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新防衛大綱とF-35B&EA-18G【17】F-35Aに至った回想のF-X選定と珠玉のF-X候補

2018-06-04 20:13:32 | 先端軍事テクノロジー
■F-15J後継機を展望する
 新防衛大綱とF-35B&EA-18G、F-15J後継機を展望する視点からF-X選定を振り返ってみましょう。

 F-35B戦闘機の方が主力戦闘機として一種理想的な要素があったのではないか、F-35Bの難点は戦闘行動半径について、F-35Aよりも小さい点です。この要因には垂直離着陸に必要なリフトファン部分を追加しているために搭載燃料総量が減少したという事情があるのですが、F-35Bの設計は垂直離着陸能力の意義を航続距離よりも大きく見た為でもある。

 F-35Bであれば、例えば九州南西諸島の防空について、新田原基地や那覇基地、鹿屋航空基地や鹿児島空港、嘉手納基地や普天間飛行場の他に様々な地方空港や誘導路が確保されているならばヘリポートを代替滑走路として運用する事も出来たでしょう。また、専守防衛の観点から戦闘行動半径が小さいほうが他国へ脅威を与えないという建前も強調出来る。

 F-15J戦闘機と比較しますと、実は戦闘行動半径は空軍型のF-35Aであっても小さくなっています、もともとF-15Jの原型であるF-15C戦闘機が制空戦闘機として、敵制空権に乗り込み敵迎撃戦闘機を全て撃墜する事で制空権を奪う、という年頭の戦闘機ですので、広大な戦闘行動半径を有しており、F-35Aはそこまでの運用能力は求められませんでした。

 F-35A戦闘機とした背景は、喫緊のF-4EJ改戦闘機、原型のF-4が初飛行を行ったのが1959年であり、流石に老朽化が進み過ぎているためという要求と同時に、将来的に初期型のF-15Jについても代替を行うという構想があった事は確かです、逆に現在に42機で製造を終了する予定ならば三菱FACO,最終組み立て施設への設備投資を行う利点がありません。

 F-15E戦闘爆撃機、航空自衛隊が純粋に広大な戦闘行動半径を求めるのであれば、多少F-15J戦闘機と互換性が期待でき、使い勝手もよかったでしょう。全く別の機種といわれるF-15CとF-15Eでも整備要員の相互人事が実際米空軍において行われていますので、戦闘行動半径だけを考えるならば次期戦闘機選定ではF-35AよりF-15Eに説得力がありました。

 F-X選定の候補機は欧州共同開発のEF-2000,ボーイングF-15E等が提示されていましたが双方ともに第4.5世代戦闘機であり、将来戦闘機としてのステルス性には限界があります、第4.5世代戦闘機もデータリンク能力等は伍する水準に引き上げられるのですが、ステルス性は後付けできません。第五世代戦闘機としての能力を重視し、F-35Aが選定されました。

 F/A-18E戦闘攻撃機とF-35B戦闘機のハイローミックスを念頭に当面はF-15J戦闘機とF-35B戦闘機のハイローミックスを行う、理想的な運用体系はこの方式であったのかな、と考えています。無論、ハイローミックスのローに戦闘機のロールスロイスとよばれたF-15を提示する事は若干違和感を覚えないでもないのですが、ハイろーミックス、ということで。

 F-15Jはまだ運用寿命が残っていますが、機種そのものの寿命を忘れてはなりません。F-15J戦闘機はアメリカ空軍のF-15C戦闘機との段階近代化改修プログラムに歩調を合わせる事で第一線能力を維持しています。その上でF-15Cについてアメリカ空軍では高コストであるとして早期退役の可能性が示されており、ここが機種として分水嶺となるかもしれない。

 F/A-18E戦闘機とF-35B戦闘機のハイローミックスを提示の背景には、F-15Jにアメリカ空軍が実施している段階近代化改修を航空自衛隊が独自プログラムにて代替わりする能力には限度がある為、それならば当面アメリカ海軍において延命計画が提示されていると共にライセンス生産や費用面で有利なF/A-18Eに置換える事で長期間の能力維持が可能です。

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2 コメント

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Unknown (ドナルド)
2018-06-04 21:42:01
F15Jの数は日本だけでかなりのものです。J-MSIP機ですら100機を超え、しかもまだまだ世界各国で運用されています。例え米国がF15Cを廃止しても、まだ多数が世界で運用されるし、類似の=近代化を一部流用できるF18E系列はまだまだ現役で残ります。

少なくともF-2A/Bよりはるかに多い事実は重要と思います。
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Unknown (ファッツ)
2018-06-06 22:20:57
前の記事から考えていたのですが三菱FACOで取り止めるのは最終組み立てだけで重整備やアップデート作業や他国からのそれら作業の請負は引き続き行うのではないでしょうか。それならば組み立てを終了しつつもラインを拡大・維持する説明が付くと思うのですが。
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