goo blog サービス終了のお知らせ 

北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】潜水艦特集,仏原潜火災と流行禍下米原潜建造及び新装備開発と中国秘密基地暴露

2020-09-29 20:13:13 | インポート
■週報:世界の防衛,最新8論点
 今回の防衛情報は各国潜水艦情勢を中心に最新論点を纏めてみました。写真はいろいろあって全て海上自衛隊潜水艦で代用です。

 フランス海軍は最新攻撃型原子力潜水艦シュフランの兵装システム試験を七月下旬より開始したとのこと。シュフランはシュフラン級攻撃型原潜の一番艦で、出動公試中となっています。潜航試験は四月下旬に完了、この試験では母港予定地のツーロン軍港に展開した上で兵装システム、ソナーと魚雷及びミサイル、また静粛性の確認などを実施している。

 シュフランの試験は若干前倒しされているとのことで、フランス海軍は2030年までの間にシュフラン級攻撃型原潜6隻を導入し、現在運用中のリュビ級攻撃型原潜を全て置換える計画だ。前倒しとなった背景には、六月に発生したリュビ級原潜ペルルの火災事故が考えられる、造船所での火災であり死者は出なかったが船体前部が溶け落ち修理不能となった。

 リュビ級攻撃型原潜はフランス海軍初の攻撃型原潜で、ドゴール政権時代に核戦力整備の観点から戦略ミサイル原潜建造を優先した為に攻撃型原潜の建造が遅れた、安価に収めるべく過小の船体であり、この反省からシュフラン級は水中排水量5200tと比較的常識的な船体構造を有している、年間270日間の作戦行動が可能となり海軍戦略投射能力を高める。
■コロナとニューポート造船所
 世界最強の潜水艦部隊を支えるアメリカの潜水艦産業も世界を覆うCOVID-19コロナ禍下の影響は逃れられません。

 ニューポート造船所は新型コロナウィルスCOVID-19影響により65%しか工員が集まらずヴァージニア級原潜などの建造に影響が生じているとのこと。COVID-19の感染拡大がアメリカにおいて最も深刻であった四月と五月には同造船所を運営するインガルス社が自由休暇制度を採用した為、工員出社率は50%にまで低下し建造が大きく停滞したという。

 ヴァージニア級原潜はロスアンゼルス級攻撃型原潜を置き換える最新の攻撃型原潜です。ニューポート造船所ではこの他、ジェラルドフォード級原子力空母の建造を進めると共に留守アンゼルス級攻撃型原潜やニミッツ級原子力空母の定期整備も実施しており、同造船所では熟練工員を優先事業に配分した事で複雑な建造工程が更に悪影響を受けたとのこと。

 中国海軍の脅威増大を背景に、アメリカ海軍はヴァージニア級原潜の建造を急いでおり、海軍の要請により現在は建造期間を従来の70カ月から60カ月へと短縮する工程を実施、この変更とCOVID-19感染拡大が重なり、複雑な計画が更に複雑化したとのこと。ニューポート造船所はヴァージニア級に関する建造費増大により1億1100万ドルの損失を見込む。
■SEAL用特殊潜水艇新型
 特殊潜航艇という響きは日本では特攻兵器の印象を与えてしまいますが本来は特殊部隊運搬用です。

 アメリカ海軍は七月、海軍特殊作戦部隊SEAL用特殊作戦潜水艇SDV-Mk.11の洋上試験を開始しました。これは原子力潜水艦から運用され沿岸部への特殊部隊展開に用いられるものです。現在運用されているSDV-Mk.8と比較した場合、航続距離が大幅に延伸すると共に潜望鏡等を備え錯綜海岸地形や峻険沿岸部での作戦能力が高まるものとされています。

 SDV-Mk.11の要目は未だ発表されていませんが、SDV-Mk.8は1983年に運用開始、乗員2名とSEAL要員4名を輸送し、水中排水量17tで全長6.7m、リチウムイオン電池を動力としていますが発電能力など再充電は原子力潜水艦に依存するとのこと。最高速力は6ノットで航続距離は33kmで人員を搭載しない場合は67kmであり12時間の行動が可能です。

 SWCS浅海域戦闘潜水艇とも称されるSDV-Mk.11の試験はハワイ沖にて実施されています。この建造はアラバマ州のテレダインブラウン技術会社により1億7800万ドルで開発契約が為され、推定される水中排水量は20t程度といい、輸送能力は同程度であるといいますので大型化部分は航続距離延伸や船体強化に充てられ、2024年に完成するとのこと。
■ブラジル初の国内建造潜水艦
 ブラジル海軍は航空母艦はじめ中古ながら洗練された装備体系を構築していますが、このほど最新鋭潜水艦の話題が入りました。

 ブラジル初の国内組立潜水艦リアチュエロが初の出動公試を開始した、ブラジル国防省が発表しました。PROSUBブラジル潜水艦開発計画として進められる潜水艦、初の公試は8月12日に実施され、ブラジルのマディラ島造船所から沖合15kmの海域で実施されています。既に施設付近での全没試験は2019年11月20日に実施、完成に近づいています。

 リアチュエロは水中排水量2000tでAIP方式、20ノットで水上航続距離は12000km5ノットで1050kmフランスとスペインが共同開発したスコルペヌ級通常動力潜水艦のブラジル仕様で、元々フランスはスコルペヌ級を自国用に開発していましたが、戦略ミサイル原潜計画の予算拡大により建造費が不足したため、輸出用として設計を継続したものです。

 ブラジルのセペチバ造船所において建造されるリアチュエロは2012年に起工式を経て公試まで既に8年間を要していますが、ブラジル海軍はスコルペヌ級潜水艦4隻を建造中であり、海軍はこの費用に99億ドルを投じています。リアチュエロは現在ブラジル海軍が運用するドイツ製209潜水艦4隻を置換える構想で、性能は倍になるとして期待されています。
■VLWT超軽量魚雷計画
 潜水艦の魚雷搭載能力を聞きますとそれを使い切ったらばどうすれば、という素朴な不安に見舞われますがこのほどこれを解決する新しい装備が生まれました。

 アメリカ海軍ヴァージニア級攻撃型原潜用VLWT超軽量魚雷計画がノースロップグラマン社により進んでいます。これは軽量急速打撃兵器計画の一環として進められる装備で324mmの短魚雷となっていますが、ヴァージニア級原潜には533mm魚雷発射管が搭載され、一般に潜水艦は長魚雷を投射する為に533mmから650mmの魚雷発射管を採用します。

 ヴァージニア級攻撃型原潜は既に19隻が就役しており老朽化が進むロスアンゼルス級攻撃型原潜を置き換えています、当初は高性能のシーウルフ級原潜を量産する計画でしたが対潜性能に特化しすぎたシーウルフ級は使い難く量産は3隻で終了しました。他方シーウルフ級は8門の魚雷発射管を有していますがヴァージニア級の魚雷発射管は4門のみです。

 VLWT超軽量魚雷は長魚雷ほど射程を有さないものの小型であり多数を投射できる運用を想定しています、その任務は潜水艦攻撃や水上艦等への攻撃を想定すると共に魚雷防護手段として敵潜水艦が投射した長魚雷への迎撃用にも用いられる用途も想定しており、潜水艦への実戦配備は2024年を目処として現在、水上戦闘艦からの評価試験を実施中です。
■衛星写真に写った中国秘密基地
 中国軍は爆撃機はじめ大半の戦略兵器を地下に隠す事で有名ですが、商用画像衛星に偶然その様子が映り込みました。

 093型商級攻撃型原子力潜水艦とみられる艦影が南シナ海の海南島楡林海軍基地の地下施設につながるトンネルに入る様子が人工衛星から撮影されました。写真は米衛星画像企業プラネットラブズ社が撮影しSNS上で21日に発表されました。商業衛星が雲のない日に適切なタイミングで上空を通過し撮影出来たのは非常に稀有と僥倖といえるでしょう。

 商級攻撃型原子力潜水艦は水中排水量7000t、650mm魚雷発射管を搭載するほか、後期建造艦はVLSを搭載している可能性も。中国海軍が運用する攻撃型原潜では最新型で現在6隻が運用、前型の漢級攻撃型原潜が静粛性などで重大な問題を抱えていた事からロシアよりヴィクター3型攻撃型原潜の技術情報を入手し建造され2006年より竣工が始りました。

 海南島楡林海軍基地の潜水艦施設は地下に置かれています、これはスウェーデン海軍のゴトランド島における潜水艦地下施設よりも大きく、またアメリカやロシアの潜水艦施設は地下には置かれていません。この施設は中国の航空優勢への懸念の表れで、中国軍ではH-6爆撃機等、主要な施設を地下に配置していますが、このほどその一端が露わとなりました。
■タイ海軍の中国潜水艦取得延期
 タイ海軍が中国から導入する元級潜水艦取得が延期されるとのこと、COVID-19新型コロナウィルスによる経済後退が原因です。

 タイ海軍の中国製潜水艦導入計画が新型コロナウィルスCOVID-19パンデミックによる経済破綻の為に延期されるとのこと。これは8月31日にタイ国防省が発表したもので、パンデミック下の8月に中国から新型潜水艦2隻を225億バーツ、日本円で770億円による契約を予定していました。同型潜水艦は既に2017年に3隻が購入され、現在建造中です。

 元級潜水艦が輸入される計画で、通常動力型としては中国最新、AIP推進方式です。潜水艦の導入計画はタイ政府によれば一年間の延期を予定していますが、軍クーデターによる非合法政権が続く中でCOVID-19パンデミックによる経済破綻は、全くない休業補償と感染対策と無関係の公共事業継続に伴う増税政策からタイ世論は厳しい反応を示しています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« アルバニアとアゼルバイジャ... | トップ | 新幹線国際輸出研究【2】単線... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

インポート」カテゴリの最新記事