北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

日英統合水陸両用作戦訓練沼津で23日-24日に実施,輸送艦しもきた&英揚陸艦アルビオン参加

2018-08-21 20:12:44 | 防衛・安全保障
■イギリス海兵隊と自衛隊訓練
 日英統合水陸両用作戦訓練、8月10日の防衛省発表によれば23日と24日、沼津市今沢訓練場において実施されるとのことで、防衛大臣定例記者会見でも発表されました。

 防衛大臣が発表しました通り、静岡県沼津市において日英水陸両用訓練が開始されます。23日と24日、海上保安庁は航路注意情報を発表しています。海上自衛隊とイギリス海軍が輸送艦しもきた、揚陸艦アルビオンを派遣し実施する今回の訓練は陸上自衛隊が進める島嶼部防衛において、従来にその能力構築へ連携して来ましたアメリカ海兵隊とはことなる運用手法の研究という点から特に重要な意味を持つでしょう。

 イギリス海兵隊は6500名規模、また人員800名規模のオランダ海兵隊との友好関係も長く、14万規模を維持するアメリカ海兵隊、陸上自衛隊と同規模という巨大なアメリカ海兵隊とは運用基盤が根本から異なり、特にイギリス海兵隊の任務は在外自国民救出と沿岸部における水陸両用作戦、内陸進攻は陸軍という分担に注目すべきです。これは自衛隊と共通点といえる。

 アメリカ海兵隊は海兵師団が2003年イラク戦争に際して陸軍の第三機械化歩兵師団と連携しイラクの首都バクダッド市内へM-1A1戦車を突入させたように、内陸部での作戦能力を相応に重視しています。もちろんアメリカ海兵隊は沿岸部での水陸両用作戦においてもっとも高い能力を有することも確かではありますが、その点に加えての内陸への戦果拡張能力が大きい。

 イギリス海兵隊はフォークランド紛争での完全に占領された自国島嶼への逆上陸という実戦経験、こうした自国島嶼の奪還作戦は意外にもアメリカは第二次大戦中のグアム逆上陸作戦以降経験がないのですが、そしてシエラレオネなどでの水陸両用作戦の経験を有するイギリスから学べる点は多いと考えます、そして装備面で学ぶ点も多々ある。具体的には自衛隊の予算体系でも調達できるという意味で。

 BvS10水陸両用車、ジャッカル耐爆車両、L-118/105mm榴弾砲、イギリス海兵隊の陸戦装備です。そして航空機はリンクス多用途ヘリコプターやガゼル観測ヘリコプターなど。自衛隊に当てはめればAAV-7水陸両用車に軽装甲機動車と120mm重迫撃砲RT,そしてUH-1J多用途ヘリコプターとOH-6D観測ヘリコプターがこれにあたり、言うなれば装備の面で自衛隊の予算でも手が届く装備と代替装備がすでにあるものが多いのですね。

 水陸機動団を創設し島嶼部防衛へ本腰を入れた自衛隊、自衛隊が目指す水陸機動作戦能力は、沿岸部から概ね5km圏内、それ以上内陸へ進攻する能力は、水陸機動団が戦車部隊を有していない点からも求めていないことは自明でしょう。具体的には、陸上自衛隊が想定する島嶼部防衛が想定するのは縦深がそれほど大きくない地形、大きな離島を想定する必要がない為の編成と考えられます。

 奄美大島や宮古島に石垣島や佐渡島などが占領された場合には、沿岸部の水陸両用作戦だけでは不十分となり、第2師団や第7師団といった北海道の強力な戦車部隊を投入する必要も出てきましょうが、佐渡島は別としまして南西諸島島嶼部へは順次陸上自衛隊の配備が開始され、完全に占領される状況は考えにくいといえます。すると、自衛隊が必要とする水陸両用作戦能力はイギリス海兵隊の能力が近い、といえるでしょう。

 AAV-7両用強襲車やLAV-25軽装甲車にM-1A1戦車とM-777榴弾砲を基本とし、AH-1W攻撃ヘリコプターとUH-1Y軽輸送ヘリコプターにMV-22可動翼機が連携しCH-53G重輸送ヘリコプターと完全な立体作戦を展開し、F/A-18C戦闘攻撃機とF-35B戦闘機が航空支援と航空優勢確保を担う、これがアメリカ海兵隊の世界を圧倒する両用作戦能力ですが、予算面からこれを陸上自衛隊が真似ることは簡単ではありません。

 水陸機動団は、しかし、アメリカ海兵隊との訓練強力を行う必要がないのか、AAV-7は無駄であったのか、と問われますと、問題は簡単な一元論ではない、という反論も成り立つでしょう。アメリカ海兵隊との訓練協力は沖縄の在沖米海兵隊を筆頭に米本土の訓練施設を含め同盟国の水陸両用作戦能力を高める支援体制と能力がありますが、イギリス海兵隊との密接な訓練を日本が基盤構築する場合、少なくとも地中海に部隊を頻繁に派遣する必要が生じ、これは難しい。

 AAV-7についても、まず水陸両用作戦能力を最初から構築するには必要な装備といえます。もちろん、イギリス海兵隊のBvS10のような車両は優れていますし、広範に配備するべきとも考えるのですが、その運用基盤と戦術を構築するには独力で開拓せねばなりません。その点、AAV-7は韓国、台湾、フィリピン、インドネシア、タイ、とアジア諸国で広く採用されている。

 日英の水陸両用作戦共同訓練はその上で、装備面で自衛隊でも手が届く。そして揚陸艦アルビオン、輸送艦おおすみ型、イギリス海軍はアルビオン級2隻とコマンドー空母オーシャン、日本は輸送艦おおすみ型3隻、アルビオンの方が若干大型ですので輸送力はイギリスが優位にありますが、アメリカ海軍と海上自衛隊ほど離れていない、少なくとも40000t級の強襲揚陸艦をイギリスはもっていない、その上で能力を整備している、ここが学ぶべき点です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補足-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント (3)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 戦車300両時代再論:第73即応... | トップ | 戦車300両時代再論:第73即応... »
最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ドナルド)
2018-08-21 22:08:34
はるなさま

イギリス軍の揚陸艦について。

まず海軍 Royal Navyでは、
・LPH オーシャンは退役し、ブラジル海軍で運用されています。つまりLPHは0隻。
・LPD アルビオンとブルワークですが、1隻は常に保管状態で、稼働しているのは1隻だけです

次に、Royal Fleet Auxiliary には、
・Bay級輸送揚陸艦(LPD)が3隻あります。このうち1隻はペルシャ湾で掃海艇母艦を、1隻はカリブ海でハリケーン対策+密輸対策に投入されています。

とりあえじ、事実確認まで。。。
返信する
Unknown (はるな)
2018-08-21 22:21:38
オーシャン退役の情報感謝です

毎回、助かります
返信する
台風接近 (はるな)
2018-08-23 00:48:10
台風接近で統幕から中止の発表ありました

第二北大路機関に詳細添付しました
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

防衛・安全保障」カテゴリの最新記事