■護衛艦と哨戒機を派遣
14日の報道によれば、政府は、アフリカソマリア沖での海賊対策事案において、現在検討している護衛艦の派遣に加えて、海上自衛隊の哨戒機を派遣する検討を行っているとのこと。
派遣が検討されているのは、現在、海上自衛隊で80機が運用されているP-3C哨戒機。P-3C哨戒機は、アフリカのジプチなどを拠点航空基地として運用することを想定しているようで、既に海賊対策へ尽力しているフランスより、フランスとジプチとの間で取り決められている地位協定に日本を加えることで、P-3Cの派遣を早期に実現させることが可能とのことだ。
護衛艦部隊としては、ヘリコプター搭載護衛艦を中心とする1個護衛隊の派遣が既に検討されており、この護衛隊は、ヘリコプター搭載護衛艦、ミサイル護衛艦各1隻と、汎用護衛艦2隻からなる4隻の編成で、艦載ヘリコプター5機を定数としている。ヘリコプター護衛艦を中心とした編成であるから、広範な哨戒任務が可能で、予定されている船団護衛に加えて突発的事態にも迅速に対応することが可能だ。
他方で、インド洋対テロ海上阻止行動給油支援任務にも艦艇を派遣している海上自衛隊には、護衛艦の一割以上をインド洋に展開させることとなり、交代の艦艇を含めればより多くの護衛艦が、インド洋に関係する任務に就くこととなる。従って艦艇のローテーションとしてより大きな負担がかかるということも留意して置くべきだろう。乗員のローテーションや教育訓練体系、場合によっては護衛艦の定数までも含めて再検討が必要な時期にきているのではないか、とも考える次第。一方で、インド洋に対して、海上自衛隊のプレゼンスを示すことができる、これにはひとつの意義があろう。
P-3C哨戒機は、対潜哨戒機として導入されたが、高高度からの洋上哨戒能力にも優れ、近年では南西諸島における外国艦船動向の哨戒に大きな注目が集まっている。海上自衛隊は、日本が極めて長いシーレーンを有していることから、この種の航空機の装備化には積極的で、対潜哨戒機の保有数では、アメリカ海軍に続き世界第二位の規模を誇っており、欧州NATO軍の総数よりも、その保有数は多い。派遣が決定すれば長大な航続距離を活かして洋上の船舶情報収集にあたり、水上艦との情報共有に当たるほか、通信中継などの任務にもつくことが想定される。
HARUNA
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
人員のローテーションですが、確かに厳しいでしょう。もともと、編成が海外への展開を想定していませんから。
長期化しないようにするためには、ソマリアの国家再建を実現するということでしょうか。そのためには、恐らくAUか可能ならばECOWASと合同での国際平和維持活動を実施する、というのが、恐らく唯一の実用的な対処法です。
とりあえず派遣は、八戸の機動施設隊から施設隊を一個捻出して、全国の航空群隷下の整備隊と整備補給隊から人員の混成部隊を造る、というのが考えられます。
ジプチですが、フランス軍部隊が戦前から駐留してますし、独立後も、外人部隊第13准旅団や陸軍第5国際混成連隊、陸軍航空隊ジプチ分遣隊(SA342装備)などが駐留しています。
ジプチ基地には、航空戦闘軍団の第4/33戦闘航空団が展開していまして、ミラージュF1は、ジプチの防空任務にもあたっています。加えて米軍も駐留しているようです。
ジプチ空軍は、輸送機だけを運用する部隊で、ジプち陸軍4000名は編成の六分の一が憲兵、残りは国境警備とコマンド大隊という編成なので、フランス軍のポテンシャルは大きいのでは、と。
米軍のグアムほどではありませんが、基地環境としてはかなり良好といえるのではないでしょうか。
ソマリア周辺海域の警戒のために、P-3部隊をアフリカ・ジブチに派遣するようですが。
任務自体は問題ないでしょうが・・・・・問題は一にも二にも「遠い外国」に部隊を派遣することです。
まず海上自衛隊の慢性的人的リソースの不足が問題です。
現地に小規模な航空隊を立ち上げるのと同様ですので(航空機運用には様々な人的支援が必要で、さらにその人員を支援する人員も必要になる)、その隊員を捻出するのに苦難が予想されます。
またそれが短期なら良いのですが、インド洋派遣同様恒常化も懸念されます。
人員のローテーで相当な無理がでることが予想されます。
また海外展開のノウハウが少ない海自航空部隊の最初の派遣先が、距離も問題の他、社会資本が未発達(社会資本が発達していれば様々な民間サービスの活用が期待できる)なアフリカに本格派遣することは、いきなり高いハードルに挑戦しているように感じます。
最初はもう少し近く、米軍それもP-3運用基盤を備える基地あたりが適当と考えていたのですが・・・・
とりあえず人員的な対策としては、定員の増加は難しいですので、派遣される隊員の国内の穴を、臨時採用で元隊員の再任用や(任務期間限定)。
後方職種のアウトソーシング化前倒し(教育部隊の食堂等)、また衛生分野などで他幕への支援要請(海自も医師不足)。
あらゆる手を尽くす必要があるでしょう。でなければ海自が機能不全に陥る可能性出てくるでしょうね・・・・
当方が読んだのは産経の記事のほうです。
それにしても、海上自衛隊がアフリカ沖に海賊をやっつけに行くなんて、十年前は想像も出来ませんでした。
P-3Cですが、鹿屋と那覇の機体は南西諸島の哨戒に忙しいでしょうが、厚木と八戸の機体をやりくりすれば、少なくとも水上戦闘艦部隊ほどは、本来任務に差し支えないのでは、と思います。なんといっても保有機数は80機ありますから。
情報通信の規格ですが、リムパックとかで米海軍とのデータリンクが可能ならば(どうなんだろ)、恐らくNATO規格も可能なのでは?と思います。推測で、確認できないままではありますが・・・。
「ソマリア沖海賊対策 政府P3C派遣検討 監視情報 各国に提供」
2009年1月14日(水)08:05 産経
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/politics/m20090114027.html
「ソマリア海賊対策 与党が海上警備行動を容認」
2009年1月14日(水)08:46 朝日
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/politics/K2009011303820.html
その対応自体は確かに理屈としては通っているとは思うのですが、心配な事項もあります。
①日本の排他的経済水域の哨戒が疎かにならないか?P-3Cの稼動機数に余裕があればよいのですが・・・。
②情報通信システムの規格が他国と互換性を持つのか?以前に航空雑誌や艦船雑誌(だったと思う)で見た記事によると、
・3自衛隊でさえ情報システムの互換性が整っていない(言わばWindows、unix、Macが混在しているようなもの)
・警察・消防・海上保安庁など他の安全保障機関との連携がとれていない
などといった情報があり、前途多難のように思うのは私だけでしょうか?
それでは。