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【日曜特集】富士学校創設63周年富士駐屯地祭【07】訓練展示状況開始(2017-07-09)

2018-06-03 20:07:01 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■富士教導団訓練展示発動
 富士学校創設63周年富士駐屯地祭、今回も写真と解説が外れている点、重ねてどうかご容赦を。

 12式地対艦誘導ミサイルシステム、88式地対艦誘導ミサイル,こんな強力なミサイルはロシア軍から戦術核で狙われる可能性もあるので、坑道掘削装置により地下に掩砲所を建設して地下に配置する事となっているのです。これは一部方面施設団に配備されています。

 自衛隊では南西諸島へ配備を重視している、熊本の健軍駐屯地に最初に配備されており、加えて新設される奄美駐屯地へも配備されるとの事、更に例えば那覇駐屯地と石垣駐屯地に配備したならば、尖閣諸島を含めミサイルの射程に収める事が出来る、日本には心強い。

 特科教導隊第303観測中隊、遠隔操縦観測システムFFOS等を装備しています。後方の1t半トラックは遠隔操縦観測システム簡易追随装置、FFOSはGPSに頼らない自律運用を重視しすぎ、システムが巨大化しすぎ、支援車両6両と大袈裟な支援が必要となっている。

 FFOSは50km先の目標を観測する無人偵察機ですが、無人機、同統制装置、追随装置、簡易追随装置、無人機発射装置、機体点検装置、機体運搬装置、と大型化しすぎています。ただ、GPSや衛星通信システムへ過度に依存する事は必ずしも良策と云えない事も確か。

 広範囲の電子妨害システム、ロシアのムルマンスクBNのような強力な電子妨害システムが開発されている今日、自律飛行とGPS依存度への難点が強調されますが、せめてここまでシステムが巨大化するならば無人機を10機程度同時管制できる能力が欲しいですね。

 ちなみに2015年にOH-1不時着水事故が発生して以降、検査飛行以外のOH-1観測ヘリコプターの運用が停止されているというお話、一旦飛行再開が行われたものの別の事情で予防着陸事案があり、自衛隊観測ヘリコプターはOH-6DとこのFFOSのみとなっています。

 JMMQ-M5気象観測装置や対砲レーダ装置JTPS-P16が続く、JTPS-P16は40km圏内の複数大隊程度の部隊より投射される同時多数の砲弾を 同時に補足追尾し射撃位置を評定することが可能で、30から60までの砲弾を自動処理できる、ロケット弾も追尾できる。

 対砲レーダ装置JTPS-P16は、車両そのものの費用も高いのですが、その情報処理装置と火砲への情報伝送装置が同程度に高い費用を要します。逆にこの重要性を予算面で認識しているかどうかが、砲兵近代化への立場というものを明確に示すものだといえるでしょう。

 JTPS-P16は砲弾さえ探知する強力な電波を放出するため、窪地等で電波を敵に標定されないよう配置すると共に、地中マイクロフォン等で敵の砲撃を感知した瞬間に電波を発します。これは音響標定といい、これだけでも大まかな敵火砲の位置を探る事が出来ます。

 音響標定は一切電波を出さず、複数のマイクロフォンへ伝播した音響の所要時間から計算し射撃位置を探るもので、ロケット弾を標定出来ないのですが、対砲レーダ普及前は対砲兵戦の標定における主流でした。自衛隊では音響とレーダーを併用し二重の確度を目指す。

 JMMQ-M5気象観測装置は湿度や風速などを地上観測装置とゾンデ追尾装置により精密観測します、気象というものは長距離砲撃にはかなりの影響を及ぼすので気象観測は重要な任務です、何しろ一切誘導しない砲弾を砲口から発射し、30km先を狙うのですから、ね。

 特科部隊の縮小と共に情報中隊から化学科部隊へ異動する事例もあり、これは化学剤散布等の分散状況を把握するためにも気象観測が重要である為です。しかし、火砲が縮小される分、一門当たりの責務は増大するのですから情報優位の質的向上の施策も必要でしょう。

 教育支援施設隊の観閲行進、陸上自衛隊には施設学校として、施設科の戦闘工兵任務や建設工兵任務の戦術研究や幹部教育を行う期間が茨城県の勝田駐屯地にありますが、富士学校は普通科部隊の陣地攻撃や機甲科部隊の通路啓開等に施設科部隊の支援は不可欠です。

 特科部隊の陣地構築にも必要ですので独自の施設科部隊に教育支援施設隊を有しています。富士教導団には衛生隊や後方支援連隊に当たる部隊はありませんが、東富士演習場ではこの施設隊を加える事で独立した運用を行う事が出来る。逆に、こうしないと演習できない。

 施設科部隊は、考えてみますと普通科連隊にも施設作業小隊が隷下に置かれているように、隊員が施設科隊員が居なければえんぴでせっせと陣地構築し、対戦車ミサイル用の掩体を掘るだけでも実に長時間かかる。ここで施設科部隊が支援したらば掩体など一発で掘れる。

 もともと蛸壺陣地として一人用の個人掩体が組織的に運用されたのは1861年の南北戦争ですが、蛸壺に個人携行品と予備弾薬や糧食を備蓄するには限度があり、蛸壺陣地と横につなぐ戦術が一般化します、これが塹壕、これ以前にも攻城用の通路としては存在した。

 野戦築城として散発的に掘られていた塹壕が陣地として定着してゆきました。従来、工兵の任務は攻城戦における敵城塞の破壊という基本があり、これを排除するために攻城戦は野戦へと変容してゆきました、逆にこの頃に包囲された場合単独で撃退が難しいとされた。

 この為、攻城戦では工兵の支援に当っていた砲兵が野戦では野戦砲兵として威力を発揮し、その上で地域制圧を行う歩兵と機動打撃力としての騎兵との連携が行われていたのですが、陸戦技術と戦術変容は此処に変革を強いた。攻城技術の発展が籠城を厳しくした訳ですね。

 工兵は銃という第一線火力の性能向上とともに再度野戦築城という任務、この野戦築城を踏破する障害処理という形で意義を深めていったわけですね。この技術変化の戦術への影響は時として生じるものでして、歩兵や騎兵に砲兵と工兵が順次主役を変えてゆきました。

 攻城戦闘主体の時代には、現在のような歩兵主体の時代ではなく、歩兵より工兵が重視されていた時代がありますし騎兵優位時代もありましたね。騎兵主体の時代は主兵装が弓矢の時代で機動力と相乗させる事で優位性を確保できましたが、小銃火力発展の前に潰える。

 92式地雷原処理車、爆導索という爆薬を連結させたロープをロケット弾で遠方に投射するもので、爆薬24個を連結しています。地雷は特に対戦車地雷などは、自衛隊が用いる92式対戦車地雷で爆破したならば高圧のジェットが2000mまで吹き上げる、というもの。

 この高圧ジェットを戦車の底部に叩きつける事で戦車を破壊します。このため、地雷原処理車は幅5m、長さ200mの地雷原を強力な爆薬で一挙に誘爆させ、通路を造りだします。略称はMCVといいますが、このMCV,16式機動戦闘車のMCVと呼称が被ってしまった。

 91式戦車橋、74式戦車の車体に戦車用架橋装置を搭載したもので、20mの橋梁を架橋させることができます。90式戦車を含め全ての装備品が通行可能で、北部方面隊を中心に装備しています、河川を越えるというよりは対戦車壕などを突破する際に用いる装備品です。

 戦車部隊に必要な装備です、このため装備数は30両ほどではありますが、この他に自衛隊には81式自走架橋柱や07式機動支援橋が装備されています。こちらのほうが橋長は大きいのですが、しかし架橋に時間がかかり、戦車部隊の攻撃前進等には、不向きの装備です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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1 コメント

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自衛隊観閲式をPCで見て (松山章)
2018-06-09 21:14:15
いつも楽しみながら観閲式の映像を見ています、20代のとき一度富士演習場での演習を見ましたが、本当に1人、1人が良く訓練をされていると感じています。今、大変な時期ですが、ガンバッテください。77歳の1ファンより。
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