北大路機関

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八月八日“八八艦隊の日”特集:新しい八八艦隊へ現行四個護衛隊群隷下八個護衛隊改編提案Ⅱ

2018-08-11 20:18:33 | 北大路機関特別企画
■F-35B艦上固定翼哨戒機提案
 毎年恒例となりました八月八日、新しい八八艦隊の必要性について、8日の前篇に続き今回は後篇を議論しましょう。

 ヘリコプター搭載護衛艦の護衛艦隊護衛隊群隷下の各護衛隊への配備を軸とした八個護衛隊へのヘリコプター搭載護衛艦とイージス艦配備の必要性、これは洋上での情報優位を確保する上での必要な選択肢です。ハープーン対艦ミサイルやSSM-1の延長線上にJSM艦載型等の長射程型の可能性があり、また長射程化が進む艦対空ミサイル脅威下で生残れる索敵機が必要となる。

 第五世代戦闘機と位置付けられるF-35はF-35A,F-35B,アメリカ海軍空母艦載機F-35C共に単なるステルス戦闘機ではなく、先進的な情報収集機材、これはレーダーや複合光学機器に電子戦装置と電波探知装置を折り合わせて搭載しており、一機飛行しているだけで戦域情報優位を獲得できる機体に優れた空対空戦闘能力とステルス性を組み合わせたもの。

 戦域情報優位は必然的に長射程化した各種ミサイルの誘導、そして同じく増大するミサイル脅威からの自衛と艦隊防護も同時に資するもので、更に第五世代戦闘機であるF-35にはMQ-9を始めとした無人機の運用、開発中止となったX-47B無人艦上攻撃機の技術具現化という暁にはその管制、にも資する機種です。即ちF-35Bの有無で情報優位は大きく変る。

 新防衛大綱が年内に画定しますが、F-35B戦闘機についてはヘリコプター搭載護衛艦へ艦載機として追加する検討が為されています。自民党部内では那覇基地などが南西有事に際し被害を受けた際へ局地防空を主眼としているようですが、AV-8B攻撃機のようなAMRAAMを運用可能な艦載機、第五世代戦闘機の位置づけを一概に見る事は出来ません。

 P-1哨戒機の洋上索敵能力をステルス化した超音速飛行可能な航空機に収容し、護衛艦の艦上に搭載する、ヘリコプター搭載護衛艦へF-35Bを搭載する事は安易な局地防空に限らず、艦隊全般の情報優位を確保する、という視点に昇華して考えるべきです。これは同時にF-35Bを単なる艦上戦闘機として考えた場合ヘリコプター搭載護衛艦搭載は限外が生じる。

 F-35BはJSM空対艦ミサイルやAIM-120D-AMRAAM空対空ミサイルの運用能力がありますが、一回運用するだけで膨大な弾薬を消費します、ヘリコプター搭載護衛艦は主としてSH-60J/K哨戒ヘリコプターを運用しますが、こちらが搭載の短魚雷より遥かに多くの弾薬を搭載する為、護衛艦の弾薬搭載能力では運用が制約され、更に燃料消費量も大きい。

 局地防空として運用する場合は、単に護衛艦から発着するだけではなく燃料補給にミサイル補給とエンジン交換も含めた重整備を考えなければなりませんので護衛艦の負担は大きく、更に局地防空という以上、戦域航空優位を確保し維持するには航空団規模洋上展開が必要となり、この規模の艦隊運用は海上自衛隊としても任務外として懸念がありましょう。

 海上自衛隊からの懸念とは、イージス艦の弾道ミサイル防衛のように艦隊防空能力を有する故に本土防衛へ特定海域に張り付ける事を強要される、という懸念です。イージス艦は現在6隻、それでも常時1隻を日本海に遊弋させ警戒待機させる事は大変な負担でした、ヘリコプター搭載護衛艦は現在4隻、ここに本土防空へ局地防衛を命じられても困惑する。

 シーレーン防衛が海上自衛隊の最重要任務であり、海上自衛隊が草創期から対潜水艦任務と機雷掃討任務を重視したのは、外洋での潜水艦によるシーレーン攻撃の脅威を、沿岸での機雷封鎖の脅威を太平洋戦争で痛感した為でした。これまで対航空母艦脅威をあまり重視しなかった背景には冷戦時代にソ連海軍の空母脅威が非常に低かった為に他なりません。

 イージス艦が整備された当時は、海上自衛隊が艦隊防空の必要性を痛感した為でしたが、その背景としてソ連軍超音速爆撃機の能力向上によりシーレーン防衛にミサイル爆撃機による攻撃という新しい脅威が増加した為です。言い換えれば冷戦時代に存在しなかった航空母艦の脅威、中国海軍の空母脅威が当たらに現出した今日、対策は急務といえましょう。

 航空母艦脅威に際して、空母航空団同士を衝突させる、という発想は陳腐な近視眼的視点で、重要な対処方式はステルス性を有し300kmの射程を有し艦載型の開発が進むJSM対艦ミサイル、航空自衛隊が導入予定で艦載型の開発も進められていますが、長射程ミサイルによる接近拒否を洋上で展開する事で、必ずしも空母航空団同士で洋上全面衝突させる必然はありません。

 しかし、300km以遠、具体的にはシーレーンの延長線上で広範囲に情報収集を行うには、SH-60J/Kに300km以遠の索敵能力は航続距離からぎりぎりありますが、経空脅威状況下で索敵を行わせるには限界がありますし、長大な航続距離を有し航空自衛隊が導入を開始するRQ-4無人偵察機のような機体ならば可能ですが、平時の監視は兎も角有事においてこの種の航空機は運用が至難だ。

 RQ-4無人偵察機は二万m近い高高度を滞空し100km以遠の船舶などを精密に識別する能力がありますが、ステルス性も自衛能力も無く平時の監視では相手の攻撃はありませんが、有事の際には見つけ次第攻撃を加えてくる状況で、RQ-4は即座に無力化されましょう。損耗前提に30機40機使い潰す覚悟で数揃えれば話は別ですが、それにしてはRQ-4が高い。

 F-35Bであれば、索敵に資するものですし、JSMを搭載したならば空母が日本のシーレーンを攻撃する際に脅威を及ぼし、その存在を無視できませんことから、その存在だけでも大きな抑止力となります。局地防空という短絡的な運用を志向するのであれば陸上の飛行場にF-35Bを配備し航空自衛隊が運用すれば、代替滑走路等でも局地防空任務は担えます。

 艦隊の戦域優位に資する、という視点からヘリコプター搭載護衛艦にF-35Bを搭載する事は意義があり、これを自らの空母攻撃に使用されると脅威をとの受け止めの有無は相手が考える事、こうした上でヘリコプター搭載護衛艦-イージス護衛艦-汎用護衛艦-汎用護衛艦、という編成は重要であると考えます、イージス艦にF-35Bの索敵や監視任務は行えません。

 ヘリコプター搭載護衛艦-イージス護衛艦-汎用護衛艦-汎用護衛艦、という任務の統合化は、とにかくこの編成ならば一通りの任務が可能です。F-35Bは購読で移動できますので、脅威正面にF-35Bを急速集中させる事で抑止力を高める事が可能、弾道ミサイルの飽和攻撃を懸念する際にはイージスアショアが完成した後であっても増援に派遣する事も可能です。

 南西諸島防衛に際しても当然水陸機動団を展開させる際には輸送艦や掃海母艦の支援が必須となりますが、ヘリコプター搭載護衛艦-イージス護衛艦-汎用護衛艦-汎用護衛艦の編成であればAH-64D戦闘ヘリコプターとCH-101輸送ヘリコプターにV-22可動翼機を集中しイギリス海軍のコマンドー空母として運用する事が可能、野戦防空はイージス艦が担う。

 編成を統合する事で、あらゆる任務へ一つの編成で対応できる利点は、八個の機動運用部隊を揃える事が出来、任務対応-即応待機-練度強化-重整備待機、とローテーションを確立する事が可能です。なによりも同編成の部隊が訓練と実任務を両立させる事が可能となる事は、我が国への軍事的手段での現状変更へ、必ずこの編成で対処できる基盤を組む事に。

 海上自衛隊が四個護衛隊群体制を確立したのは第一次石油危機後の1974年で、この運用体制はいわば日本経済が石油危機により甲と経済成長を強制終了され突如マイナス成長時代へ崩落した最も厳しい時代の編成、日本経済が最小限度の状況でも維持できる分水嶺を示したもの。この体制下で維持できる新しい八八艦隊は実現性ある有用な選択肢と信じます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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4 コメント

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Unknown (人民の目)
2018-08-11 21:51:11
日本側があくまでも空母保有を目指すのならば、中国海軍は防衛の対抗上、空母を増勢しなければなりません。
無意味な軍拡競争を行う余裕が日本にあるとは思えません。
常々日本海上自衛隊は一番危険な存在と見なしていました。陸上自衛隊は本土のみにしか活動を想定しておりませんし、航空自衛隊は防空的な組織です。しかしながら、海上自衛隊は米第七艦隊と行動を共にするだけでなく、海外展開への野心を常に抱いております。彼らの姿勢は本土防衛ではなく、海外へ討って出るという側面が非常に強い。
空母保有の動きは海上自衛隊の危険性をあらわす象徴的な出来事と私は考えます。
Unknown (ウォースパイト)
2018-08-11 22:01:38
クイーンエリザベスのような規模の母艦が結果的に使いやすいでしょう

半端な母艦では短期間しかもちませんよ

Unknown (EMANON)
2018-08-21 05:57:41
ちゃんと意味の通る日本語で書いて頂きたい。
余りにも酷すぎる。

Twitterのような文字制限が有るのならまだしも、そうでないのにこれでは…
毎年恒例 (はるな)
2018-08-22 00:33:35
毎年恒例の企画なので少し省きすぎた部分がありましたね

第二北大路機関今夜と明朝に補足説明記事を二回に分け掲載しますのでご覧下さい

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