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【日曜特集】厚木基地フレンドシップデイ米海軍航空百周年【3】地上展示(2011-09-11)

2017-12-17 20:12:55 | 在日米軍
■F/A-18Eスーパーホーネット
 F/A-18E戦闘攻撃機、愛称スーパーホーネット、ライノ、厚木航空基地と移転先の岩国航空基地でも空母航空団を象徴する戦闘機です。

 F/A-18Eは航空自衛隊次期主力選定においても候補となりました、F/A-18Eは結局開発メーカーであるボーイングがF-15Eへ候補を一本化する為、早々に取り下げられる事となりましたが加速性と機動性に他の機種へ一歩譲るもののF/A-18Eの搭載力と発展性は高い。

 次期戦闘機としてのF/A-18Eですが航空自衛隊が当面必要としていた機数として42機を提示していた点から、もともとF/A-18Eが望み薄であったことは確かです、航空自衛隊の他の装備体系とまったく適合しませんし、F-35のように少数運用を念頭とした設計でもない。

 F-35は第五世代という新世代戦闘機であり、F/A-18Eは4.5世代戦闘機と既存機種を拡大改良した機体でしかありません、そして42機のためだけに補給体系を整備する事は現実的でもありませんし、遠い将来F-15J戦闘機の後継機が必要となる時期には陳腐化している。

 しかし、F/A-18Eは幾つかの視点から42機という機数に限らず広く後継機選定を実施していたならば、条件は転換したと考えています、即ちF-4戦闘機後継機に留まらず、RF-4偵察機の後継として、また航空自衛隊が必要性を度々示唆する電子戦専用機として、という。

 偵察機は予備機含め40機程度の需要がありますし、専用電子戦航空機は現在C-1改造のEC-1電子戦訓練支援機を用いていますが専用機が確保出来れば有事の際の電子戦に加えてレーダーサイト等への文字通り実戦的な訓練に用いられ、電子戦機と偵察機で60機となる。

 対領空侵犯措置任務緊急発進も選定当時は2016年の1100回という激増する状況ほど深刻なものではありませんでした。そして現在の新戦闘機調達は42機に抑えられていますが、これは現在程中国北朝鮮と周辺情勢が緊迫化する事を必ずしも想定していなかったのです。

 偵察航空隊を増強し、偵察ポッドを搭載したF/A-18Eを配備しておけば、有事の際には防空支援任務にも用いられる、実際偵察機としてのF/A-18Eは、2011年の東日本大震災において第8空母航空団のF/A-18Eが偵察ポッドにより被災地情報を収集、提供してくれた。

 電子戦専用機はEA-18GというF/A-18Fの派生型が充てられていますが、電子戦器材を日本にそのままアメリカが提供し、内部情報を提示するというほど楽観的には考えられません、防衛装備庁が開発している電子戦器材をF/A-18Fに搭載するという方式が現実的です。

 航空総隊司令部直轄部隊として、試案としての一例ですがF/A-18Fの偵察航空隊と電子戦航空隊から成る総隊司令部航空団、というようなものを編成し配備するならば戦闘機用と併せ100機程度のF/A-18Eが必要となり、年産15機程度というライセンス生産が出来た。

 42機では現在の新戦闘機F-35では三菱FACOとして最終組み立て施設を日本国内に配置し、ノックダウン生産を行うのみです。航空機稼働率を維持するためには国内での最大限の整備基盤と国内に予備部品供給基盤が必要で、その為にはライセンス生産が望ましい。

 このライセンス生産ですが42機で製造終了する機体に対し完全に実施するのは非効率です。毎年数機の生産では関連メーカーが生産ラインを維持不能で、それこそ5機や6機では採算が合わない。月産1機でも採算を割り、現実的には年産15機から17機が採算点とも。

 財務省はF/A-18Eを推していた、と仄聞した事があります、自衛隊次期戦闘機選定の中に在って最も格安の機種であったのが理由という。仮に数を揃えなければならない状況となれば、増勢は財務省が最も反対の施策でしょうが、結局F/A-18Eに収斂していたでしょう。

 F/A-18E/Fは第4.5世代戦闘機に過ぎませんが、同数程度であれば中国空軍のSu-30戦闘機も同世代機である為、充分対抗できます。そしてF/A-18E/Fであればライセンス生産を行う事で日本国内に高稼動率の基盤を構築できる、意味は限られた機数で対抗できること。

 稼動率は重要な問題です、稼動率50%の場合は戦闘機100機が必要な場合に200機を揃えなければなりません、半数は飛べないものの整備員と操縦士は確保せねばならない為に維持費も高騰する、しかし稼働率を95%まで高められるならば100機飛行には106機で済む。

 同型機を輸入で安価に取得するが必要なのは100機なのに200機を揃える事は軍拡にも映りますし、財務当局へも国民へも軍拡ではなく現状維持だが配備数は大幅に増やしている、という実情を説明させねばなりませんし、飛ばない飛べない航空機維持の費用も負担です。

 半数のみが飛行できるという稼働率50%ですが、ちょうど韓国空軍や台湾空軍のF-16がこの程度となります、欧州NATO諸国はもう少し高く75%程度ですが、これは欧州全体で共通運用基盤として部品プールと相互整備支援協定を軍事同盟のかたちで締結しているため。

 航空自衛隊が韓国空軍や台湾空軍と出来ればタイ空軍やマレーシア空軍、インドネシア空軍と同型戦闘機を採用し、集団的自衛権行使の問題を解決した上で同盟条約の機能を果たす相互支援体制を設け、運用プログラムや共通運用基盤を整備したならば、直輸入で済む。

 ただ、防衛費の抑制よりも憲法上の一国平和主義の堅持がまだまだ日本国内では優先されますので、この選択肢は現実的ではありません。すると、結果的に一国自己完結の防衛力整備を目指す事となり、調達はライセンス生産と重ね国産開発へと収斂してゆく訳ですね。

 F-35を新戦闘機として導入する我が国ですが、F-35の共通運用基盤は専守防衛と一国防衛主義の限界を示すものともなります。可能性ですが三菱FACOにおいて整備される器材は豪州空軍のF-35や、韓国政府が懸念していますが韓国のF-35も受け入れる余地はある。

 F-35の三菱FACO設置は日本が開発参加国でもなく、優先顧客でもないにもかかわらず設置に漕ぎ着けた点で、日米交渉を相当入念に実施し、日本側の要望と必要な稼動率や運用思想と運用基盤を必要とする我が国防衛政策の丁寧な説明と交渉が反映されたのでしょう。

 三菱FACOを一つの成果といえる我が国ですが、しかしF-35の計画時点で日本が参加する可能性を模索すべきでした。ただこれは武器輸出三原則の当時の運用である第三国供与禁止により多国間国際共同開発への参加を自らその可能性を拒否していたことに起因します。

 F-35の国際開発に参加しているならば、勿論、開発費高騰と開発遅延は当然のように国会において追加負担の可否を大きな議論の対象としたでしょうし、第三国供与への多国間国際分業に基づく日本によるF-35生産参画へは神学論争のような激論を呼んだかもしれない。

 F/A-18E/Fという選択肢は、そうした意味で無難な選択肢、となっていたのかもしれません。安価ですし、それなりに使えます、ただ、その条件は現在の様に情勢が緊迫化し、最低100機、戦闘機以外の支援用に更に100機程度の調達を短期間で行う場合に限ります。

 防衛計画の大綱は270機の戦闘機により日本を防衛出来得るとしています。すると稼動率が半分まで低下した場合は、予備機と訓練機等で540機が必要となります。しかし大綱の整備目標を上限と解釈する風潮からこの整備は現実的ではなく、運用基盤が重要となる。

北大路機関:はるな くらま
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1 コメント

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Unknown (軍事オタク)
2017-12-18 10:18:47
確かにF-15J前期型の更新は喫緊の課題ですよね。
防衛省がどのように対策するのか早く知りたいところです。

F-35を42機だけで終わらせることはないような気がしますが、三菱でノックダウン生産できないのは大変なマイナスですので、どうなることやら・・・

F-15J DJ初期型の配線全部剥がして直してレーダー等入れ替えて20~30億/機くらいでできないですかね~
しかも国産レーダーやアビオニクスでね。
F-15hは20000時間?位とべる可能性もあるからそれなりに使えるのでは?

でも純国産F-3を200機以上装備してほしいので、F-2の92機とF-15初期型更新合わせると200機程度は確保できる。

防衛省は例え、1機40億ほど金がかかったとしても10年前位の段階で既に全機初期型のF-15をAAM4等最新国産ミサイルが撃てるように改修しておくべきでしたね。

1機40億は高いかもしれないが、F-15の運用には既に慣れているし、新機種導入にあたっての初期費用も訓練費用も時間もかからない。
そうすれば余裕をもって新型機種への更新も考えられる。

でも配線を全て変えるのにそんなに大変で費用がかかりますかね?
翼かなり剥がさないといけないんですかね?
なにか工具やロボ等を使うか開発してうまくやれないものですかね~
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