニ装輪装甲車導入もその具体的施策の一つです。ただ、フィリピン軍は15万名規模、近代化には時間もかかります。
■Mi-17ヘリコプター16機
 この報道の少し後にアメリカとの間でCH-47ヘリコプター導入の交渉が本格化しました。

 フィリピン軍はロシアから導入予定のMi-17ヘリコプター16機の調達計画を正式に破棄しました、これは7月27日にフィリピン当局者が発表したもので、フィリピン政府は輸送ヘリコプターの増強を計画しているものの、ウクライナ戦争後のロシア装備調達はアメリカ経済制裁の影響や、ロシアによる報復により定期整備体制の不安などが考えられるため。

 ヘリコプターの調達はフィリピン政府の前大統領であるドゥテルテ大統領が任期満了直前の6月30日にロシアンヘリコプターズ社と契約したものをマルコス新大統領の就任後に急遽契約破棄したかたち。ただ、マルコス新大統領は中国等の脅威に対し防衛力強化の方針を堅持しており、7月25日に行われた初の施政方針演説においてもこの点を強調している。

 Mi-17ヘリコプター16機は2億2700万ドルで調達する計画、邦貨換算で302億円となります。今回の調達破棄はアメリカ国務省との調整も行われたとの事ですが、この302億円は機体規模は違えど日本のスバルUH-2であれば25機分となり、フィリピンは契約破棄となったベル412代替にもUH-2を候補の一つに挙げ、Mi-17契約破棄後の去就に注目です。
■AW-159艦上航空運用能力
 ヘリコプターによりソナーを機動運用する研究は第二次世界大戦中からあるのですがフィリピンとしては艦上対潜航空元年だ。

 フィリピン海軍は8 月 9 日、フリゲイトホセリサールへのAW-159艦上航空運用能力の初度作戦能力獲得を発表しました、フィリピン海軍はアグスタウェストランド社の支援で要員を要請しています。ホセリサールは2020年に韓国で建造されフィリピン海軍に引き渡されている水上戦闘艦でフィリピン海軍としては初めて取得する水上戦闘艦でもあります。

 AW-159はフィリピン海軍が史上初めて導入する対潜航空機で、2016年3月にアグスタウェストランド社との間で2機の取得と要員教育支援に関する1億ユーロの契約を結んでおり、機体は2019年にフィリピンへ引き渡されています。なお、ホセリサールでの航空機発着には蜂の巣状の甲板に機体から接続装置を差し込むハープーン方式が採用されています。

 ホセリサールはフィリピン海軍が韓国より導入したホセリサール級フリゲイトの一番艦で満載排水量は2600t、76mm艦砲や韓国製SSM-710K対艦ミサイルとミストラル簡易防空ミサイル等の運用能力と共にヘリコプター格納庫を有しており、また艦上には将来発展用にVLS8セル分の区画が配置されてて、乗員は65名、小型ながら有用なフリゲイトです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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