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【京都幕間旅情】伏見稲荷大社,穀倉地帯での戦争と火山の冬-古典文学が伝える日本史における飢餓飢饉の記録

2022-06-08 20:22:25 | 写真
■吾妻鏡と明月記の記述
 古典といいますと豪農令嬢ヒロインの京都アニメーションな作品を思い出されるかもしれません、しかし今回は氷菓ではなく冷夏の話題について。

 伏見稲荷大社に五穀豊穣を祈りたい背景には、前述の穀倉地帯でのウクライナ戦争と南洋のフンガトンガフアパイ火山大規模噴火とともに、我が国においても有数の穀倉地帯である三河平野は明治用水の取水施設破損の影響で稲作が出来ず、影響が見込まれるため。

 方丈記が過去の飢饉について記した事は示しましたが、飢餓難民を救う余力は無く燦々たる状況となった鴨川の河原には累々と飢餓の帰結が横たわり、御霊信仰からでしょう、僧侶が梵字を額に記してせめて仏縁を亡者と結ばせたという、非常に悲しい歴史があります。

 鴨長明の方丈記に過去の飢饉に関する記述がみられる事は前述しましたが、飢饉の歴史もまた数多ある事はその前に触れました、寛喜の飢饉が1230年から三年間にわたり日本国土を蹂躙しますが、こちらについては藤原定家が明月記に異常気象について記していました。

 藤原定家は初夏に本来は暑くなり避暑地への段取りを考える頃に特に感じるほどの寒い風が吹き、衣替えの後だというにも拘らず綿衣を取り出して、恰も秋のようだと記しています。そして七月には霜が降りた、と記しているのですね。完全な異常気象といえるもの。

 明月記に記された情勢は七月の霜という異常気象は京都だけでなく諸国でも生じている事が記され、八月の気象も冬の様になりまして九月には諸国の作付が凶作の徴候を示していると京都に伝わった為、藤原定家も急ぎ庭木を伐採し麦の種を撒いたとしるしていますが。

 吾妻鏡、同じ時代に記されました古典文学にお馴染みの文中には八月に大風が吹いたとありまして、台風被害があったのかと考えさせられます。そして吾妻鏡には旧暦の六月、つまり七月下旬にあたるのですが、美濃や武蔵でなんと雪が降ったと記されているのですね。

 寛喜の飢饉、冷夏により深刻な不作が予見され冬にも育つ麦が撒かれたのですが、今度は秋に暖冬の気配が来まして京都には諸国で撒かれた麦が早くも冬の内に結実しているとの知らせが届いた、こう明月記にあり、これには流石の藤原定家も事実かを疑ったという。

 暖冬は麦に異常成長を促しますが結実が早過ぎまともに麦粒が残らなかったといい、麦も不作となりました。暖冬とともに今度は暮れの頃に桜が咲き始めたという。もっともここ梅花の話がありませんのでこれは冬に咲く十月桜を異常開花と疑ったのかもしれませんが。

 異常気象に間違いが無いのは、今度は冬に蝉が鳴きはじめ夜には蟋蟀が啼くという要するに季節の逆転を示す異常が庶民を不安がらせたとされる、確かに今の視点でも冬に蝉が鳴いていれば地球温暖化ここに極まれりと駅前でデモが連日おこなわれるようなきがします。

 二年間の飢饉、何が起きたかといいますと冷夏の他方で筍が豊作であったことから山野で鼠が異常発生し穀物備蓄を襲い、二月には飢餓難民が押し寄せる事となります。ただ夏ごろには収容しきれず京都に流入した飢餓難民が大量に死亡し、地獄のようになりました。

 飢饉は翌年の秋に一旦落ち着いた冷夏とともに稲作が収穫に至りまして、それでも種籾の不足や水不足から耕作面積は半分程度に落ち込んでしまったとされます。厳しい表現ですが、前の夏に大量の餓死者が出た為に食糧需要が低下していたのですが、それでも飢饉は。

 霧島火山が火山爆発指数4、インドネシアのサマラス火山がこの頃に火山爆発指数6の巨大噴火を起こしていますので前駆火山活動を含め火山の冬として影響したのかもしれませんが、歴史には飢饉が記されています。再来しないよう、改めて手を合せたくなるのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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